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新技術への挑戦

2012年度開通予定区間から

2012年度に開通する御殿場−三ヶ日区間。
当社は9工区で施工を担当してきた。
2009年に竣工した富士川トンネル東工事もその一つ。
1997年に工事を入手以来,
12年間にわたって工事が行われた。

大断面を攻略する100のアイデア

富士川トンネルは,総延長4,500mで最大断面積が約250m2。新東名のトンネルの特徴である扁平大断面・長大トンネルだ。当社は,TBM(トンネル・ボーリング・マシン)を利用した先進導坑拡幅掘削工法でトンネル上下線東側の施工を担当した。

山岳トンネルの基本工法はNATMだが,新東名のトンネルは大断面で距離も長い。地層・地質が変わり,湧水にぶつかる可能性もある。一般的にトンネルは断面積が大きいほど施工が難しくなる。トンネルにかかる土圧が大きくなるからだ。通常のNATMではトンネルの切羽崩壊が多発する可能性があった。

写真:西岡和則グループ長

西岡和則グループ長

この工事を9年間担当し,2007年には3代目の所長として現場の指揮をとったのが,横浜支店土木部プロジェクトグループの西岡和則グループ長。2000年に監理技術者のひとりとして富士川トンネル工事に着任した。入社以来,多くのトンネル工事に携わってきた西岡グループ長は,海外でTBM工事を担当していた実績を買われて鈴鹿トンネル下り線工事(三重県鈴鹿市)に着任。TBM導坑先進拡幅掘削工法で大断面トンネルの施工を担当した実績を持っている。西岡グループ長は工法採用の経緯を振り返る。「新東名・新名神でいくつもの大断面トンネルが計画されましたが,それまで国内には施工実績がなかった。日本は地質の条件が悪いので大断面を避けてきたのです。初の試みに挑戦しようと,当時の日本道路公団が関係者に工法を募ったところ,100ほどのアイデアがでてきた。そのなかからTBM導坑先進拡幅掘削工法が選ばれたのです」。

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TBM導坑先進拡幅掘削工法

この工法は,まず直径5mの導坑をつくって地盤に“探り”を入れていく。導坑により崩壊しやすい地盤や湧水があるとわかれば,先手をとって対策ができる。その後に導坑をNATMで拡幅し,大断面のトンネルを構築していく。

トンネル上部に導坑をつくることも特徴のひとつだ。上部に設けることで,崩落の危険性が高い天端を早い段階で保護することが可能になる。少しでも早く導坑を進めて地盤の特性をつかむことが重要であるため,掘進速度の速いTBMを使用して導坑の掘進を行う。

施工にあたっては,各種の膨大な計測・測量が必要になった。省力化を図るために導入されたのが,NATM総合管理システム。切羽近くに設置した測量機器やCCDカメラを利用して,計測・測量業務を自動的に行う。必要な情報が一元的に集積・分析・評価されて高度な管理が可能になる。

システムの導入は大きな成果をもたらした。しかし,西岡グループ長は「道具に頼りすぎると管理する技術者の能力が育たない」と警鐘を鳴らす。土木現場の基本は測量にあると説き,ベテランを指導者につけてOJTを推進するなど若手の育成にも力を注いだ。長い工期の間で,現場には延べ約100人の職員が従事し,多くの若手技術者が育った。

写真:直径5mのTBMが導坑をつくっていく

直径5mのTBMが導坑をつくっていく

図:TBM導坑先進拡幅掘削工法

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写真:上半の施工状況

上半の施工状況。拡幅には爆薬を使用

写真:下半の施工状況

下半の施工状況。ロックボルトを壁面に打ち込んでトンネルを支え,拡幅していく

新技術の成長

当社は,金谷トンネル西工事(静岡県掛川市)のほか,新名神の2現場でTBM導坑先進拡幅掘削工法の施工に成功している。

実は,過去にも国内でTBMを導入した例はあったが,日本の地質には合わないとされていた。そのなかで,事業者が採用したのだった。「旧日本道路公団も民営化後の中日本高速道路も技術革新には強い意欲がある」と西岡グループ長はいう。新東名ではこの工法のほか,高強度の吹付けコンクリートや天端の崩落を防ぐ新しい補助工法などを積極的に採用し,最新の技術を導入していった。

その結果,「現在は,TBM導坑先進拡幅掘削工法の現場は減少している」と西岡グループ長。新東名建設に投入された様々な新技術が発展し,通常のNATMでも施工が可能になったのだという。全断面のTBMも生まれている。

西岡グループ長はいう。「新東名は土木技術を進歩させた。この工事がはじまった頃にはできなかったことができるようになっていますから」。

写真:トンネルの貫通を関係者が祝う(2004年)

トンネルの貫通を関係者が祝う(2004年)。巨大なトンネルに多くの人がつめかけた

写真:富士川トンネル

富士川トンネル

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column 技術を競う舗装工事

道路の仕上げとなる舗装工事。2012年度の部分開通に向けて,新東名ではその施工が最盛期を迎えている。

当社関連会社の鹿島道路JVが施工する清水東舗装工事は,総延長約11.6kmを舗装する同社最大規模の現場。静岡市清水区内で工事が行われている。この現場を統括するのが,現在42歳の荒井一則工事所長。2004年の新潟県中越地震でも関越自動車道の復旧を指揮した若きエースだ。「10工区で並行して工事が進む。品評会さながらに各工区で技術を競っています」と荒井所長。この工事でも最新技術「ラインリーダ」を駆使して工事を進めている。この技術は,チョークで壁に引いた基準線を内蔵のカメラが1秒間に約10回読み取り,舗装厚を自動制御する。基準となるワイヤーを使わないため,スペースに余裕のない橋梁などで有利に施工を展開できる。「他の工区には負けられない。特に品質では一番をめざしています」。2012年3月の竣工に向け,日々工事は続く。

写真:荒井一則工事所長

荒井一則工事所長

写真:富士山を背に工事は進む

富士山を背に工事は進む

写真:新技術のラインリーダ

新技術のラインリーダ

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