ホーム > KAJIMAダイジェスト > August 2011:特集「日本の新たな大動脈 新東名高速道路」 > 新東名の特徴

KAJIMAダイジェスト

イメージ

新東名の特徴

快適な高速道路

新東名高速道路にはどういった特徴があるのだろうか。
中日本高速道路建設事業本部企画統括チーム
長浜 勲サブリーダーに伺った。

より快適な高速道路

快適性を追求して,運転しやすいように設計された道路線形が,新東名の大きな特徴といえる。

「運転していてストレスを感じることはないと思います」と長浜サブリーダーは断言する。新東名には急勾配や急カーブがほとんどない。カーブの急激さを示す最小曲線半径は,伊勢原−海老名南間のR=1,500m。この数値はカーブ曲線を円周としたときの円の半径で,大きいほど直線に近い線形を表わす。これが御殿場以西になるとR=3,000mにもなる。東海道新幹線がR=2,500mだから,いかに緩やかな線形かがわかる。東名の最小曲線半径はR=300mで,急カーブがところどころにみられる。

道路勾配は最大で2%ほど。急勾配や急カーブでは大型車両が失速するため,渋滞を招き,速度が安定しないことで燃費も悪くなる。「新東名は東名より線形がよく,燃費もよくなります。大型車両など営業車両の比率が高くなると予想しています」。

写真:中日本高速道路の長浜勲サブリーダー

中日本高速道路の長浜勲サブリーダー

写真:浜名湖を渡る東名高速道路。ところどころカーブがみられる(提供:中日本高速道路)

浜名湖を渡る東名高速道路。ところどころカーブがみられる(提供:中日本高速道路)

改ページ

トンネルと橋梁の連続

新東名は,内陸部の急峻な地形のなかで直線に近いルートを通っている。山を抜けて谷を越えるため,トンネルや橋梁などの構造物の比率が高くなる。構造物比率が高くなることでコストは押し上げられるが,「6割の区間がトンネルと橋梁ですが,費用対効果は悪くありません」と長浜サブリーダーはいう。約60%という構造物比率は,東名の約20%と比較しても高く,全体の事業費は約5.2兆円にのぼる。しかし,国土交通省の個別公共事業評価結果一覧(国土交通省:2010.2)によれば,区間ごとの費用対効果は,1.8〜4.3倍と他の道路事業に比べても高い。新東名整備により東名に比べて約20分の走行時間が短縮される上に,定時性の向上や交通事故の減少など,高い波及効果が期待されるからだ。

それだけではない。今後30年間のうちに高い確率で発生するといわれる東海地震の被害も受けにくい。内陸にルートが選定されたのも,山側は沿岸部に比べて震度が低くなるという予測を考慮してのことだ。現状では防災機能などは評価に入ってこないため,評価数値以上の整備効果が期待できる。

写真:まっすぐに伸びる新東名

まっすぐに伸びる新東名

写真:佐奈川橋工事完成予想パース

新東名高速道路は内陸部を通るため,構造物比率が高くなる(佐奈川橋工事完成予想パース)

新東名リーディングプロジェクト

新東名には,様々な技術が盛り込まれてきた。新東名リーディングプロジェクトは,その総仕上げともいえ,2009年度から最先端技術の実証実験を行っている。自動車や情報通信,建設など様々な分野の技術を適用,あわせて民間ノウハウを最大限活用したサービスを提供して,“世界をリードする高速道路システム”を構築。日本全体の発展に貢献することをめざす。

整備開始から建設事業では様々な新技術が投入されてきた。現在でも,大型機械での施工やトンネル・橋梁における数々の新技術投入,建設中の新東名を利用した土運搬,新たな発注方法などが試行されている。試みの効果は大きく,コストの縮減や環境負荷の低減に寄与している。

東日本大震災の影響で材料調達などに遅れが出ているものの,「現時点では供用開始時期が遅れるほど大きな影響はない」と長浜サブリーダーはいう。御殿場—三ヶ日(162km)の区間は,2012年度開通予定であるが,できるだけ早い時期に開通することをめざして,整備事業が進められている。

図:新東名リーディングプロジェクト

改ページ

column サービスエリアの創造

高速道路での楽しみのひとつがサービスエリア。中日本管内では,複合施設化されたサービスエリア「EXPASA」がオープンして話題を呼んでいる。

新東名では,長距離利用の大型車が多くなることが予想されるため,潤いとゆとりのある空間づくりや利便性の向上に力を入れている。また,多様なニーズに対応するために,宿場町や港,ビジネス街など各エリアそれぞれで個性あるコンセプトを打ち出し,利用者が路線全体から選択できるサービスエリアを提供。新たな価値を創造して旅の思い出づくりをサポートしていく。

写真:サービスエリア完成予想パースの一例(提供:中日本高速道路)

サービスエリア完成予想パースの一例(提供:中日本高速道路)

column 緊急支援車両が通行

2012年度中に開通予定の区間では,躯体部分はほぼ完成しており,舗装工事や設備工事などが行われている。既に98%の区間で緊急時通行できる状態だ。東日本大震災では,この区間を利用して緊急支援車両が被災地に向かった。

3月11日16:12~12日14:45,太平洋岸などに大津波警報が発令されて,東名と国道1号は通行止めになった。道路網が断絶されて関西地方からの支援車両は被災地に向かうことができない。供用前の新東名を通行して,消防や警察など全470台の車両が被災地に向かった。

このほか,2009年8月の駿河湾沖地震でも東名が通行止めになり,一部区間を付近住民に緊急開放している。

写真:被災地に急ぐ緊急支援車両(提供:中日本高速道路)

被災地に急ぐ緊急支援車両(提供:中日本高速道路)

ホーム > KAJIMAダイジェスト > August 2011:特集「日本の新たな大動脈 新東名高速道路」 > 新東名の特徴

ページのトップへ戻る

ページの先頭へ