東日本大震災で亡くなられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された地域の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。皆さまの安全と一日も早い復興をお祈り申し上げます。
生命と生活を守り高める
東京・四谷の土木学会附属土木図書館に保存されている『日本の水害』(東洋経済新報社、1954年刊)に、こんな記述があります。
《水害と闘うにあたって、我々は反省してみなくてよいのであろうか。自然の論理を無視していなかったのであろうか。これを天災として、ごまかさなかったのであろうか。一方で、人力ではどうすることもできない地質現象に対して、蟷螂の斧をふるわなかったであろうか》
パナマ運河建設などに貢献した土木技術者・青山士の寄贈本で、彼はそのページの欄外に《万象に天意を覚るものは幸なり》という書き込みを残しました。この地球に生きる私たちに関わる全ての事象に、自然の道理や本質を発見できる人は幸せである。なぜなら人の生命と生活を守り高めることができるから—という意味でしょうか。
平和に日常を過ごせる幸せ
世界でも稀な災害多発国であるわが国にとって、とりわけ土木工事は人と自然との協調とせめぎあいの中で行われてきました。その折り合いが「自然の論理を知ること」であり、「人の安全な生活のため」だったのです。その中で私たちは高度で多彩な技術力を培い、優れた防災能力を持つ国として評価されるようになりました。
しかしながら、今回の巨大津波を伴う大地震は、私たちの想像を遥かに上回る規模で襲来しました。積み重ねた英知をもってしても、この未曾有の大災害を防ぐことはできませんでした。自然のエネルギーが人知の及ばぬほど強大であることを改めて知らされましたが、私たちは自然の前に無力であってはなりません。建設業は社会や人の生活基盤を支える基本的な産業です。安全で安心できる暮らしを次世代へ受け渡す社会的責任と使命があるのです。
大震災で避難した少女のインタビューが、脳裏に残っています。「父はまだみつかっていません。今までどんなに裕福だったか分かりました。家があって、ご飯が食べられて、家族がいて。今までがどんなに幸せだったかよく分かりました」。テレビカメラの前で、少女は涙も見せずに話していました。
私たちは総力を結集して、一刻も早くこの少女に家族との団欒の場を創出し、笑顔と平和な日常を取り戻してあげたい。そう心に誓ったのでした。
国難を乗り越えて
この国難というべき大災害への日本の対応を、各国が固唾を呑んで注目しています。私たちの生活の安全と安心確保のための技術は、発災後の迅速な復旧活動にも発揮されてきました。建設業界は国や社会の要請に応え、できる限りの復旧・復興支援活動で、その責任を果たさなくてはなりません。
建設業3団体は今年4月1日に統合して、「日本建設業連合会」(日建連)をスタートさせました。その矢先に、新団体の社会的責任と存在意義が強烈に問われたのです。当社も日建連と連携して、東北支店をはじめ本社・各支店から技術者や支援要員を被災地に派遣し、復旧・復興作業に当たりました。
復興のための作業は長期にわたることになるでしょう。被災した方々と辛苦を分かち合う中で、建設業でしかできない献身と努力が社会の共感を生み出すことになるのです。私たちの社会的貢献は、そのようにして果たされていくものと思っています。
確かなものを 地球と未来に
「将来の災害に、いまコストを惜しむべきではない。人命を失い、地域経済に受ける打撃は、結局経費節減とはならないからです」。1994年のロサンゼルス地震の際に語った同市幹部の言葉が思い起こされます。それは行政だけでなく、家庭や企業や地域でも同じです。私たちのいまの減災への決意と努力が、次代を担う人たちに明るい未来を約束することになり、多くの犠牲者の霊に報いる道でもあると思うのです。
日建連は「確かなものを 地球と未来に」を、キャッチフレーズに掲げました。ものづくり産業としての建設業がその技術力により提供する建築物や構造物が、地球規模で未来への礎となって欲しい。そうした願いと決意を表現しています。
私たちはこれからも、本業としてのインフラ整備に注力するとともに、地球環境にも常に感度の高い産業、企業でありたいと思います。自然の威力と対峙しつつ、一方で生物多様性を保全し、自然との調和と共生を図り、持続可能な社会形成への責任を果たすため、英知を集め、誠実に取り組んで参ります。
社会の要請に応えるために
冒頭の『日本の水害』は、地質学者の小出博さん編纂によるものですが、その扉にはこう記されています。
《祖国の山に 草木が青々と茂り 祖国の川が 清らかに流れ 日本人のいとなみが 平和に栄えるように心から祈る》
この美しい日本を護るために、私たちは自然とどう向き合うか。安全で安心できる生活環境を構築するために何をすべきか。これからも真摯に考え続けます。そして、社会の期待や要請に誠実に応え、信頼の絆を深めていくために、安全管理、品質、コンプライアンスの徹底、地域社会との共生、丁寧な情報発信など、この報告書に記されたCSR活動や取組みを、精力的に実践して参ります。
皆さまの一層のご理解とご支援、忌憚のないご意見を賜りますようお願い申し上げます。
2011年7月






