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![]() (仮称)室町三井新館新築工事 江戸時代初期に架けられ,五街道の起点となった日本橋。 周辺にはいまも老舗が軒を並べ,歴史的建造物が数多く残る。そんな伝統のある地域特性を生かした都市再生が進んでいる。今回のザ・サイトでは,重要文化財・三井本館を保存しながら最先端の超高層ビルを建設する現場を紹介する。 |
工事概要 |
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伝統と最新技術の融合 古くから商業の中心地として栄えてきた日本橋。そこで,江戸時代からの伝統を活かしながら,日本橋に新しい魅力を加え活性化しようと,多くの地元の老舗や企業が協力する都市再生事業が展開中だ。 そのシンボル的存在になるのが,三井不動産が事業主体となって計画する超高層複合ビル「(仮称)室町三井新館」である。重要文化財「三井本館」(昭和4年建築)を保存しながら,多様な機能を持つ最新鋭ビルを建設しようというものだ。 |
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超高層を可能にした制度 超高層ビルを建てる際,通常は容積率と建ぺい率によって高さが制限される。しかし,「特定街区制度」が整備され,東京都も「重要文化財特別型特定街区制度」を設けるなど,容積率の緩和が図られるようになったことで超高層ビルの建設が可能になった。 都の制度は,歴史的建築物の保存を誘導し,個性豊かな都市景観の形成を図るのが狙いで,保存する重要文化財建築物の床面積相当分も容積割増として加算できるようにした。因みに当ビルは都の制度の適用第一号である。 さらに,高齢者や身体障害者が円滑に利用できる建築の促進を図る「ハートビル法」による容積特例で,施工途中に割増容積が更に加算された。その結果,実質的な容積率は約2,300%となり,日本橋界隈一の超高層ビルの建設となった。 |
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キーワードはHybrid 今回の工事は,三井本館を保存しながら,既存の三井東三号館を解体し,その場所に新たに室町三井新館を建てるというもの。しかし,この土地一帯は昔から複数の建物が建てられてきたため,図面にない地中の障害物が大量に埋まっていた。その効率的な撤去が工事の第一関門になった。そこで順打ち工法と逆打ち工法を併用したHybrid逆打ち工法が採用された。 東三号館の解体後,地下躯体を一部残し,地下2階部分まで掘り下げ障害物を撤去。そこから上に順打ち工法,そこから下に逆打ち工法を用い,地下と地上工事が同時に進められていった。この工法の採用は工期を短くすることにも繋がった。 地下工事を進めていく上で,南に本館,西に二号館,北に地下鉄銀座線,東にNTT通信用トンネルと,四方を囲む地下構築物への影響が課題となった。それら近接物への影響を最小限に抑え,安全に掘削するためには,四方全ての地下にグラウンドアンカーを削孔する必要性があった。しかし地下鉄下部,NTT通信用トンネル上部にアンカーを削孔するのはあまり前例がなく,中央区や国土交通省へ伊藤副所長が粘り強く交渉。ようやく削孔が可能となった。そして,基礎には直接基礎と杭基礎を併用したパイルド・ラフト工法を当社で初めて採用し,VE効果をあげた。 中央通りに面した人の往来の激しい場所での高層ビル工事は,「落とさない」安全対策が重要になってくる。そこで地上工事では,コア部には鉄骨在来工法,外周部は3層1節の積層工法を用いて墜落事故を防ぎ,外周コンクリートのPC化で落下事故防止を,外周の鉄骨のジョイント位置を替えて1フロア伸ばすコロシアム工法で飛散事故を防止するHybrid積層工法を用いることで,災害防止に万全を期した。「落ちない,落とさない,飛ばさない」。それが当現場のスローガンになり,順調に工事は進捗している。 |
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現場を盛り上げる名物所長 「現場の安全対策がしっかりしているからこそ無事に工事を進めてこられました」と語る中村所長。長年,三井関係の施工を担当している。「設計図に魂を込めて建物を作り上げるのが施工者の役目だと思っています」と熱い姿勢の名物所長だ。今回の工事について「三井発祥の地での記念すべき工事に携われたのは名誉なことです。施主の期待に応えるような立派なビルを作り上げたい」と,並々ならぬ意欲をみせる。9月の上棟式に向け,工事は粛々と進む。 来年の7月には竣工となり,マンダリンオリエンタルホテル,千疋屋総本店のほか各種テナントが入居する。地域に賑わいを取り戻し,日本橋のイメージを一新するものと期待されている。 |
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