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建設の素朴な疑問 Part2:水中ではコンクリートをどうやって打つのですか?

海峡や川を渡る橋梁,防波堤,海底トンネルなどの構造物を造るには,
水中にコンクリートを打つ工事が欠かせません。
では,どうやってコンクリートを打設しているのでしょうか。
そして,どんな用途に使われているのでしょうか?

水に触れさせない

水中にコンクリートを打つ基本は,打設中に水との接触を避けることです。セメントと水,砂,砂利などを練り混ぜたコンクリートを,そのまま水中に落下させてしまうと材料がバラバラになってしまい,求められる強度にはならないからです。

では,どうやって水中にコンクリートを打っているのでしょう?一般的なトレミー工法は,鋼製のパイプ(トレミー管)を通して,コンクリートを打設場所まで運びます。水と触れると品質が低下するので,先端が常に打設したコンクリート中にある状態を保つことがポイントです。トレミー工法のほか,コンクリートポンプに鋼管をつなぎ,打設場所まで圧送する工法も使われます。

図版:コンクリートをそのまま水中に落下させてしまうと材料がバラバラになってしまう

コンクリートをそのまま水中に落下させてしまうと材料がバラバラになってしまう

図版:打設したコンクリートが水と触れていない状態を保ち,トレミー管を引き上げながら打設していく

打設したコンクリートが水と触れていない状態を保ち,トレミー管を引き上げながら打設していく

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水中でも材料がバラバラになり難いコンクリート

当社ならびに三井化学産資,日本海上工事が共同で開発した「ハイドロクリート」は,水中不分離性混和剤により粘性を高めているため,水中でも材料がバラバラになり難く,品質の低下が小さいコンクリートです。トレミー工法やポンプ圧送などと組み合わせることで,より安定した施工が可能になり,水中での品質の信頼性が飛躍的に向上します。また,施工水域の汚濁を防止し,環境保全にも効果を発揮しています。

図版:一般的なコンクリート(左)とハイドロクリート(右)の比較

一般的なコンクリート(左)とハイドロクリート(右)の比較。ハイドロクリートは,水中でも材料がバラバラになり難い

図版:ポンプ圧送によるハイドロクリート打設

ポンプ圧送によるハイドロクリート打設。海水にコンクリートが混ざらないため,魚が遊泳でき施工環境の保全にも効果を発揮

ミニ知識:長期耐久性が実証された「ハイドロクリート」

ハイドロクリートは,業界に先駆け1979年に開発に着手した水中不分離性コンクリートで,これまで多くの実績があります。その長期耐久性を確認するため,1985年から海中に試験体を設置して20年にわたる暴露試験を行っています。この試験は,当社が品質保証の観点から計画・実施し,様々な調査の結果,耐力が低下していないことが明らかになっています。

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水中コンクリートの用途

設置ケーソン内部のコンクリートとして

設置ケーソンは,橋梁などを水中で支える基礎構造物です。ドックなどで建造したケーソンを設置場所まで曳航し,内部に水を満たし着底させた後に,水中コンクリートを打設して,水とコンクリートを入れ替えて基礎とします。明石海峡大橋(兵庫県)の主塔基礎(2P)では,高さ約70m,外径約80mもの巨大な円柱状の設置ケーソンを施工しています。打設した水中コンクリート(ハイドロクリート)は約27万m3におよびました。

図版:当社が施工を担当した明石海峡大橋の設置ケーソン・主塔基礎(2P)

当社が施工を担当した明石海峡大橋の設置ケーソン・主塔基礎(2P)

図版:1998年に完成した明石海峡大橋

1998年に完成した明石海峡大橋

図版:水中コンクリートを打設して水とコンクリートを入れ替えて基礎とする

水中コンクリートを打設して水とコンクリートを入れ替えて基礎とする

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海底面の底盤コンクリートとして

海底面から橋脚などの構造物を構築することもあります。水深が浅い場合には,施工場所を鋼管矢板で囲うように締め切り,内側の水を排出して工事を進めます。その際,海底面に止水の役割を果たす底盤コンクリートを打設します。東京国際空港(羽田空港)D滑走路では,埋立部と桟橋部の上部を接続するプレキャスト床版を支えるスリット柱が必要で,スリット柱を施工する場所を海水がない状態にするため,底盤コンクリートを打設しています。

図版:当社が施工した羽田空港D滑走路にも水中コンクリート(ハイドロクリート)が使われている

当社が施工した羽田空港D滑走路にも水中コンクリート(ハイドロクリート)が使われている

図版:海底面から構造物を構築するには,施工場所を鋼管矢板で囲んで締め切り,内側の水を排出して工事を進める

海底面から構造物を構築するには,施工場所を鋼管矢板で囲んで締め切り,内側の水を排出して工事を進める

New Technology:ダックビルトレミー

オーストラリアに生息する「カモノハシ」のような形状といえば,新幹線700系が有名ですが,水中コンクリートの打設技術にも似たものがあります。当社が今回開発した「ダックビルトレミー」です。トレミー管にカモノハシのくちばし形状のゴム製先端部を接続して,大水深下でも効率よく水中コンクリートを打設できます。

通常トレミー工法では,水中にトレミー管の先端がある時には,水が管を逆流しないよう,ダイバーが先端部の開閉弁を手作業で閉め,打設時には弁を開けています。「ダックビルトレミー」は,自動的に先端が水中では閉じ,打設時にはコンクリートが滑らかに放出できるように開きます。大水深度下でのダイバーの負担を低減し,より安定した品質のコンクリート打設が可能になります。

九島大橋(愛媛県宇和島市)の建設工事に今年7月初めて適用され,無事に施工を完了しました。

図版:※オーストラリアに移民した一部の人々がカモノハシのことを“duckbill(カモのくちばし)”と呼んでいた。ゴム製先端部の形状がくちばしと似ていることから「ダックビルトレミー」と名付けている。

※オーストラリアに移民した一部の人々がカモノハシのことを“duckbill(カモのくちばし)”と呼んでいた。ゴム製先端部の形状がくちばしと似ていることから「ダックビルトレミー」と名付けている。

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