BACKSTAGE

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SURPRISE DUMPER!――巨大ダンプの疾走風景
建設の“舞台裏”を覗くBACKSTAGEでは,建造物の完成にいたる過程にもスポットを当てていく。
今月は,最新の現場工程を支えるマシン,90t級のダンプトラックの迫力ある姿と,それがつくり出す風景を紹介したい。
現在,静岡空港の造成工事現場で活躍する巨大ダンプは,90tという大きさだけでなく,驚くほどの性能と操作性を備えている。
そして,ダンプを管理する実はとても緻密な走行管理システム・・・。知られざる圧倒的なスケールの風景をレポートする。
すれ違うダンプの迫力に圧倒される――。静岡空港造成工事現場の日常風景
工事概要
静岡空港本体用地造成工事
場所:静岡県島田市・榛原町
設置者:静岡県
規模:用地造成工 盛土2,600万m3
2006年度開港予定
 時速20km,という速度は,決して速いスピードに聞こえないが,積載量90t,全高5m,ホイールの直径2.7mのダンプ(トラック)となると,話は異なる。それが連隊をなし,広大な大地を疾走する姿は迫力満点だ。
 約190haと広大な面積である静岡空港造成工事現場では現在,2種類の90t級重ダンプCAT777D(新キャタピラー三菱)とHD785-5(コマツ)が合計40台稼働しており,切土,盛土等によってフラットな用地をつくり上げていくための土砂を運ぶ。
 そもそも「ダンプ(トラック)」とは,荷台を傾け,土砂などを投棄する(=dump)トラックという意味で,正確には「dump(er) truck(または単にdumper)」と記す。なかでも公道を走れない重量級を特に「重ダンプ」と呼んでいる。重ダンプの最大積載量は約20t〜200tまであるが,国内ではここで使われているものが最大級だ。
 実際に間近に見ていると,確かに,普段は目にすることのない大きさの“物体”が,黙々と大量の土砂を運んで仕事をこなしている。特に,対向車両からダンプとすれ違ってみれば,相手に踏みつぶされそうな恐怖感すら覚える。
 そんなダンプの運転は,死角の多さに気を遣うとのことだが,操作性はますます向上しているようで,「ハンドルは普通自動車よりも軽い」そうである。オペレータに,女性も珍しくはない。写真を撮らせていただいた彼女も,家の2階に上がるかのような,身長をはるかに超える高さの運転席に実にスマートに乗り込む。
 当社工区で走行するダンプの運行は,最先端のシステムによって管理されている。「ダンプトラック運行システム」では,GPS(汎地球測位システム)を搭載した各ダンプがその位置情報を発信するほか,オペレータが現在運んでいる土砂の種類情報を送信することで,20台のダンプの運転回数や運搬土量の把握をダンプの状況が変化するごとに行うことができる。
 一台あたり約42m3,一日で20,000〜30,000m3もの大量の土砂が計画的に切盛りされる造成工事では,このようなシステムは省力化,効率化,安全性に威力を発揮するのだ。
 こうした大規模造成現場では,掘削,積込み,運搬,敷きならし,締固めの作業を行うため,重ダンプのほかにも通常の16倍の容量(約11m3)のバケットをもつ超大型油圧ショベル(バックホウ)や,乗用車が簡単に呑み込まれる大きさのブルドーザや,ホイルローダなど,さまざまな重機が縦横無尽に疾走している。日常はなかなか体験することのできない,スケールアウトの異空間がそこにある。
オペレータと比較すると,ダンプの全高5m,ホイールの直径だけでも2.7mの大きさがわかる
公道を走れない重ダンプは,荷台を2分割およびタイヤ・運転席などを6つに分割して搬入,クレーンで組み立てられる
当社工区では現在,90t級重ダンプが20台稼働しており,その運行状況がGPSによって管理されている
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