塚本聡 (株式会社 スクウェア)

例えば江戸時代後期位から東京の地図の発展を、ずっと時間軸上で見ていくと、結構広がり具合とか変化があって面白い。これを百年という連続体として捉えた時にどう見えるのか。今のお台場のあたりなんて何も無かったのが、何か事情があるから、お台場に砲台を作って、それがずっとほっておかれて、又そこに出来上がっていくという、一つの都市が百年間経っていく中での流れという時間軸上でいう変化の面白さがあると思います。何も無かった所に橋が建って、1年では見えないけれども、百年になってくると生き物が、筍なりなんなり生えてくるのが見えてくるように。

今の子供たちに対して、いつかはこうなるかもしれない未来、楽しそうな未来を、不安そうでもいいかもしれないけれど、何かひとつの未来を提示しないと。漫画の「アキラ」みたいなものだけではね、まあ、あれはアンチテーゼとして、やってはいけない、こうならないようにしようっていう意味があるからいいんだろうけど、でも、薔色の未来も出してあげないといけないのではないか。

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伊藤俊治 (美術史家)

アボリジニの人達が例えばドリームタイムという言葉で彼らの時間概念を非常 に精緻な青写真として提示しました。その時間の概念というのは過去も未来も なく、多元的に生まれる時間で、直線的に進む時間でなくて時間というものは 常に放射状に生まれていくという概念、生成する時間の概念といったものを、 彼らは作ってきた。

間(ま)というのは、空間と時間の間(あいだ)ということだと僕は了解してい るんだけれど、日本人も実は時間と空間という次元が交差した地点に生まれる 「間」という概念、「間」という不思議な知覚のカテゴリーをずっと特質として 持っていたわけです。それは建築観の中にも応用されていると思いますけれど、 アボリジニの人たちがドリームタイムという時間の概念を持っていたように、日 本にも嘗ては、時間と空間という認識のカテゴリーを分別して考えないようなあ る特殊な感覚とか知覚のカテゴリーを持っていたと思います。

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塚本由晴(建築家)

100年でいうとね、「ビテイコツガイド」というものをちょうど作ったところです。100年で東京がどう変わったか、というガイド・ブックなのです。今年前期の大学院生の課題です。例えば、今、西戸山タワーガーデンの所は、100年前はなんだったか、というように。、最近だと、バブル以降開発があって、ガラッと雰囲気が変わった所が、町の中で「島」みたいになっていますよね。東京を「島」の集まりだと考えて、それぞれの「島」の履歴を見てみようというアイディアです。

一分都市って、瞬間的な現象なのでしょうね。その都市現象をどうやって記述するかという問題のたて方でいいのではないかと思います。現象が流されるままにあるだけでは、なかなか都市とは言いにくいけれど、それが何でもいいからある媒体で定着される事が起こればより都市に近づくと思う。
僕の中ではね、建物を建てるのと、本や雑誌作るのとは、情報を物理的な媒体に落とすという意味で、そんなに変わらない。だから、最初は雑誌でやって、次に本になって、それが建物になって、今度はそれをいくつも繋げてみようか、みたいな話になって、物的にも都市的な広がりになるかもしれない。そうやって媒体を代えていくことによって、所謂都市に近づいていくけれども、基本的には、ある情報を物理的な構造の中に定着させるっていうこと自体が、都市になるきっかけなのかな、と思います。

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佐藤宏之(考古学者)

現在の我々が住んでいる環境の中で形成された価値観と同じ価値観で、物事を判断して良いのか、という問題は当然あるのではないか。考古学などやっていると、先ず常識が全く通じないのです。そういう意味で、過去のいろいろな所の集団というのは、全部価値観が違って、価値観が違う理由というと、その地域の環境とかコンテクストに非常によく合理的に合っているのが普通です。そうするとそういうものも、もし未来都市とか、或いは百年、千年都市を考える場合は、百年間ライフサイクルを延ばすだけで良いのかということです。
千年間延びれば良いのか。それは暗黙に最初に設定した価値観が、その後も延びるということを前提にしていますね。それは無いのではないでしょうか。

日本の縄文のように一戸ずつの建物は、二、三十年しか続かないけれど、集団は五百年、七百年続くというのは、建物を壊すからです。壊していけるからどうとでもなる。そういう発想は入れないのでしょうか。もし壊さないとするならば、長いライフサイクルを持った建築やデザインを考える場合、内部の人の価値観や価値判断の変更をどういうふうに織り込むのか、ということをお聞きしたいと思ったのです。我々はとても怖くてそんなことは出来ない、壊せるようにしておいた方が良いのではないでしょうか。

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阿部仁史(建築家)

すごく昔からよく考えていたことは、住宅というのには速度がいろいろある。
千年都市というけれど、千年都市の中には1分も1秒も何秒もいろんなサイクルのものがあって、住宅なんかにだってすごく多くの時間のサイクルがある。例えば住宅が20年、30年もつとドアの開閉はものすごいスピードで毎回やられますし、窓を開ける閉める、壁紙を変えるというのも多分これは5年位のサイクル、或いはもしかしたら間取りを変えるということも10年位のサイクル、多分ずうっと時間を追ってやっていくとけっこう動いているんだと思っています。ということは部位ごとにいろんな時間軸の設定をもっと意識的にしていくことで、多分設計が変わるだろうと思っています。

例えば白鷺橋のデザインでは、時間の概念を強く意識しています。あの橋には、渡るということでしか空間が無いんです。だから映画のコマ割りみたいになっている。ミヤギスタジアムもそうです。あれは断面を追って行くと、それぞれの線が連続して対話していくようになっているんです。構造フレームがダンスのチャートのようになっている。

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