特集:羽田Report――D滑走路建設工事
D滑走路建設工事――100年耐用の滑走路づくり
東京国際空港再拡張事業
 東京国際空港(羽田空港)は1931(昭和6)年に開港。当時は広さ約53haの飛行場だった。戦後,徐々に拡張整備され1997年に完了した沖合展開事業では,新たな滑走路,ターミナルなどが整備された。当社も,羽田沖合の埋立・地盤改良,滑走路,インフラ整備,ターミナルビルや格納庫など様々な施工を担当してきた。
 現在の羽田空港は,近年の航空需要の増大で発着能力が限界に達しており,再拡張事業の早期整備が急務となっている。進行中の再拡張事業は,新滑走路(D滑走路)建設と国際線地区の旅客ターミナル,貨物ターミナル,エプロン(駐機場)などの整備で,これら全て完成すると広さ約1,421haとなり,年間発着能力は29.6万回から40.7万回に増強される。国際線定期便の受入れが可能になるなど,利便性の向上と多様な経済効果も期待されている。

埋立&桟橋のハイブリッド構造
 工事を担当するのは当社を含む15社で構成する5工種JV。ゼネコン,マリコン,ファブリケータ各社がそれぞれの強みを発揮して工事を進めていく。これほどの大規模工事で設計・施工一括方式,竣工後30年間の維持管理を含んだ契約というのは国内初の試みである。
 D滑走路の構造は,多摩川の流れを妨げないように桟橋と埋立を組み合わせたハイブリッド工法を採用。滑走路2,500m(滑走路島3,120m)のうち,多摩川の河口域にかかる部分を桟橋工法,そのほかを埋立工法で施工する。桟橋部の使用鋼材の重量は35万t(東京タワー約83塔分)埋立部の埋立土量は3,800万m3(東京ドーム31杯分)にものぼる。
 建設地の海底は超軟弱粘性土が堆積している場所。海底の地盤改良を行い,埋立部外周の捨石護岸を構築,護岸の安定を確保しながら内部の埋立を行う。桟橋は全国各地の工場で鋼製ジャケットを製作,海上運搬の後,現地に打設した鋼管杭上に据付ける。また,工事に伴い東京港第一航路を移設する必要があり,浚渫工事を行う。当社は,埋立/桟橋接続部の護岸工事をメインに担当するほか,埋立部,桟橋部及び連絡誘導路部の工事の一部とジャケットの製作にも参加している。
 最大の課題は,現場海域を行き交う多数の船舶の安全を確保し,かつ運用中の滑走路の航空制限下で41ヵ月という短工期で昼夜連続の急速施工を行うことである。埋立と桟橋という異なる構造物を接続するこの工事で,航空機が安全に離発着できる滑走路の性能を確保し,供用後のメンテナンスも考えた設計を盛り込み,様々な工夫を凝らして難条件を克服し,日々海水にさらされる厳しい環境下で100年間耐え得る滑走路を実現する。各工区,関係機関との綿密な調整の中,工事は進んでいる。
完成予想パース
MAP
現場全景(2008年10月)
埋立部 桟橋部
埋立部 埋立部
延長2,020m,幅員424m,埋立土量約3,800万m3。軟弱な粘性土地盤の地盤改良を行い,滑走路の高さは水面から最大17mの高さに盛土される。沈下抑制および護岸の安定確保のために,山砂よりも軽い管中混合固化処理土(浚渫土とセメントを混ぜたもの)を埋立材に採用。施工中は地盤変位をモニタリングしながらIT施工を行う。現在は,地盤改良および外周部の捨石護岸が完了し,管中混合固化処理土および揚土を施工中で,まもなく,捨石護岸の内側が陸化する。
延長1,100m,最大幅員524m延べ約52万m2。GPSによるIT施工で長さ約90m,杭径1.6m,約1,170本の鋼管杭を海底下約70mの支持地盤に打設。その後,曳航してきた鋼製ジャケットを鋼管杭上に据付ける。ジャケットは全198基,1基の重さは最大1,600t。据付後は単体のジャケットを相互に連結して一体化し,その上にコンクリート床版を設置する。今年1月10日に100基目のジャケットを据付けた。
埋立部 埋立部
埋立部 桟橋部
接続部 連絡誘導路部
埋立部 埋立部
延長428.4m,幅員14.4mの鋼管矢板井筒護岸。埋立部の土圧による側方変形を抑制するため,鋼管矢板の継手には高耐力継手を採用。護岸は波の反射を低減するスリット式消波構造。埋立と桟橋を接続し,航空機が安全に離発着できる滑走路としての性能を確保するため,上部には±60cmの変位に対応できる伸縮装置を設置し,温度変化や地震による埋立部と桟橋部の相対変位を吸収させる。現在は,鋼管矢板井筒の施工が完了し,上部の消波護岸の躯体工事を行っている。
延長620m,幅員63m。南北2本の誘導路で現空港とD滑走路島とをつなぐ。延長620mのうち,現空港側の350mは桟橋構造,D滑走路島側の270mは小型船舶の航路を確保するため橋梁構造となっている。用いられているジャケットは40基。桟橋部,橋梁部とも,上部にはプレキャスト化したPC部材を採用している。
現在,桟橋部では上部のPC部材の施工を,また橋梁部ではジャケット式橋脚の施工を行っている。
埋立部 埋立部
接続部 連絡誘導路部

 D滑走路建設工事――100年耐用の滑走路づくり(1)
 D滑走路建設工事――100年耐用の滑走路づくり(2)

 D滑走路建設工事――100年耐用の滑走路づくり(3)
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