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爆薬でコンクリートを切断――
当社は,騒音・振動を大幅に軽減できる解体工法「鹿島マイクロブラスティング工法(略称:鹿島MB工法)」を開発しました。
主に建物の地下解体に適用するこの技術は,極少量の爆薬でコンクリートを解体できます。
技術の誕生の背景や特徴について,開発担当者に聞きました。

解体工事と騒音・振動

近年,都市部の建築工事には既存建物の解体を伴うことが多くなっています。通常,解体工事では,圧砕機でコンクリート部材を“噛み砕く”ように解体していきます。

しかし地下部では,空間の制約から大型重機が使用できないことがあります。小型の圧砕機では爪幅が足りず,基礎梁や造成杭などの大きなコンクリート部材を噛み砕くことができません。この場合,ブレーカで打撃を繰り返して破砕しますが,大きな騒音や振動,粉塵が発生してしまいます。

土木・鉱山分野で用いられている爆薬を用いた発破工法は,都市部の解体工事ではあまり使用されていませんが,大型のコンクリートを“瞬時に”破砕できる特徴があります。これを生かして当社は,極少量の爆薬で騒音・振動を低減する解体工法「鹿島マイクロブラスティング工法」を開発しました。

写真:地下の解体工事は大型重機を使えないことが多い

地下の解体工事は大型重機を使えないことが多い

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爆薬でコンクリートを切断

この工法の一番の特徴は,従来のように大量の爆薬でコンクリートを「破砕」するのではなく,最小限の爆薬で亀裂を生じさせて「切断」することです。

爆薬には,導爆線と呼ばれる線状の爆薬を使用します。導爆線は含まれる爆薬量が少なく,通常は爆発を誘導するためだけに使う製品です。しかしこの工法では,破砕ではなく亀裂を生じさせることが目的であるため,少ない爆薬量でも十分に効果があります。従来の発破工法と比較すると爆薬量は1/10以下で済み,削孔量やピッチにあわせて導爆線の長さを調整できるため,爆薬量の調整も容易に行えます。

解体するコンクリートにドリルで一定間隔の削孔を行い,爆薬を装填して装薬部をつなぐように局所的に発破します。養生は,装薬孔をゴムマットや防爆シートなどで覆うだけの簡易なもので,破片が周囲に飛散する心配がありません。こうして内部に亀裂を貫通させておくことで,容易にコンクリートを小割りすることができ,小型の圧砕機で解体することが可能になります。

図:鹿島マイクロブラスティング工法の概念図

鹿島マイクロブラスティング工法の概念図

写真:導爆線(右)を爆薬に使用。起爆は電気雷管(左)で行う

導爆線(右)を爆薬に使用。起爆は電気雷管(左)で行う

試験施工の様子

写真:発破前

発破前

写真:鉄筋コンクリートを発破

鉄筋コンクリートを発破

写真:鉄筋を溶断してブロックに切断

鉄筋を溶断してブロックに切断

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環境配慮型解体工法として

ブレーカによる重機解体工法は連続的に大きな騒音・振動を発生しますが,鹿島マイクロブラスティング工法は騒音・振動の発生が一瞬で済みます。そのタイミングもコントロールできるため,解体工事現場周辺への騒音・振動を軽減できます。また,大型重機を使用しないためCO2排出量も低減されます。都市部の典型的な解体工事をモデルにした試算結果では,基礎梁の半数に適用した場合,地下解体工事全体のCO2発生量を約15%削減できることが確認されました。さらには,地上部解体作業と並行して地下部のコンクリートにあらかじめ亀裂を入れておくことで,解体作業が効率化され工期短縮も期待できます。

図:工法のプロセス

当社では既に,都内3件の解体工事でこの工法を適用しており,行政許認可手続きや現場内の爆薬管理,作業手順の管理手法を確立しています。今後は,都市部での環境配慮型解体工法として積極的に提案し,解体工事における現場周辺への環境負荷軽減やCO2排出量の削減に貢献していきます。

図:騒音・振動負荷の軽減概念図

騒音・振動負荷の軽減概念図

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写真:削孔の様子。1.8mくらいまで削孔可能

削孔の様子。1.8mくらいまで削孔可能

写真:基礎梁解体の施工例

基礎梁解体の施工例

写真:ゴムマットで養生。簡易養生で済むことも大きな特徴

ゴムマットで養生。簡易養生で済むことも大きな特徴

写真:地中の杭への施工例。杭に十文字に亀裂が入り脆弱化しているのがわかる

地中の杭への施工例。杭に十文字に亀裂が入り脆弱化しているのがわかる

「発破技術」の建築解体への応用

爆薬による解体というと海外で行われているような建物1棟を一気に壊す構造物解体を連想しがちですが,日本では構造設計や行政許可等の条件が異なるためそのような構造物解体はほとんど行われていません。しかし,基礎梁や杭などの部材レベルであれば発破による解体は日本国内でも十分現実的であり,通常の重機解体に比べて環境負荷軽減のメリットが期待できます。

鹿島マイクロブラスティング工法は,これまで建築工事ではあまり使われてこなかった「発破技術」を都市部でも安全に使えるように応用したものです。使用する爆薬量を最小限に抑えることで,「微少発破」による瞬時の部材切断を実現しています。ブレーカを使わずに大型基礎の解体が可能になるため,周辺への騒音・振動が軽減されます。

写真:(前列左から)技術研究所建築生産グループ中村隆寛研究員・柳田克巳上席研究員・鈴木宏一上席研究員,(後列左から)東京建築支店建築工事管理部池田啓二施工計画センター課長・第三統括事業部松嶋潤建築部長・建築工事管理部廣田裕介施工計画センター長

(前列左から)技術研究所建築生産グループ中村隆寛研究員・柳田克巳上席研究員・鈴木宏一上席研究員,(後列左から)東京建築支店建築工事管理部池田啓二施工計画センター課長・第三統括事業部松嶋潤建築部長・建築工事管理部廣田裕介施工計画センター長

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