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KAJIMAダイジェスト

検索 歩行者/避難シミュレーション

変化する人の動きや流れを可視化する技術が注目されています。
当社では,歩行者シミュレーションシステムと避難シミュレーションシステムを開発。
防災や防犯,マーケティング,交通・都市計画など,様々な分野のニーズに対応しています。
担当者の皆さんに解説してもらいましょう。

2つのシミュレーション技術

当社では,人の流れに着目した技術研究を行ってきました。どこにどれだけの人がいて,どこに人が集まりやすいかなどの状況を正確に把握できれば,無駄のない動線計画が実現でき,混乱の回避などにもつながります。たとえば,首都圏の大型複合施設や高層ビルなどでは災害が発生した際,多くの避難者を抱え,避難に時間を要するほか,様々な障害に阻まれる可能性が予想されます。また,駅の改良工事などでは構内の一部を工事ヤードとして占有することがあります。駅利用者の安全性・快適性を守るため,時間帯や歩行者の流れの方向など複雑な要因を踏まえ,通路やコンコースの確保,仮設通路の最適な配置なども検討することが求められます。

こうしたニーズに有効なのが,当社が開発した2つのシミュレーション技術です。

図版:現計画

図版:改善案

「歩行者密度」による評価例。改善案では新たな動線確保により右上の混雑が緩和された様子が分かる

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旅客の安全と快適な通行を実現する歩行者シミュレーションシステム

「Sim-Walker®:シム・ウォーカー」は,歩行者一人ひとりの行動をモデル化し,歩行空間内で群衆を再現する歩行者シミュレーションシステムです。駅改良工事などにおいて,歩行者に配慮した施工計画立案を支援するため,列車の発着に伴う旅客数の著しい時間変動や空間的な密度のバラつき,通路や柱の形状に影響を受ける“人の流れ”を再現し,歩行空間を「歩行密度」「歩行速度」「交錯・回避」「滞留時間」などの評価項目から多面的に評価できます。

乗降時に起こる旅客同士の譲り合いや子どもの多い空間,高齢者の多い空間など,細かい条件まで設定でき,より現実に近い“人の動き”を再現可能なことも特長の一つです。解析結果は,歩行空間を任意のメッシュで分割し評価項目ごとにカラーコンターで表示されます。3次元グラフィックスソフトと連携すれば駅構内の状況をよりリアルに表現できます。これまで6件の駅改良工事において施工計画立案の支援に活用されています。

図版:2次元

図版:簡易3次元

図版:3次元グラフィックスソフトとの連携

Sim-Walker®のアウトプット例(左から2次元,簡易3次元,3次元グラフィックスソフトとの連携)

熱と煙の動きを考慮した避難シミュレーションシステム

「Sim-Walker®」をさらに発展させ,火災時における人の心理状態の変化を反映したシミュレーションシステムが「人・熱・煙連成避難シミュレータ PSTARS:ピースターズ」です。従来,火災時の避難行動は人の動きと放射熱・煙などを別々にシミュレーションしていたのに対し,標準的に用いられる火災シミュレータを組み込み,解析した熱煙流動の結果と合わせて避難計画に反映できるよう高度化を図りました。これまで再現できなかった熱や煙,燃え広がりによる避難者の迂回や引返しといった特有の行動を再現できるほか,煙によって想定される歩行速度の低下や逃げ遅れなども再現できます。

人や火災の動きを3次元でシミュレーションすることができるので,説得力と訴求力のある避難安全設計を提案することが可能になりました。

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図版:火災発生から0秒

図版:60秒後

図版:150秒後

PSTARSの3次元グラフィックスソフトと連携したアウトプット例
※People,Smoke,Temperature, And Radiation interaction evacuation Simulator on Sim-Walker

最適な計画立案に向けて

近年,大型複合施設や高層ビルの建設,既存駅の改良工事が増えています。両システムとも自社開発のため,様々なシーンや各現場の条件に応じた歩行行動ロジックの追加や高度化を容易に行うことができます。

当社は,今後もさらなる実績の積み重ねとシステムの改善を進め,安全性・円滑性に配慮した最適な計画立案に役立てていきます。

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より快適で安全な空間を目指して

歩行者は場所や目的,周辺状況に応じて多様な行動を行うため,シミュレーションによる再現が難しい分野でしたが,車のシミュレーションシステム(「REST」,第8回国土技術開発賞入賞)を他社に先駆けて開発し,多くの場面で差別化してきた当社としては歩行者も潜在的なニーズは高いと感じ,2007年から開発を進めました。

特に,「Sim-Walker®」では土木分野として適用が多く見込まれる駅構内の歩行行動について独自に調査・分析を行い,ミクロな視点でも現実に近い歩行行動が再現できることを目指しました。

一方,超高齢化社会や大規模な施設を狙った事件による火災発生の想定から,複雑な避難シミュレーションが必要になっています。スタジアムや大型複合施設などでは不特定多数の人が行き交い,法令基準以上の計画が求められます。「人・熱・煙連成避難シミュレータPSTARS」では,多角的な視点から危険性を発見し,より安全・安心な施設を実現します。火災時の避難行動を3次元の動画でも示すことができるので,火災・煙・人の動きをより忠実に再現できるようになりました。

今後,両システムにおいて実績を積み重ね精度向上を図るとともに,幅広く展開し人にやさしい現場・施設計画に寄与したいと考えています。

図版:左から土木設計本部中村泰広設計主査・野呂好幸設計長,ITソリューション部岩田理史部員・天野和洋課長・今関修次長,建築設計本部笹田岳チーフ・井田卓造技師長,建築管理本部近藤理恵子課長,技術研究所桑名秀明主任研究員

左から土木設計本部中村泰広設計主査・野呂好幸設計長,ITソリューション部岩田理史部員・天野和洋課長・今関修次長,建築設計本部笹田岳チーフ・井田卓造技師長,建築管理本部近藤理恵子課長,技術研究所桑名秀明主任研究員

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