特集:鹿島のリニューアル

お客様の要望に応えるリニューアル
 
多様なニーズに応える技術
 リニューアル工事におけるお客様の要望の多くは「居ながら」である。(「居ながら」は当社の商標登録)営業や業務を続けたまま,効果的なリニューアルができれば,仮移転などの費用がかからずにすむ。当社ではもっとも大掛かりとなる耐震補強ですら,建物の外周部に制震装置を組み込んだり,既存のビルの下部に基礎を新設し免震装置を組み込む免震レトロフィットなど豊富な「居ながら」メニューを備えている。
 また,近年はIT化対応のニーズも多い。電源容量の増設やコンピュータルームを免震化する床免震技術などで対応している。また,省スペース省エネ型設備機器の導入によりエネルギーコストを削減する事例や,後の維持管理費を管理したいという要望も多くなっている。当社では,エネルギーの使用状況や室内環境,設備機器の運転状況の情報を遠隔管理して最適化を図るビルオペレーションドクターを開発しており,ビルの運用コスト低減をサポートしている。
  都市のヒートアイランド現象に歯止めをかけると期待されている屋上緑化。当社が開発している屋上緑化に適した軽量土壌を用いて,リニューアル時にも簡単に屋上緑化を創出することができる。
ハニカムダンパによる補強例 制震装置・ハニカムダンパによる補強例(建物外周にブレースを設置しハニカムダンパを組み込んだ大正製薬本社ビル)

居ながら施工
  居ながらリニューアルの場合,大きな音や停電などを伴う工事は夜間にしかできない,同じビルの中にはお客様が普段と変わらず仕事をしている等,新築工事に比べ制約が多く,施工計画が難しい。仮囲いの中で行われる新築工事と違い,特に第三者障害の危険も大きい。低騒音,低振動の施工機械を用いるのはもちろん,居室内外への音,揺れのシミュレーションや実験を行って影響を最小限にとどめる工夫がされる。状況が時々刻々変わることも珍しくなく,担当者の資質や経験が要求される。当社では豊富な居ながらリニューアルの実績と確かな技術力,きめ細かな施工計画・対応で,お客様のどんなリニューアル要望にも応えている。
  では,近年の代表的なリニューアル事例を紹介しよう。
 
軽量土壌を用いた屋上緑化の例
軽量土壌を用いた屋上緑化の例(当社技術研究所)

case1
1972年竣工
設計: 鹿島
工期: 1997年10月〜2001年6月
群馬銀行本店リニューアル
銀行本店で高いセキュリティ維持と徹底したトラブル防止策による 「居ながらリニューアル」
 1972年に当社の設計施工で竣工した群馬銀行本店。97年から今年6月まで,3期に分けて居ながらリニューアルが進行中だ。第1期は設備全面改修,第2期は事務棟のコア周り改修,第3期は本部棟の内装改修を中心とした工事が約4年にわたって行われている。現在は3期工事を実施中。
 銀行本店での居ながらリニューアルのため,通常のリニューアル工事での「防災・安全・環境」のほかに「防犯対策」が最優先課題であり,より高いセキュリティが求められている。社員及び作業員の現場への入退場管理はIDカードと職種別に色分けされた腕章で管理する。腕章のない者は警備員によって入場を認められない。また,防災面でも工事フロアに仮設の煙感知器を設置し,工事に起因する火災の防止に努めている。また,業務中の執務環境への影響を最小限にとどめるために,はつり作業,アンカー打設作業は夜間,または土日に行うことを徹底し,OA機器への障害を防止するために溶接作業時のアース1m以内設置を徹底するなどお客様への影響回避に全力で取り組んでいる。
仮設煙報知器 基準階リニューアル前 基準階リニューアル後
現場に設置されている仮設煙報知器 基準階リニューアル前 基準階リニューアル後

interview
リニューアルは
「信頼の連携プレー」
中嶋善樹
群馬銀行
総務部 参事役
中嶋善樹氏
 リニューアルは,我々と設計者と施工者と協力業者とが一緒になって,みんなで「応用問題」を解くということだと思うのです。みんなが応用問題を解ける力がないと,いいものはできない。リニューアルというのは我々とみんなの「信頼の連携プレー」だと思っています。
 リニューアル工事の根幹にあるもの,それは「お互いの意志の疎通」以外の何者でもないといえます。意志の疎通ができてなければ必ず失敗する。ですから,我々と工事関係者は徹底的に議論をぶつけ合うことが必要だと思うのです。特に居ながら工事の場合は,セキュリティの問題が絡んできます。金融機関のしかも本店の中で,セキュリティを保ちながら工事を行うと言うのは,よその現場にはない苦労ではないでしょうか。  リニューアルでは,各フロアが新しくきれいになっていくのが目に見えると言うのが我々にとって何よりうれしいことです。新築工事のように,一斉に新しいところへ移るのではなく,徐々にきれいになっていく。古いところと新しいところが混在していて,きれいになったときの行員の喜びも,それは大変大きいものです。  鹿島さんは,スタッフの一人一人のレベルが高く,お願いしてよかったと思っています。技術的なレベルはもちろんですが,常識人としてのレベルも含めてですね。もしも注文をつけるとしたら,社内だけでなく外部に対しても,より多くのアンテナを張って欲しいということでしょうか。それがいろんな意味で,いい仕事につながってくると思います。



case2
1974年竣工
設計: 鹿島
工期: 1998年8月〜1999年3月
松下電器産業
宇都宮ナショナルビルディング
トータルライフサイクルコスト低減を図った全面オフィスリニューアル
リニューアル前外観
リニューアル前外観
 築25年を迎えた支店ビル。資産価値の観点から建物の寿命を残りあと30年と限定した上で,今後の企業活動を支えるオフィス空間の耐震性,快適性の向上を図った。全面的なリニューアルによるLCC低減を試算し,リニューアルによって低減する修繕更新費,省エネの改善効果に対して,リニューアルに伴う機能向上分の工事費を比較することにより,投資効果判断のひとつとした。選定する材料についても,LCCを勘案して長寿命建材の採用による長期修繕・更新費用の低減をプレゼンテーションし,高耐久性を持つアルミパネルを採用。外壁構成を複層化することで,熱負荷の低減も併せて実現している。
リニューアル後外観
リニューアル後外観(耐久性の高いアルミパネルを使用し,イメージを一新した)

全面リニューアルによるLCG低減の検討



case3
1974年竣工
設計: 鹿島
工期: 1999年9月〜2000年11月
新潟県村上市庁舎
全国初の庁舎における「居ながら」中間層免震レトロフィット
外観
外観
 1974年竣工・築26年の他社設計,他社施工の市庁舎。官公庁では全国初となる「居ながら」中間層免震工法で施工。阪神・淡路大震災後行われた耐震診断の結果,補強が必要とされ技術提案型指名競争入札(プロポーザル競技)により当社案が採用されたもの。免震装置は1階柱頭部に高減衰積層ゴム26基,すべり支承4基を設置。「居ながら」施工のため柱切断等の解体工事ではワイヤーソーなどの低騒音機械を採用し,中央吹抜部にはコンクリート床の設置等を行った。他,老朽化した内外装のリニューアル,身障者対応エレベータの設置など,バリアフリー対応の工事が行われた。
 当社では本工事を始めとする免震レトロフィットの実績を基に,既存のゴミ焼却処理施設を免震化するシステムを開発し,各自治体などに提案している。
免震装置
免震装置(工事中)

免震装置
免震装置(完成後・メンテナンス用開口部)



case4
1973年竣工
設計監理: 寺本・小草共同設計事務所
工期: 1999年8月〜2000年5月
寺町アミューズメントプラザ
(テラスビル本館)

建替えの計画を,リニューアルでの用途変更を提案
リニューアル前外観
リニューアル前外観
 島根県松江市の繁華街に立つ商業施設を場外舟券売場,スケート場,飲食店が入る複合ビルへの用途変更リニューアル。もともとは他社で建替えの計画が進んでいたものを,コストや環境面に配慮し,リニューアルによる用途変更をお客様に提案,入手に結びついた。2階に大型スクリーンを設置するために1フロアのスラブを撤去し,また,柱軸力を減らすために最上階を解体,6階建ての既存建物を4階建てに変更した。建物の外観イメージを一新し,内装,設備を全面的に更新した。
リニューアル後外観
リニューアル後外観

場外舟券売場 一般席
地上2階 場外舟券売場 一般席



当社のLCMサービスとリニューアル
最適な解決策を提案する診断・評価・提案
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リニューアルの先輩から若手社員へ
ライフサイクルを通じた主治医となるために