| BACKSTAGE |
![]() エンターテインメント空間をつくる心 この写真は岐阜・長良川の渓流に生息する淡水魚。涼しげに泳ぐ姿は,水中カメラの画像ではない。 水族館の水槽の風景だ。魚は本物でも,背景の岩は精巧につくり込まれた擬岩,という “展示空間”である。 2004年7月14日,岐阜県世界淡水魚園水族館・愛称「アクア・トトぎふ」がオープンした。 今月のBACKSTAGEでは、“エンターテインメント”空間づくりの舞台裏を覗いてみよう。 |
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| 建築概要 建築概要 岐阜県営公園 世界淡水魚園水族館新築工事 場所:岐阜県羽島郡川島町笠田町 発注者:ジー・エフ・エー 設計・監理:安井建築設計事務所 展示設計:ラーソン社 展示工事:鬼工房ほか 規模:RC造一部S造 4F 延べ8,411m2 工期:2002年10月〜2004年3月 (名古屋支店施工) |
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“ものづくりの心”という言葉をよく聞く。逆にそれは,心を込めずにつくるものが身の回りにあふれてしまったとも言えないか。つくる人の心が,見る人の心を揺さぶるようなものづくりは,エンターテインメントを提供する施設に欠かせない。 アクア・トトぎふは,“海のない岐阜に県が誇る長良川の魚を展示する水族館を”という梶原拓・岐阜県知事の心から始まった。そこで,長良川と世界の淡水魚を展示する水族館がつくられた。淡水魚に特化したものとしては日本最大だ。 この事業ではPFI的手法が導入されており,当社は,SPC(特別目的会社)への出資や,事業計画・展示魚類計画に関する社員派遣のほか,建築・設備・展示工事を一括施工した。水族館は完成後,30年間の維持管理を経て岐阜県へ無償譲渡される計画だ。つまり30年という期間を見据えたものづくりを行うことが求められたのである。 2年半前,まだ基本設計も出来ていない頃,担当となった秋田大次郎所長らは施工者の立場ながら企画段階から本プロジェクトに参画。事業者や設計者などの関係者とともに米国内の主要な水族館を視察し,企画検討を行った。30年間の維持管理を考え,素材の選定や技術管理など計画に関わる部分でも,施工のノウハウを提供し,竣工に至るまでプロジェクトの重要な役割を果たした。また当時SPCの設立・収支計画や水族館の集客立案を担当していた現・名古屋支店営業部・長沢正志次長は長良川の環境再現や魚類の選定などに携わり,館内のコンセプトづくりに関わった。 “30年分のエンターテインメント”を考えることは未経験だからこそ「リアリティと愛着をもってプロジェクトに携われてきた」と秋田所長は語る。その“心”が,アクア・トトには随所に表れている。 展示空間は,展示設計担当の米国ラーソン社のデザイナーが描いた設計図を元に,展示工事を担当する鬼工房ほかが岩や木を模した魚の生息空間をつくりあげていく。秋田所長らは双方の意図を汲んで,コストバランスを考えながらものづくりの提案を繰り返した。すべてに図面があるわけではなく,ときには写真でイメージを伝えることも。そうして精巧に擬岩や擬木をつくり上げていく作業は「ある意味,楽しみながら現場でつくるプラモデル」と鬼工房の中山一郎さんは語る。技術とコミュニケーションの協働作業が,館内全体のダイナミックで精巧な展示空間を生んでいる。 あるとき,水族館近くにあるサクラの古木に生えていたキノコを,ラーソン社の女性デザイナーが珍しがった。それを聞いて中山さんら鬼工房のメンバーはこっそりと,館内の擬木にキノコの造形を取りつけた。後で彼女がそれを見つけたときの喜んだ顔が忘れられないという。 長良川の渓流の展示を堪能した後は,世界の淡水を巡るストーリー仕立ての展示となり,また別空間のエンターテインメントとなっている。例えばメコン川畔で淡水魚の研究をしている学者の部屋の展示には,引出しや置物などに様々な仕掛けが隠されている。しかも,説明書きはまったくなく,あくまで来館者に発見されるのを待っている。展示物の中に何を隠すか,どんな音を出すかと,仕掛けづくりにも力を入れたエピソードをたくさん伺ったが,実際に足を運んで確かめていただきたい。 人々を楽しませるエンターテインメント空間の裏には,つくり手の“楽しむ心”も潜んでいる。 |
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