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いきまち通信

インターンシップ生の活躍をご紹介します

2019年2月

鹿島が取り組む生物多様性やグリーンインフラに関する様々な活動は、当社スタッフだけでなく多くの関係者参加のもと推進しています。そこで今回は、これまでの活動を支えていただいたインターンシップ生(以下、インターン生)の活躍をご紹介したいと思います。

これまで活動に参加したインターン生は15名にのぼります。期間は10日から1カ月程度で、それぞれテーマを決めて研修を行います。インターン生の所属大学や出身地となる国や地域は、日本を含めて9つあり、以下の黄色のエリアになります。既に出身地とは異なる国に留学している学生が、さらにそこから日本に留学、鹿島にインターンに来た事例もあり、その熱意とパワーには驚かされます。

地図:インターンシップ生所属大学・出身地

インターン生には、期間中様々な業務を経験してもらいます。例えば、イベント運営やモニタリング調査をはじめ、オフィス内でワークショップの準備をサポートしてもらうこともあります。また、一番重きをおいているのが「プロポーザル(提案)」作成です。一人ひとりに「課題・取組テーマ」が課せられ、業務計画の企画から調査・検討作業を行い、研修最終日に我々スタッフを前に発表してもらいます。企業での働き方の一端を体験することに加え、担当したテーマにじっくり向き合い、提案可能な「形」にし、発表するまでの一連の流れを経験していただくことを目標としています。

ここで、フィールド活動でのエピソードを一つご紹介します。イタリアから来た工業デザイン専攻のTさん、Mさんの二人組は、終日屋外調査の予定が、あいにくの大雪で午後の予定はキャンセルになりました。そこで、調査でお世話になった農家さんのご自宅居間をお借りして、急遽デザインワークの時間を持つことにしました。その様子がこちらの写真です。

写真:議論中のTさんとMさん

議論中のTさんとMさん

写真:方向性が決まり分担して作業中の二人

方向性が決まり分担して作業中の二人

テーマは、ここで取扱う農産加工品の訴求力あるコンセプト作りとパッケージデザインの考案です。二人で方向性を議論し、分担して作業を進め、最終的には4つのアイデアを発表することができました。

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この事例のようにフィールドに出ると、地域の方、連携先のグループ企業や協力会社のスタッフの方など、社外の様々な方にお世話になります。普段はなかなか縁のないモノやコトに接しながら、人々との交流を通じて知識を得ていきます。進行している業務によっては、インターン生に望ましいフィールドを用意できない場合もありますが、できるだけ実際の「場」を経験してもらえるようプログラム内容を工夫しています。以下の写真は、インターン生の社外での様子です。鹿島のグループ会社が運営する農場や、前回ご紹介した八重洲ブックセンター屋上でのモニタリング業務補助、生きもの除草やイベント運営のサポートなど多岐にわたります。

写真:モニタリング作業の補助

モニタリング作業の補助

写真:モニタリング作業の補助

図版:作業の合間に農地除草用ヤギとのふれあい

作業の合間に農地除草用ヤギとのふれあい

写真:実験圃場(ほじょう:田畑)の整備準備

実験圃場(ほじょう:田畑)の整備準備

写真:田植えイベント運営

田植えイベント運営

図版:ミツバチ巣箱の製作

ミツバチ巣箱の製作

一方、プロポーザルは、研修期間の長短やインターン生の専攻によって形式が異なります。経営学部のAさん、Hさんには、地域の課題を洗い出し、オリジナルの振興策を具体的な展開方法を交えながら提案してもらいました。対象地に足を運んで調査を重ね、地域の特産品を使った新しい商品アイデアをまとめた彼女たちは、商品試作も行い、最終のプレゼンテーションではその新しい商品の試食まで用意する力の入れようでした。

また、デザイン専攻のAさん、Rさん、Fさん、Sさんには、進行中のプロジェクト概要を説明するためのダイアグラムやロゴ、イメージスケッチ作成などコンセプト作りや具体的なデザインを提案してもらいました。

いずれの場合も、発表に至るまでに、毎日担当スタッフと進捗確認の時間を取り、助言を受けながら30分前後のプレゼンテーションにまとめていきます。そして、最終日の発表の場では、質疑応答や意見交換を通じて多様な評価・視点・意見を受け取っていきます。これまでのインターン生はそれぞれ興味深いアプローチでアイデアをまとめ、成果を発表してくれており、この時間は私たちスタッフにとっても非常に刺激多い、貴重な機会になっています。

写真:担当スタッフとのミーティング

担当スタッフとのミーティング

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写真:ファイナルプレゼンテーションの様子

写真:ファイナルプレゼンテーションの様子

写真:ファイナルプレゼンテーションの様子

ファイナルプレゼンテーションの様子

写真:ファイナルプレゼンテーションの様子

インターンシッププログラムは、社内外問わず多くの方の理解と協力があって実現しています。そして、参加学生それぞれの努力の結果が、翌年以降の後輩たちの継続的な受入れに繋がっています。関わってくださる方々に、この場を借りて感謝申し上げるとともに、インターン生たちの熱意と努力に敬意を表したいと思います。そして、その歩みが将来の夢につながることをスタッフ一同願っています。

(担当:N)

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「日駒エコキャンパス」の取組のご紹介(その2)

2018年10月

7月にご紹介した日本工業大学駒場中学校・高等学校(以下、日駒)では「日駒エコキャンパス」の取組として、日駒ニホンミツバチプロジェクト(自然共生)、ミミズコンポスト(資源循環)、ホップを使った緑のカーテン(CO2削減)を実施しています。今回は、主に今年度から立上げをサポートしているミミズコンポストとホップを使った緑のカーテンのその後についてレポートします。

ミミズコンポスト(BECS)のその後

4月に園芸養蜂愛好会が管理する農園に設置された当社開発のミミズコンポストでは、学校から出た野菜くずや近隣カフェから集めたコーヒー滓(カス)が順調に分解されています。野菜くずやコーヒー滓の回収・投入、ミミズの状態や分解状況のチェックは生徒が定期的に行っており、良質なミミズ堆肥が日々生産されています。定期的に、バケツ一杯分のミミズの数を確認する「ミミズカウント」では、当初数十匹だったミミズが、8月には800匹を超えるようになりました。開始当初、ミミズを触ることに抵抗があった生徒も、今では無心になってカウントしています。

写真:ミミズカウント中の生徒達

ミミズカウント中の生徒達

写真:最高記録更新!

最高記録更新!

写真:農園で収穫されたバジル

農園で収穫されたバジル

写真:コーヒー滓回収時にバジルをカフェに届ける

コーヒー滓回収時にバジルをカフェに届ける

また、農園で収穫されたバジルがコーヒー滓を回収しているカフェで使われるなど、規模はまだ小さいですが、地域の有機性廃棄物から堆肥が生産され、その堆肥で育てられた農産物がまた地域で消費されるリサイクルループが実現しています。この資源循環システムの環境性能を、私達の生活に欠かせないミミズの生態に関する知識とともに、中学2年生の技術の授業で紹介する機会がありました。

写真:中学2年生 技術の授業

中学2年生 技術の授業

図版:十分にミミズが増えたコンポストではこのサイズのヘチマが3日で分解されます

十分にミミズが増えたコンポストではこのサイズのヘチマが3日で分解されます

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図版:ミミズコンポストを使った資源循環

生ごみは多くの自治体で焼却処理されており、そのリサイクルが課題になっています。水分の多い生ごみを焼却処理する場合、収集運搬や焼却の過程で多くのCO2が排出されます。それに対して、ミミズコンポストは、処理段階で一切エネルギーを使わず、収集運搬や堆肥活用の段階においても、ほとんどCO2を排出しません。従来型の生ごみ処理と比較して本システムは、すべて地域の中で処理が完結する、極めて環境負荷の低い解決策となります。

今後、キャンパス内で発生する生ごみの投入量を徐々に増やし、リサイクルループをより活発にまわしていくことが目標です。

ホップを使った緑のカーテンのその後

今年から始めたもう一つの取組がホップを使った緑のカーテンです。今年の夏は猛暑日が多く、8月の降水量は例年の半分程度であったため、緑のカーテンにとっては厳しい夏となりました。順調に生長していたホップは、ほぼすべての株において蔓(つる)が校舎3階の高さまで達していましたが、8月下旬以降のゲリラ豪雨や9月上旬の台風の影響を受け、生育不良(枯死)が生じる株も発生しました。今後、次年度に向けて地下茎を育てていき、今年明らかになった課題を解決する計画を練っていきたいと考えています。

写真:校舎3階まで達したホップ蔓

校舎3階まで達したホップ蔓

また、緑のカーテンが建物の温熱環境の改善にどれぐらい効果があるのかについて、ミミズコンポストと同様、中学2年生に取組を紹介しました。緑のカーテンは、建物内外の温度を下げる緑陰効果があるため、エアコンの使用を抑えることもでき節電効果も期待できます。

写真:放射温度計を使って表面温度を測定する生徒達

放射温度計を使って表面温度を測定する生徒達

写真:ホップ毬花

ホップ毬花

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さらに、生徒と一緒にホップの蔓下ろしの作業を実施し、蔓を活用したリースや籠作りを行いました。ホップの蔓はしなやかで加工し易く、木質化するため適度な強度を持っています。大量に回収した蔓は後日、学校説明会の際に行われたリース作りワークショップにおいて有効活用されました。

写真:ホップで作ったリース

ホップで作ったリース

写真:蔓を片付ける生徒達

蔓を片付ける生徒達

写真:巨大リースを囲み集合写真

巨大リースを囲み集合写真

課題も残る一年でしたが、日駒エコキャンパスの取組は着実に前進しています。ミミズコンポストでできた堆肥が農園や緑のカーテンに使用され、屋上から飛んでくるミツバチは野菜の受粉を助け、収穫物は学園祭や地域で消費され、残った生ごみは再びミミズコンポストへ投入される。そんな循環が教育の場で生まれ、学校の魅力につながっていくことを願い、今後とも取組を支援していきたいと思います。

(担当:S)

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「日駒エコキャンパス」の取組みのご紹介

2018年7月

日本工業大学駒場中学校・高等学校(以下、日駒)の現在の校舎は、当社の設計・施工により2001年に完成し、校舎完成後も耐震化、増改築、リニューアルなど様々な形で関わりを持たせていただいています。また同時に、当社は教育環境づくりのプロセスを支援するパートナーとしての活動の一環で、自然共生、資源循環、CO2削減といった環境テーマを様々な実体験を通じて学ぶことができる「日駒エコキャンパス」の取組みをサポートしています。

今回は、具体的に3つの活動内容をご紹介します。

日駒ニホンミツバチプロジェクト(自然共生の取組み)

2010年から「日駒ニホンミツバチプロジェクト」を立ち上げ、「園芸養蜂愛好会」を中心に教員・生徒が継続的に活動を実施しています。学校周辺での蜜源調査、学園祭における採蜜実演や観察箱による巣の展示、屋上の養蜂エリアの改善について考えるワークショップ、参加型体験講座など、その活動内容は多岐にわたります。当社は養蜂スペースの設計・施工、各種ワークショップの企画や教材の提供など、先生方と連携してこの活動を支援しています。

写真:飼育管理の様子

飼育管理の様子

写真:校舎屋上の養蜂スペース

校舎屋上の養蜂スペース

写真:蜜源調査の様子

蜜源調査の様子

写真:愛好会の今後の取組みについて考えるワークショップ

愛好会の今後の取組みについて考えるワークショップ

活動の中心となっている園芸養蜂愛好会はその名のとおり、ミツバチプロジェクトの他に校内にある農園の管理も行っています。

農園にはみかん、柿、栗、ザクロなどの果樹の他、ハーブ類や野菜も栽培されており、日駒では、蜜・花粉を提供する植物と、それを受粉するミツバチの蜜月の関係が成り立っています。

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写真:バジルの収穫

バジルの収穫

写真:ナスの収穫

ナスの収穫

ミツバチの飼育や植物の栽培など、直接手で触れて実践する園芸養蜂愛好会の活動により、都心部であっても生き物目線で自然を見る目が養われ、先輩から後輩へ受け継がれています。

BECSの導入(資源循環の取組み)

日駒ミツバチプロジェクト開始から9年目となる今年2018年から、新たな試みが始まりました。園芸養蜂愛好会が管理する農園に、当社が開発したBECS(Building Earthworm Compost System)を設置したのです。BECSはシマミミズを使った生ごみの堆肥化装置です。調理実習や料理愛好会の活動で出てくる野菜くずに加え、近くのカフェから集めたコーヒー滓(かす)を入れており、日々、シマミミズによってそれらが分解されています。この取組みにより、学校や周辺地域から発生する有機性廃棄物が良質な堆肥に変わり、その堆肥により作られた作物が再び学校や地域で消費されるリサイクルループが実現します。地域で発生したごみがオンサイト(その場所)で分解され、オンサイトで食物の生産に使われる資源循環システムです。

まだまだ小さい規模ですが、開始から約3ヶ月が経過し、ミミズはどんどん増え順調に堆肥が生産されています。9月の日駒祭ではコンポストにたまった堆肥を取り出す作業を環境プログラムとして行う予定です。

写真:生ごみを分解するシマミミズ

生ごみを分解するシマミミズ

写真:生徒によるBECSの管理

生徒によるBECSの管理

写真:近隣のカフェからコーヒー滓を回収

近隣のカフェからコーヒー滓を回収

写真:料理愛好会からもらった野菜くずを投入

料理愛好会からもらった野菜くずを投入

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ホップを使った緑のカーテン(CO2削減の取組み)

もう一つ、今年から始めた取組みがホップを使った緑のカーテンです。体育館に続く、校舎南側の通路沿いに設置されているプランターには、これまでパンジーなどが植えられていましたが、この度、翌年以降も成長を続ける多年草のホップを植え、校舎の壁面を覆うように誘引紐を設置しました。成長の早いホップは、3ヶ月で既に校舎3階の高さまで達しています。日差しの強くなるこれからの季節、緑のカーテンが校舎の温熱環境を改善してくれることでしょう。ミミズコンポストと同様、9月の日駒祭では収穫物であるホップの毬花(きゅうか)を扱った環境プログラムを実施する予定です。毬花の中にあるルプリンという香り成分の観察や、匂い袋の製作、リース作りなどを予定しています。

写真:ぐんぐんと成長するホップ

ぐんぐんと成長するホップ

写真:生徒からの注目度は高い

生徒からの注目度は高い

鹿島グループでは今回ご紹介した「日駒エコキャンパス」のような取組みにおいて、生徒が主体的に関わり、持続的な活動とするための企画や運営管理のサポートを行っています。

次回は学校内外からの注目が集まるこれらの取組みについて、日駒祭の様子なども含めてレポートしたいと思います。是非、ご期待ください。

(担当:S)

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狛江版CSA-2年目のチャレンジ

2016年11月

狛江版CSA

2016年2月の記事で、国土交通省の「都市と緑・農が共生するまちづくりに関する調査」として実施している「狛江版CSA」の報告会の様子をレポートさせていただきました。この取組みによって、住宅密集地にある緑地や農地の新たな可能性を示すことができ、国交省、農水省からも高い評価を得ました。

※鹿島と狛江市によって設立された「狛江版CSA発足準備協議会」は、国土交通省の「平成27年度、28年度 都市と緑・農が共生するまちづくりに関する調査」に対し、緑地・農地を活用した循環型まちくづくり~狛江版CSA~を提案し、採択されています。
“CSA”とは“Community Supported Agriculture”の略で、日本語に訳すと「地域に支えられた農業」となります。CSAには様々な仕組みがありますが、大きな目的は、食の生産地と消費地を繋ぎ、生産者とそれを支持するコミュニティーを結びつけることで、より強固な関係性やパートナーシップを生み出すことです。

2016年狛江版CSAでの主な取組み

○ミミズコンポスト
市内の飲食店・家庭から発生する調理くずや、農地から発生する野菜くずをミミズによって堆肥化するコンポストシステム。昨年は飲食店の調理くずを主な対象として、鹿島がコンポストの管理を行いながら処理能力やミミズ堆肥の成分分析など基礎的データを集めました。今年は農家の直売所、市民団体が管理する公園を拠点に、市民が家庭で発生した調理くずを自ら持ち込み、コンポストも自主的に管理するシステムの構築にチャレンジしており、順調に運営されています。

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○生き物除草
初年度は鹿島グループ主体で行った生き物除草により、市民の皆さんに緑地・農地へ関心を持って頂き、また緑地・農地の持つ教育機能に対する認知度を高めることができました。次年度は市内の農家さんに飼育拠点を提供してもらいながら、鹿島グループで除草管理を行いましたが、今年は、「市民参加型生き物除草」を目標として掲げ、市内のNPO法人、福祉法人による除草管理を試行しています。

写真:ヤギを除草対象地まで運ぶ市民団体の方々

ヤギを除草対象地まで運ぶ市民団体の方々

写真:繋牧用のアンカーを打つ様子

繋牧用のアンカーを打つ様子

○アドプト緑化
ホップ苗を使った緑化キットを市内の飲食店、小学校、公共施設など様々な場所で株分けし、里親として栽培してもらう取組みです。市民の手によって育てられたホップの毬花を収穫し、地元産ホップを使った地ビール(狛江C.S.Ale)ができました。1本あたり30円の緑化活動資金が含まれており、飲めば飲むほど町中にホップの緑が増えていくというコンセプトです。幅広い層から支持を受け、あっという間に売り切れてしまいました。

写真:収穫されたホップ

収穫されたホップ

写真:できあがった地ビール「狛江C.S.Ale」

できあがった地ビール「狛江C.S.Ale」

写真:ホップ栽培キットによって緑のカーテン

ホップ栽培キットによって緑のカーテン

写真:緑陰形成の効果を測定する小学生

緑陰形成の効果を測定する小学生

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市民フォーラムを開催

今年も狛江版CSAによる取組みを幅広く認知していただくことを目的に、市民フォーラムを開催しました。10月30日、狛江市役所の会場には現在関わっていただいている農業者、飲食店、市民団体、小学校の方々にも集まっていただき、取組みを報告するとともに、今後の課題などについて話し合いました。

写真:調査業務概要について報告

調査業務概要について報告

写真:生き物除草に関わった市民団体からのコメント

生き物除草に関わった市民団体からのコメント

写真:気象キャスターネットワーク副代表岩谷様

気象キャスターネットワーク副代表岩谷様

写真:NPO法人バース佐藤事務局長

NPO法人バース佐藤事務局長

フォーラムの最後、昨年度の報告会で基調講演をいただいたNPO法人 気象キャスターネットワークの副代表の岩谷忠幸様とNPO法人バースの事務局長である佐藤留美様に、今回も狛江版CSAアドバイザーとして総評をいただきました。

岩谷様からは、パリ協定に基づき、2030年に家庭から出ているCO2を40%削減という厳しい目標の達成に向けて、市民を巻き込んだ取組みを早期にシステム化することがポイントであることをご指摘いただき、様々なステークホルダーが参加して実施している狛江版CSAの取組は、大変意義があるとの評価をいただきました。また、佐藤様は、農家以外の飲食店、商店、市民が一緒になって成り立つ「農を軸としたエリアマネジメント」に触れられ、その実現のためには支援・仲介する仕組みが重要であることをご指摘いただきました。狛江版CSAでは、鹿島がそのコーディネーター役を様々な仕掛けで実行している先駆け的取組みであるとの評価をいただきました。

会場からも応援メッセージを多数いただきました。これらを励みに、来年3月まで続く実証調査の中で、狛江版CSAが本格始動する流れを作っていきたいと考えております。

狛江版CSAの取組みはコンパクトな市域の中に緑地・農地が点在している地理的な条件によって成り立っています。同じような条件を持つ自治体や開発エリアでは廃棄物の輸送費が削減され、十分に応用できると考えています。未利用地の有効活用、エリアマネジメントでの活用をお考えの方は、是非、鹿島へご相談ください。

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狛江CSA市民シンポジウム

2016年2月

2015年10月の記事で、国土交通省が促進している「都市と緑・農が共生するまちづくり」の実証調査として実施している狛江版CSAについて、ヒツジ除草を中心にご紹介させていただきました。本調査業務は狛江市と鹿島が立ち上げた狛江版CSA発足準備協議会が中心となり、7月から市内農業者、小学校、市民団体等の協力のもと、実施してきましたが、今回はヒツジ除草の他に、ミミズコンポスト、珈琲滓ヒラタケ栽培の概要と、2月7日に行った市民シンポジウム(報告会)の様子をレポートします。

ミミズコンポスト

ミミズコンポストは狛江市立狛江第一小学校のすぐ近くで農園と直売所を運営している農家さんにご協力いただき設置させていただきました。畑で発生する野菜くずや葉っぱ・茎(農産物非食用部)などの他、狛江市内のレストランから発生する調理段階の野菜屑を自転車で回収し、ミミズによる堆肥化を実施しました。できた堆肥は、農産物の生産に活用する他、直売所での販売も行い、資源循環の中で市民と農業者の間に新たな関係性を生む仕組みとして試行しました。

食品系の廃棄物を有効活用する取組みは各地で実施されていますが、今回の取組みは収集・運搬の段階から堆肥化の過程でほとんどエネルギーを使わず、直売所というコミュニティー単位で取組める活動として有効であることが示唆されました。現在、直売所の顧客数名にモニターとなってもらい、家庭から発生する生ごみもミミズコンポストに投入しています。

この取組みは、同第一小学校3年生の社会科見学の中でも紹介されました。授業では、地域の貴重な農地や農業者、加えて分解者であるミミズの存在が人間にとって大切であることを学ぶ機会となりました。報告会では、狛江第一小学校の校長先生に児童の反応等活動成果を報告してもらいました。

写真:第一小学校3年生を対象とした環境プログラム

第一小学校3年生を対象とした環境プログラム

写真:発表する第一小学校校長

発表する第一小学校校長

珈琲滓ヒラタケ栽培

2015年7月から堀口珈琲 狛江店とイタリア食堂Vino unoから珈琲滓を回収し、市内キノコ農家のTAKAGI FARMでヒラタケ栽培を行ってきました。ミミズコンポストと同様、市内から発生する有機性資源を有効活用し農産物を生産することで、農業者と市民のつながりを顕在化させる仕組みを試行してきました。

この取組みはTAKAGI FARMの近隣に立地する狛江市立狛江第五小学校の4年生児童のワークショップとしても実施しました。児童の自宅から回収した珈琲滓を集めて班ごとに殺菌し、ヒラタケの種菌を接種して培養、収穫するというものです。湿度、気温などをモニタリングしながら農産物を育てる経験は、都市農業・都市農地保全に向けた国民の理解の醸成という点では大きな効果があったのではないでしょうか?

報告会では取り組みに参加した4年生児童がパネルを使った劇の形式で活動内容を発表し、大いに盛り上がるとともに、会場にいた多くの方が次世代教育の大切さを実感するものでした。

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写真:珈琲滓からできたヒラタケ

珈琲滓からできたヒラタケ

写真:種菌を接種する小学生

種菌を接種する小学生

写真:報告会での発表

報告会での発表

基調講演とパネルディスカッション

報告会ではNPO法人 気象キャスタネットワークの副代表である岩谷忠幸様に「都市農地の多面的機能を活かした環境・防災」という題名で、NPO法人 birthの事務局長である佐藤留美様に「未来の暮らしを救う、都市農業のあり方」という題名で基調講演をしていただきました。防災、環境、緑地管理分野の第一線で活躍されるお二人に、情報提供していただくとともに、今回の実証調査を様々な視点から評価してもらいました。パネルディスカッションでは狛江市役所の環境部長の他、市内農業者代表、市民代表を交えて、今後の狛江版CSAを実施していく上でのポイントなどについて議論しました。

写真:パネルディスカッションの様

パネルディスカッションの様子

コンパクトシティ

今回の調査は、集約型都市構造とよばれるコンパクトシティ整備に資する要素技術に取り組んだものです。全国で2番目に面積が小さい市であり、既にコンパクトシティの要素をたくさん持っている狛江市において、ヒツジが緑地・農地で環境負荷の低い除草を行い、ミミズが発生する野菜くずを堆肥化して再び農業生産に有効活用する。そして、コーヒー滓はヒラタケ栽培の培地となりました。このような地域に密着した循環型の取組は、市内に小規模な農地や緑地が分散して立地しており、取組拠点として利用出来たことにより実施可能となりました。そこには資源循環のシステムだけでなく、農業者と市民、農業者同士、市民同士の新たなつながりが生まれました。まだまだ課題は残されていますが、今後のまちづくりにつながる貴重なヒントを得ることが出来ました。それぞれの地域における地域に支えられた農業「CSA」の確立にむけ、今後さらに活動を継続しますのでご期待ください!

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グリーンインフラについて

2015年9月

「いきまち通信」は、鹿島環境本部のグリーンインフラグループのスタッフが、様々なトピックを皆様にお届けしております。今回は、この「グリーンインフラ/グリーンインフラストラクチャ―」の定義と国内外の動向についてレポートします。

まず、日本国内の動向をみてみると、国土交通省より2014年7月に公表された「国土のグランドデザイン2050」の基本戦略の中で、自然共生の観点にも配慮した緑の防潮堤の整備や、健全な水循環系の構築、流域全体での総合的な治山治水対策の推進にグリーンインフラを適用する方針が示されました。また、環境省が公表する「環境白書 平成26年度版」の中では、“グリーンインフラストラクチャーの活用にかかわる世界の動向について”と題して、欧米諸国でのグリーンインフラに関する定義の認識や実際の取り組み事例を紹介するとともに、グリーンインフラを『土地利用において自然環境の有する防災や水質浄化等の機能を人工的なインフラの代替手段や補足の手段として有効に活用し、自然環境、経済、社会にとって有益な対策を社会資本整備の一環として進めようという考え方』と定義しています。

写真:環境省が公表する「環境白書 平成26年度版」

一方、欧米諸国での取り組みは、日本より数年先行しており、グリーンインフラの活用方針を盛り込んだ具体的な施策が各国から発表されています。欧州員会は、2013年6月、欧州共有の課題である気候変動、防災、農業問題、などの解決に向けてグリーンインフラを積極的に活用することを表明しました。米国環境保護局(EPA)は、雨水管理の側面に着目し、2011年4月には、グリーンイフラを用いた水環境の保全と住み良いコミュニティ創出に関する戦略を発表しています。具体的な内容、実践例のご紹介は、次回以降のレポートで取り上げたいと思います。

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写真:欧米諸国での取り組み

私たちは、グリーンインフラを次のように捉えています。

・「水」、「緑」、「生き物」の3つの要素によって成り立っており、林地、草地、荒地、河川、湖沼、湿地、海岸、農地、公園、庭園、街路樹、屋上緑化など生態系と関連する全ての空間。

図版:既存・新設のインフラに水・緑・生き物の仕組みを取り入れることで多機能化し、様々な便益をもたらす。

・既存・新設のインフラに水・緑・生き物の仕組みを取り入れることで多機能化し、様々な便益をもたらす。

・ハード整備に加え、適切な運用技術(ソフト)によって、ヒートアイランドの抑制、洪水防止、景観改善等の環境改善効果だけでなく、健康の促進、環境教育、レクリエーションなどの人間活動への効果も期待できる。

図版:ハード整備に加え、適切な運用技術(ソフト)によって、ヒートアイランドの抑制、洪水防止、景観改善等の環境改善効果だけでなく、健康の促進、環境教育、レクリエーションなどの人間活動への効果も期待できる。

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・グリーンインフラを従来インフラの補足手段や代替手段として用いることで、地域の魅力向上や活性化、低コストのインフラ維持管理、生物多様性の保全、防災・減災効果などを得ることが可能となる。

つまり、グリーンインフラは、自然環境、地域経済、コミュニティにとり有益な新しい社会基盤と理解しています。

鹿島の主な保有技術は、蚊やユスリカなどの衛生害虫を捕食するコウモリを誘致するバットボックス、屋上水田・菜園、石倉カゴ、インセクトホテルなどのハード技術に加え、ミツバチプロジェクトや、ヤギ・ヒツジなどの草食動物を使った除草もグリーンインフラに関する運用・管理技術(ソフト技術)があります。これらの技術に関するレポートは、いきまち通信で取り上げてきました。

図版:グリーンインフラに関する運用・管理技術(ソフト技術)

新たに掲載開始した「グリーンインフラとは?」ページでは、鹿島の保有する技術について、より詳細な情報を掲載しております。こちらも是非ご覧ください。

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造園学会ミニフォーラム
「都市のつくる農のランドスケープ」についてのレポート

2015年6月

5月22日~5月24日に公益社団法人日本造園学会の全国大会が東京大学で開催されました。鹿島は、これまで「ミツバチプロジェクト」「ヤギ除草」「屋上はらっぱ」に関する研究論文の発表や、「民間開発事業における緑地評価の意義と課題」「コミュニティーの価値向上を目指した緑地評価の意義と課題」と題したミニフォーラムの開催など意欲的に取組んできました。本年度は「都市のつくる農のランドスケープ」をテーマとしたミニフォーラム開催をお手伝いさせていただきました。

「都市のつくる農のランドスケープ」と聞くと、何のことか?と思ってしまう人も多いかもしれません。これは、今、注目されている「都市農地の保全」についてランドスケープの観点から色々と議論してみようという試みです。2015年4月に「都市農業振興基本法」が成立しました。これは都市の中にある農地が食料生産だけでなく、都市住民に対してヒートアイランド現象の緩和、防災空間の提供、住民交流の促進、レクリエーションの場の提供など、様々な機能を果たしており、「是非とも保全していくべきだ」という民意を裏付けるものです。バブルの時代には住宅地の供給源として見られていた都市農地ですが、近年、国交省と農水省が足並みを揃えて、都市の中の貴重な緑地空間として農のランドスケープを保全していこうという流れになっています。

写真:都内の都市農地

都内の都市農地

造園学会発行のランドスケープ研究79巻1号(2015.04)では「都市のつくる農のランドスケープ」特集があり、「良質な農の風景」を保全する様々な取組みが紹介されました。そこでは、「良質な農の風景」を支える様々な職能の担い手が紹介されていますが、ミニフォーラムでは、本特集に関わった大学教員、行政、NPO、気象キャスターら4名が、多様なステークホルダーが関わる都市農地を維持・継承していく上での課題や今後の方向性について発表しました。

写真:発表の様子

発表の様子

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発表後のディスカッションでは都市農地の持つ負の側面、周辺住民が参加できる仕組み、都市と農村の交流など多岐にわたる議論となりました。ここで、一番印象に残ったのは如何にして裾野を広げていくかという議論です。テレビの視聴率が例に挙がりましたが、都市農地の保全、良質な農の風景の保全にはまず都市住民に関心を持ってもらうことが重要であり、そこから多くの恵みを受けていることを実感してもらうことが第一だということです。

写真:ディスカッションの様子

ディスカッションの様子

写真:戸塚屋上水田

戸塚屋上水田

鹿島では都市の中にある農空間も重要なグリーンインフラとして捉え、都市住民が健康で豊かな生活を送るためには必要不可欠な要素だと考えています。そのためにはどのような風景を作り上げているかといった「見え方」が大切ですし、誰によってどのように使われているかといった「使い方」も重要です。今後も様々な「農」に関するプロジェクトを通じて、都市の中でのあり方を探っていきたいと思います。

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鹿島がWWFジャパン ビジネスと生物多様性
勝手にアワード『亀の甲より年の功賞』を受賞

2015年4月

この度、WWFジャパンの「ビジネスと生物多様性 勝手にアワード」にて、鹿島は『亀の甲より年の功賞』を受賞しました。

※WWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)

ビジネスと生物多様性 勝手にアワード

「ビジネスと生物多様性 勝手にアワード」は、東証一部上場企業1,818社が発表している環境報告書類をWWFジャパンが独自に調査し、サプライチェーンマネジメントなどを通じて生物多様性に貢献している企業を表彰する制度として、2015年に初めて制定されたものです。鹿島は功労賞に相当する『亀の甲より年の功賞』を受賞しました。

写真:表彰状、WWFジャパン 筒井事務局長(右)から表彰状を授与される鹿島 金子副社長(左)

WWFジャパン 筒井事務局長(右)から表彰状を授与される鹿島 金子副社長(左)

受賞理由として、鹿島は現在の「鹿島生物多様性行動指針」の前身である「鹿島生態系保全行動指針」を2005年に策定していますが、これは今回調査した生物多様性に関する指針として内容が確認できたものの中で最も古いこと、また、2008年の第9回生物多様性条約(CBD)締約国会議(COP9)で発足した「ビジネスと生物多様性イニシアティブ」へ日本企業としていち早く署名したことなど、建設会社の中で先駆的に活動してきたことが評価されたとのことでした。

企業の生物多様性への取組みとアワードの意義

2010年に名古屋で開催された第10回CBD締約国会議(COP10)をきっかけに、日本の企業でも生物多様性の保全と持続的な利用に関する取組みが増えてきました。しかし、WWFジャパンによると、大半の企業ではこうした取組みは自社の事業活動が直接関係する環境問題とは位置づけられておらず、社会貢献活動の一分野をでていないことを指摘しています。この要因の1つとして、原材料調達を始めとする事業活動が生物多様性に直結する問題であるとの理解が、企業間にも一般市民の間にも広がっておらず、そのため、企業の生物多様性への取組み自体が正当な評価を得ていないことに言及し、今回のアワードを実施したそうです。

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グローバルな動きを踏まえた鹿島の先進的な取組み

2002年イギリスでビジネス・アンド・バイオダイバーシティ会議というものが初めて行われました。その後、イギリスの企業が生物多様性ガイドラインを発表し始め、EUを中心にビジネスにおける生物多様性に関する取組みが世界に広がっていきました。

一方、当時、国内では生物多様性という言葉自体が認知されていない状況でしたが、海外留学経験者、生態系、造園設計のスペシャリストが海外事情や建設業を取り巻く市場動向を見極めるため、2004年に社内で自主的な研究会を立ち上げました。その後、研究会は正式な社内組織となり、2005年、日本の上場企業で初めて生物多様性に関する企業ガイドライン「鹿島生態系保全行動指針」を策定し、2009年に「鹿島生物多様性行動指針」に改訂しています。

2008年にはドイツのボンで第9回CBD締約国会議(COP9)が開催され、企業が生物多様性の保全に積極的に取組むことを目標とした「ビジネスと生物多様性イニシアティブ」に34社の企業が署名しリーダーシップ宣言を行いました。この時署名した日本企業は鹿島建設を含め9社です。

このCOP9では、企業、NPO/NGO、政府などが議論を重ね、生物多様性への取組みは、社会貢献的な活動として単に「自然を守るため」ではなく、企業が新たな価値を生む取組みとして生産活動の中に取り込むべきだとの認識が共有されました。

写真:COP9にてビジネスと生物多様性イニシアティブへ署名

COP9にてビジネスと生物多様性イニシアティブへ署名

その後、2008年「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」が発足、2009年環境省「生物多様性民間参画ガイドライン」策定、2010年には名古屋で開催された国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)にて「生物多様性戦略計画2011-2020および愛知目標」が採択され、生物多様性について国内においても関心が高まりました。鹿島はこれら国内外の活動において積極的にリーダーシップをとり、継続して取り組んできました。

今後に向けて

鹿島は、「いきものにぎわうまち」をコンセプトとして、生物多様性の保全と持続可能な利用を目指したまちづくりに取り組んできました。これは、建設業が与えるインパクトへの代償措置として「生物多様性保全」を目指すだけでなく、生物多様性への取組みを通じて「人の心と体の健康」、「人と人、人と自然の交流」、「地域経済の活性化」、「安全安心な暮らし」が実現できるまちづくりを目指すことを意味しています。

今回のWWFジャパンから受賞した「亀の甲より年の功」賞を励みとして、今後も人や自然から学ぶ姿勢を忘れずに日々の活動に取り組んでいきたいと思います。

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COP11及びURBIO2012に参加

2012年11月

10月8日から10月19日に開催された第11回生物多様性条約締約国会議(COP11)及びそのサイドイベントであるURBIO2012に参加してきました。

まず、10月8日から10月12日までの期間、インド西部の大都市ムンバイで開かれたURBIO2012に参加しました。世界25ヵ国から200名以上の科学者が集まる中、鹿島で実施しているミツバチやヤギプロジェクトがどのように住民に認識され、そしてプロジェクト実施前後で住民意識がどう変化したのかを発表しました。発表タイトルは“A study on the Effect of Biophilic Landscape Design: Urban Beekeeping Project and Grazing of Urban Greenspace by Goats and
Chickens”です。

写真:URBIO2012

写真:と牛がキャンパスの草地を除草していました。

会場からは飼育は誰がやっているのか?プロジェクトの進行管理の方法は?など多数の質問がありました。
会議はボンベイ工科大学で行われたのですが、昼休みに外へ出ると牛がキャンパスの草地を除草していました。まさに「Urban Grazing」ですね!しばらく除草の様子に見入ってしましました。

URBIO2012の終了後、インド中南部のハイデラバードへ移動し、COP11に参加しました。

写真:COP11

写真:COP11

名古屋のCOP10と比べ、若干規模は小さかったものの、名古屋で決められた「愛知ターゲット」を各国がいかにして達成するか、活発な議論が交わされていました。

ニュースでも報道されましたが、今回はターゲット達成のための資金について最終日の深夜まで集中的な議論があり、先進国から途上国へ流れる資金を2015年までに倍増させることが暫定的に決まりました。また、インドやアフリカ諸国などの発展途上国が生物多様性条約に関する国家予算を増額することを誓約しました。

写真:COP11

前回のCOP10の際に「生物多様性の保全のためには自治体が中心的な役割を担うべき」という決定がありましたが、今回も名古屋で開催された自治体会議が「Cities for Life Summit」として開催されました。愛知県知事、名古屋市長、東京都、兵庫県など日本からも多数の参加がありました。

写真:COP11

中でも自治体会議の中心的な役割を担っているICLEI(イクレイ)とその他世界各国の研究機関、国連機関が共同で作成した「Cities and Biodiversity Outlook(CBO)」が注目を浴びました。これは都市と生物多様性の地球規模の概況と人類存続のために、今後とるべき10の大方針をまとめたものです。世界の都市人口が5割を超え、今後2030年までに都市化される面積は2000年を基準とすると3倍になると言われています。よって、今後どのような都市開発を行うか、また都市住民がどのような生活を送るかが非常に重要になってきます。それが人類の存続を決めるといっても過言ではないとのコメントが参加各国から発言されていました。

写真:Cities and Biodiversity Outlook(CBO)

今回の会議では「アイチターゲット」と何度も耳にしましたが、2020年までに達成すべき目標として国際的に共通言語となっていることを実感しました。

鹿島では今後とも様々な機会を利用して「生物多様性都市への取り組み」「Biophlic landscape design」に関して国内外に情報発信を行っていきます。

「愛知ターゲット」

2020年までに生態系サービスが弾力性を備え、継続的にそのサービスが提供されることを確保するため、生物多様性の損失を止める緊急かつ効果的な行動をとる。

図版:愛知ターゲット

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ヤギプロジェクトの論文発表

2012年6月

鹿島では科学的根拠に基づいた「いきものにぎわうまち」の提案を行っています。

今回、ヤギプロジェクトに関する論文を平成24年度日本造園学会全国大会にて発表させていただきました。

タイトルは「都市域における山羊を利用した緑地管理活動に関する研究」です。
2010年3月より実施している山羊除草についての“除草効果”、“周辺住民への影響”、“管理手法”などを定量的なデータとともに報告しました。

写真:ヤギプロジェクトの論文発表を行いました。

例えば植生変化では、セイタカアワダチソウなどの外来雑草の衰退とアオスゲなど在来種が増加したこと。周辺住民への意識調査では、臭いや鳴き声に関する不満はなく、自然環境に対する会話が増えたこと。また、機械除草と比べて騒音、CO2、植生残渣を排出しない環境負荷の低い緑地管理手法であることなどがデータから読み取ることができました。

写真:before after

今後もヤギプロジェクトのモニタリングを継続し、さらなる知見を深め、生き物を活用した緑地管理の普及に向けて取り組みを強化していきたいと考えています。

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