特集:水といきる−水のある豊かな暮らし−
Chapter3 水の力で電気をつくる〜揚水式発電所の建設
 電気は予め作り置きして蓄えておくことができない。このため電力の安定供給にはピーク時に合わせた発電施設が必要となる。現在,日本の発電電力量において水力発電の占める割合は約10%。水力発電は,停止状態から起動して全出力を発生するまでの時間が短いうえに,運転中も出力の調整を行い易い。なかでも揚水式発電は,水資源を繰り返し使って発電を行うことができるのが特徴だ。このため変動の大きい需要のピーク時や,緊急時対応に欠かすことのできない存在となっている。
 当社では,明治時代から水力発電関連の工事に携わり,今日まで日本全国100以上の水力発電を目的としたダムを建設。最近では,九州電力・小丸川発電所(宮崎県木城町)の建設で上部調整池の施工を担当し,北海道京極町では現在,北海道電力・京極発電所の施工を進めている。
九州電力・小丸川発電所
小丸川の支流大瀬内谷川の最上流部の上部調整池(上部ダム)と小丸川中流部に下部調整池(下部ダム)を約2.8kmの水路で連結し,有効落差約650m,毎秒222m3の水を使って発電を行う揚水式発電所。2007年7月に4号機の運転が開始された。2009年1月に3号機,2010年7月に1号機,2011年7月に2号機が運転開始の予定で,全ての発電機が稼動すると最大出力120万kWの発電を行うことができる。当社は,上部調整池(大瀬内ダム,かなすみダム)の施工を担当した。
小丸川発電所の上部調整池
【工事概要】
小丸川発電所新設工事のうち土木本工事(第1工区)
場所:宮崎県木城町/発注者:九州電力/設計:九州電力/規模:アスファルト表面遮水壁型ロックフィルダム/大瀬内ダム―堤高65.5m 堤頂長166.0m 堤体積860,000m3/かなすみダム―堤高42.5m 堤頂長140.0m 堤体積390,000m3/工期:1999年3月〜2007年8月(九州支店JV施工)
北海道電力・京極発電所(建設中)
 北海道初の純揚水式発電所として,2015年10月の運転開始を目指し,現在,施工が急ピッチで進められている。
 上部調整池と地下約400mに設置する発電所を約600mの水圧管路で連結し,有効落差369mを利用して最大60万kWの発電を行い,約2.5kmの放水路から下部調整池へと放流する。当社は,京極発電所の上部調整池の建設などを行う第1工区を担当している。

施工中の京極発電所・上部調整池 (2007年10月撮影)


【工事概要】
京極発電所新設工事のうち土木本工事(第1工区)/場所:北海道京極町/発注者:北海道電力/設計:北海道電力/規模:アスファルト表面遮水壁型フィルダム  堤高22.6m 堤頂長1,135.9m 堤体積1,539,000m3/工期:2001年3月〜2014年11月(北海道支店JV施工)
揚水式発電
※揚水式発電
標高の高い所に上部ダムを,低い所に下部ダムをつくり,発電所をはさんで2つのダムを地下水路で結ぶ。昼の電力需要の多い時には,上部ダムから下部ダムに水を落とし,発電機の水車を回転させて発電する。電力需要の少ない深夜には,他の発電所からの電力で,水車を逆回転させて下部ダムから上部ダムに水をポンプアップして貯水し,昼間の発電に備える。水資源を繰り返し使うことができ,上部ダムからの取水路や下部ダムへの放水路が地中に建設されることや,CO2を排出しない発電施設として地球環境に優しい発電システムである。

 Chapter 1 飲み水、農業用水を貯える
 Chapter 2 上水をつくる
 Chapter 3 水の力で電気をつくる
 Chapter 4 ビルの中で活躍する水
 Chapter 5 水辺で動植物と共生する
 Chapter 6 水をきれいにして戻す