特集:鉄とコンクリートの世紀

鉄とコンクリートが実現した近代建築

 明治時代、これまでの木材・紙・石・土といった建築材に代表される日本建築に次いで、西洋建築が登場する。20世紀初頭に鋼材の生産が当時官営の八幡製鉄所で開始されるまで、西洋建築の主要部材、鋼材もセメントも海外からの輸入に頼っていた。しかし国産化が進むにつれて、そのコストも大きく下がり、建築物・交通施設など主要なインフラストラクチャーへの導入が堰をきったように進んでいった。
 20世紀後半になって、特に鋼材において、その実用範囲は著しく広まっていった。日本初めての超高層ビル「霞が関ビル」の建設にはH形鋼の開発が不可欠であったことは、記憶に新しい。その後わが国の建築史においてエポックメーキング的な新しい建造物には新しい鋼材やコンクリートの研究開発の裏付けがあったのである。
 この鋼材とコンクリートのコンビネーションは、その後さらに発展を続け、設計自由度の高い快適な建物を実現し、また一方で土木分野においてもダムの建設に見られるように、重コンクリートを用いた重力式ダムの建設から、近年のRCDダムの建設など、機械化施工とあいまったコンクリート配合を行い、新しい考え・施工法に基づいたダムを完成させたのである。
20世紀の近代建築発展の歴史は、まさにこの鋼材とコンクリートの進化の歴史であったのである。

鉄とコンクリートはどうやってつくるのか

鉄とコンクリートの特性

太古の時代からの建設材

 鉄やコンクリートを建設材料として使用するようになってから100年が経つが、何万年もの太古の時代から、人類は木材、石材、土を建設材料に用いてきた。特に山々に囲まれ木々が多いわが国では、木材は人々と密接な関係にある。単なる材料としてだけでなく、伝統行事など人々の精神面にまで関わっている。そして鉄やコンクリートが普及した現在でも、住宅は木造が一般的である。
 一方、ヨーロッパでは建築物に石や煉瓦が多く使われていた。紀元前、数千年前につくられたエジプトのピラミッド、古代ギリシア・ローマ時代の建造物などで石材が使われている。紀元80年に完成したローマのコロッセオは、5万人を収容する円形劇場で、石材を積み重ねて造られている。
コロッセオ
石材でできたコロッセオ



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