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interview 土木現場の「工場化」を目指す 土木管理本部副本部長 高田悦久 常務執行役員

生産性低迷の課題を解決する鍵

国土交通省では,熟練技能者の減少による労働力不足の問題解決に向けて,ICTを活用した生産性向上を提唱しています。しかし,私はそもそもの建設業の生産効率が,他産業と比較して低迷し続けている根本的な原因は,我々ゼネコンが施工管理のみに徹し,生産に直結する作業を作業員に委ね過ぎているからだと考えています。本来であれば,鹿島独自の作業手法や施工方法が確立されていて,それに従って生産活動を行うべきところを,作業員の経験や技量で生産効率が左右されるのはおかしいと思います。鹿島の存在価値を根本から見直す必要があります。

写真:高田悦久 常務執行役員

このタイミングで施工体系を抜本的に改革しなければ,鹿島は世界で勝負できる企業には成長できないでしょう。そのためには,建設に関わる全てのプロセスで生産性向上に取り組まなければなりません。それを解決するのが,「ICTによる自動化」だと考えます。

土木現場の工場化

今後,鹿島の土木は「ICTによる自動化」を核に,次世代建設生産システムの確立を目指します。これは,これまで作業員や重機が行ってきた生産活動を自動化機械が担っていくというイメージです。言い換えるならば,“土木現場の工場化”です。

鹿島は,20年以上前からICTを活用した研究・技術開発を継続して行っており,すでに約7年前から建設機械の「自動化」に着手しています。東日本大震災による福島第一原子力発電所解体工事での,高線量がれき撤去の自律運搬システムは自動化技術の開発成果です。鹿島の長年にわたる取組みがいま,時代にマッチングしたということです。ただし,これまでのように施工の一工程のみに関わる断片的な自動化技術では,画期的な生産性向上にはつながりません。生産プロセス全体を通じた「ICTによる自動化」――それが,“土木現場の工場化”なのです。

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CIMを活用しマニュアルを創る

「工場化」の実現には,建設生産全般にわたる作業手順を示したマニュアルが必要です。以前,重機メーカーの工場を見学する機会がありましたが,製品ごとに詳細な作業マニュアルが存在していて,その緻密さに驚きました。建設業でも工事着工時の作業手順書や日々の作業・安全指示書などはありますが,マニュアル化とその改定による生産性向上の意義を確信しました。

生産プロセス全てを網羅したマニュアルを作り込んでいくのは,喫緊の課題です。各工種,様々な形式の構造物のマニュアルを作るわけですから,その情報量は膨大であり,非常に手間と時間を要するテーマですが,この取組みに有効なのがCIM(Construction-Information-Modeling/Management)だと考えています。CIMは,構造物の3次元モデルを活用し,設計・施工情報などを一元管理する土木の新しいソリューションです。「i-Construction」でも積極的な活用を推進しており,当社では,土木管理本部内に「CIM推進室」を設置し,CIM導入の環境整備をスタートさせています。

工場化の第一歩を踏み出したA4CSEL(クワッドアクセル)

現在施工中の「大分川ダム建設工事」は,当社のICT施工に関わる様々な技術を導入しているモデル現場です。そこで試験的に稼働しているのが,「工場化」の第一歩となる建設生産システム「A4CSEL®」です。ダムの堤体盛立工事におけるダンプトラック・ブルドーザ・振動ローラの一連の作業の流れを自動化することに成功しています。名誉なことに,この技術開発成果が産業社会の発展に貢献するものと認められ,このたび「第46回 日本産業技術大賞・文部科学大臣賞」(日刊工業新聞社主催)を受賞しました。開発者をはじめ現場・関連部署関係者の努力が認められたことを,嬉しく思います。

この他にも,トンネルや橋梁などでICTや自動化に関する技術が続々と誕生してきています。今後,益々研究・技術開発のスピードを加速させるために,4月から機械部内に「自動化施工推進室」を設置し,研究・技術開発を支援する環境整備を行っていきます。まず最初の取組みとして,技術者が思い切った開発にチャレンジできる実験フィールドを整備します。

2017年度がスタートしました。新たな建設生産システムの確立には,今やれること,中・長期的に取り組むべきことを各々が考え,実践していくことが重要です。部署・工種を横断し,土木全体で鹿島にしかできない生産性革命に取り組んでいきましょう。

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