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青葉山公園仙台城石垣修復工事

現代技術と匠の技でよみがえる歴史遺産
杜の都・仙台の観光名所,青葉山公園。公園のシンボル・伊達政宗の騎馬像に
見守られるように現場はある。伝統工法と現代技術の融合により,貴重な文化遺産である
石垣の修復を進める現場の今を紹介する。

工事概要
青葉山公園仙台城石垣修復工事
場所:仙台市青葉区川内地内
発注者:仙台市 設計者:仙台市
規模:修復区間−延長190m 高さ5〜18m
石垣解体約2,400m2 石積み工約2,600m2
切土・盛土約18,000m3 裏込め工約7,400m3
工期:1998年3月〜2004年3月
(東北支店JV施工)
工事概要
解体前の本丸跡北面石垣全景
石垣断面図
解体した石が整然と並び石積みされるのを待つ
工事の概要
 仙台市の青葉山公園整備事業の一環として進められているこの工事は,300年以上の時を経て老朽化した仙台城本丸跡石垣を,文化財としての価値を損なうことなく,石垣と並行して走る市道への安全にも配慮しながら修復するものである。
 修復は石垣の解体と積み直しが行われ,解体は1998年に始まり,2000年12月から石積み作業が始まった。現在,石数にして約60%(面積では約80%)の石積みが終了している。
解体前の石垣
3次元CADによる修復図の作成
 石垣修復に際し,構築当時の石垣の設計図などは残されていなかった。そのため,当社は仙台市と共同で3次元CADを用い,現存する石垣の形状から構築当時の形状を推測し,修復図面を作成する手法を考案した。現場では,この修復図を元にして石垣の勾配を示す丁張りを設置し,石積み作業を行っている。
修復前の石垣現況図 修復後の石垣
拡大した石垣修復図
文化財を守り安全を考慮した修復
 仙台城の石垣は,角部が弓なりの美しい勾配が特徴で,積み石の間に隙間なく,横目地は水平に通るように積まれた「切石整層積み」と呼ばれる技法が用いられている。
 石垣を構成する積み石は,平面部を形づくる築石(つきいし)と角に用いられる角石(すみいし)に大別される。築石は表面が四角く奥に向かって台形状にやや細っていく形状。石と石の間にはコッパ石と呼ばれる細かい石が充填され,クッションの役割を果たすといわれる。一方,角石は直方体に近い長石を,左右交互の算木状に積み上げている。
 石垣は,積み石とそれを裏面で支える裏込め層や盛土層から構成されており,見た目は歯と歯茎の関係を連想させる。歯茎が丈夫でないと歯の寿命も短いように,積み石だけではなく,裏面構造も堅ろうに修復しなくてはならない。
 石垣を解体して得られた積み石は9,106石。そのうちの約4分の1は割れやクラックが生じており,そのままでは使用できなかった。そのため,新しい石材を用意し,傷みの少ない石材は再加工して別の場所に転用している。
 積み石を支える裏面構造では,現代の建設技術を駆使して修復にあたった。裏込め層の強度を上げるため,玉石に砕石をブレンドした。盛土の円弧滑り防止には,セメント系固化材を混合。さらに,土圧の低減と裏込め石の沈下を防止するために耐震補強ネットが敷設されている。
写真左上にあるアルミと板は石垣の勾配を示す丁張り。これで角度を合わせ,隣り合う石材との接合状況を見ながらノミを用いて石を加工する
裏込め石も手作業でまんべんなく敷く 角石を据える。作業は慎重に行われる
主役は石工職人
 静かな現場にはキン,キンと石を叩く音が響きわたる。積み石はクレーンで持ち上げられるが,その据え付けは石工職人による手作業だ。大きな角石を1石据えては築石を2,3段積み上げる・・・という作業を繰り返していく。石積みを始めた頃は,1日に2,3個しか積み上げられなかったそうだが,現在は1日20個ほどのペースで作業が進む。石の総数は約1万個・・・,気の遠くなるような作業が続く。
 現場では,計測を繰り返しながら作業を進めるが,石工の経験や勘に頼る部分も大きい。40年ものキャリアを持つ石工頭(いしくがしら)の下でたくさんの職人が活躍している。意外にも若者が多い。ゲンノウ,ノミ,コヤスケ,セットウといった伝統的な道具は,江戸時代に使われていたものとほぼ同じ。石工はこれらの道具で石それぞれの「性格」を読みながら,ひとつひとつ丁寧に据え付けていく。新しい積み石は,隣り合う古い積み石にぴったりと合うまで,何度も重ねてみては合わない部分を削っていく。根気のいる作業だ。
 「たまに,はじめからぴったりくる相性のいい石に出会う。その時は昔の石工と心が通じたようで嬉しい」と石工のひとりが教えてくれた。現代からも未来へのメッセージとして,古い積み石にはできるだけ手を加えずそのまま残し,新しく据えた石や再加工した石には,設置した年を刻んでいる。
左は新石,右は再加工石を設置したことを示している

たくさんの人に訪れてほしい高橋所長
 当現場の高橋所長は「歴史に残る工事にしたい。そして,この工事の難しさと素晴らしさも多くの人に知ってもらいたい」と語る。公園に訪れた観光客のために石垣工事のPR館を設けた。周りの景観に溶け込むようにケヤキ,ハギ,カッコウの絵が描かれた仮囲いを建てるなど,現場への理解を深める工夫も忘れない。
 仙台市民の心の拠り所であった石垣は,来春生まれ変わった姿を現す。

PR館。石垣の全容が分かり易く展示されている 景色に馴染むように建つ仮囲い