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Chapter 3:英国からのメッセージ

英国PFIの現況や今後の戦略・方向性について,ビジネスを牽引する二人のキーマンからメッセージが届いた。
日本とは置かれた環境は異なるが,仕事へ向かう姿勢や行動には共感を覚えるのではないだろうか。

写真:一木浩人 社長

カジマ・ヨーロッパ(KE:Kajima Europe Ltd)
一木浩人 社長

英国でKEが手掛けるPFI事業は22件にのぼり,管理資産は累計900百万ポンド(約1,800億円)に及ぶ規模まで成長しています。しかし,ここまでの道のりは決して楽なものではありませんでした。2003年,第1号案件のDEFRAケンブリッジ庁舎を成功裏に完成後,多くのプロジェクトに参画する過程で,数々の課題に直面してきたからです。その中には,英国政府の財政健全化によるPFI出件数の減少,PF2導入による政府のコントロール強化といった外部環境の変化によるものもありました。そうした局面において,諸先輩や英国人スタッフが粘り強く対応し,苦労を乗り越えてきたからこそ,今があると考えています。

現在,PFIを推進するKPLでは,この歴史を通してPFIを不動産事業として捉え,開発マネジメントに重心をおいてビジネスを展開しています。設計や施工といった建設事業については,当社と長年深い信頼関係があり,現地での信用度が高い建設会社に依頼しているのが特徴です。KPLは,完成後の資産を,機関投資家などと共同保有し,資産管理サービスも提供しています。様々な経験を経て,この様なビジネススタイルを採るようになりました。英国人を中心とした40名程の会社ですが,自分の仕事に責任を持ち,最後まで成し遂げるという日本的な風土を尊重しながら,金融や不動産,建設などの各分野で最高のパフォーマンスを発揮できるプロフェッショナル集団です。こうした人材が,活き活きと働く姿は,私にとって新たな挑戦をするための励みとなります。今後は,地理的・機能的拡大を目指しながら,より一層の現地化を推し進めることで,このプラットフォームをさらに強化していきたいと考えています。そして,PFI業界にしっかりと根を張ることで,地域社会へ貢献していくつもりです。

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写真:Julian Rudd-Jones 社長

カジマ・パートナーシップ(KPL:Kajima Partnerships Ltd)
Julian Rudd-Jones 社長

香港や英国を中心に,多くの会社で不動産マーケットを舞台に様々な経験を積み,1999年KPL設立と同時に入社しました。香港ではジャーディン・マセソンで仕事をしたこともあります。江戸時代,横浜で「英一番館」を開設した会社です。後に,創業間もない鹿島が手掛けた洋館だったと聞き,驚きと共に鹿島との縁を感じました。

入社してからは,英国でのPFIマーケットを主戦場としてビジネスを展開してきました。現在,ロンドンにおいて不動産投資および開発事業を行うKajima Properties Europe Ltd(KPE)の社長も兼務しています。PFI事業は,外部要因により常に進化を続けるチャレンジングな仕事です。そして,長期的な視野に立ち,マスタープラン作成から設計,施工,運営,改修まで,ライフサイクル全般に対し,魅力的かつ実現可能な提案を行い,ファイナンスを含めプロジェクトを取りまとめる必要があります。金融,不動産,建設に関する総合的な能力が求められることから,両社の社長という立場で培ってきた経験が,大いに役立っています。また,付加価値の高い提案を行うためには,様々な関係者との強固なパートナーシップが重要であり,これがプロジェクト成否を握る鍵となります。KPLは,顧客のニーズに対して誠実に応え,こうした土台を築き上げてきました。

今後,私たちは英国イングランドだけでなく,スコットランド,ウェールズ,北アイルランド,さらには,隣国アイルランドのマーケットも注視していきます。病院の改修,学校施設の増強,高齢者向けケア施設の新設などに加え,鉄道,道路,エネルギー関係施設など,多くのインフラ需要が見込まれる国だからです。

よりグローバルな視点に立って考えると,PFIは,英国を始め,米国,カナダ,オーストラリア,日本など世界各国で広がっているスキームです。鹿島グループの世界的なブランドとネットワークを活用し,様々な人が交流し叡智を結集することで,さらなる事業の拡大が期待できると感じています。

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現地レポート~地域コミュニティを支える学校~ 林 慎一郎 (開発事業本部付で研修中)

学校は,教育だけでなく,地域コミュニティを支える存在──。
これは日英の共通点。ただ,PFIを生んだ英国では,
民間企業が積極的に関わり,
日本とはひと味ちがう地域サービスを提供している。
今年5月から2年間の海外研修プログラムを使って,
KPLで研修中の林慎一郎さんが,現地の状況をレポートしてくれた。

写真:現地レポート~地域コミュニティを支える学校~

私は,ロンドンから北北西に約100km,イングランド中東部に位置する都市ノーサンプトンで,KPLコミュニティ部門の一員として働いています。現在,英国の学校施設の外部利用を促進するためのマーケティング業務を担当しています。

なぜ,そうした業務を行っているのかを, 英国の公立学校の特徴と共に説明します。英国の公立学校では,放課後や休日など児童や生徒が利用しない時間帯に,施設を地域住民に貸し出し,地域コミュニティの場として利用してもらっているのです。日本でも校庭や体育館などは地域に開放されているので同じだと思うかもしれません。しかし,実際に学校を見学してみると,施設も管理運営の仕組みも,私が過ごしてきた日本の学校とは,全く異なるのです。天然芝や人工芝の広いグラウンド,ダンススタジオ,ロールバックチェアを完備したホールや体育館,ミュージックスタジオなど,公立とは思えない設備がそろっています。また,学校には教師とは別に清掃などの管理業務を行う専門スタッフが数名常駐しています。

充実した環境のなか,サッカーやダンス,空手などを日常的に楽しんでいる姿を目にします。ユニークなところでは,ウェディングパーティや子供の誕生日パーティなども行われています。学校は教育施設としてのみでなく,多くの場面で地域との関わりを持っているのです。日本の公共スポーツセンターやカルチャーセンターに近い感覚だと思います。

写真:芝生のグラウンドで爽快にプレイ。目指すはラグビーワールドカップ2019?

芝生のグラウンドで爽快にプレイ。目指すはラグビーワールドカップ2019?

こうした外部への貸し出しを効率的に行うために,英国では管理運営業務を民間に委託するのが一般的です。KPLのコミュニティ部門は,このマーケットに参画しています。具体的には,学校施設の予約・決済システムの管理運営,インターネットのほか様々な媒体を使った施設紹介,キャンペーン情報の告知,検索サイトでのヒット率向上,専門スタッフの派遣などの業務を行っています。予約・決済システムは,KPLがPFI事業の施設運営を通して,2年前に自社開発したシステムです。今では,英国内の約110校で利用されています。

研修が始まって,ちょうど3ヵ月が経ったところです。開発事業本部で7年間経験してきたマンション分譲事業やオフィス開発事業業務とは畑が異なりますが,オフィスで唯一の日本人として,日本人ならではの視点を取り入れ,より良いサービスの提供ができないか,日々アイデアを巡らせながら,試行錯誤を重ねています。そして,今後は,ロンドンに移り不動産開発や投資事業に関する研修を継続していく予定です。世界の不動産マーケットの中心的な都市で,建設・不動産分野におけるさらなるグローバル化への対応力を身につけたいと思っています。

写真:KPLが発行する『WHAT'S ON』。学校施設でのイベントやキャンペーン情報が満載

KPLが発行する『WHAT'S ON』。学校施設でのイベントやキャンペーン情報が満載

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写真:林慎一郎さん(左端)とKPLコミュニティ部門のメンバー。地域のコミュニティには“笑顔”が欠かせない

林慎一郎さん(左端)とKPLコミュニティ部門のメンバー。地域のコミュニティには“笑顔”が欠かせない

写真:管理業務を行う専門スタッフ

管理業務を行う専門スタッフ

写真:子どもから大人まで皆が真剣に稽古をするテコンドー教室

子どもから大人まで皆が真剣に稽古をするテコンドー教室

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