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美の秘密に迫るアングル

写真:見学スペースからの眺望のイメージ

見学スペースからの眺望のイメージ。この機会でないと見ることのできない“半世紀に一度のアングル”

高台の大天守を真横から見る

見学スペースは大天守の最上部の真横。素屋根の内部に設置するエレベータで登城し,優美な屋根を目の前で見ることができる。まさに期間限定の絶好のアングルだ。

たとえば屋根の軒の反り,唐破風,千鳥破風など,その曲線が手に取るように実感できる。軒先の瓦に着目すれば,2種類の家紋が交互に並ぶ。歴代の城主,豊臣家の桐と池田家の揚羽蝶であり,地元市民の野崎所長によれば「同じ家紋がつづく箇所もたまにあるようです」。

丸瓦の目地には漆喰が丸く塗られている。全国的にもめずらしい凝った雨仕舞いなのだが,これが壁の漆喰とともに“白鷺城”のイメージを醸し出す。しかし,雨の当たりやすい軒先ほど漆喰が黒ずみ,うねるような屋根の曲面とあいまって,グラデーションのように映る。

まもなく瓦が外され,壁の漆喰も塗り替えられる。作業が進むごとに訪れれば,新たな発見があるだろう。

図:素屋根に見学者用のエレベータを設置し,7〜8階で修理中の大天守を公開

素屋根に見学者用のエレベータを設置し,7〜8階で修理中の大天守を公開。見学施設は2011年3月にオープンする(提供:姫路市)

写真:歴代城主の2種類の家紋が交互に並ぶ。丸瓦の目地には漆喰が丸く塗られている

歴代城主の2種類の家紋が交互に並ぶ。丸瓦の目地には漆喰が丸く塗られている

手ごわい屋根のシルエット

見学の際に,素屋根の存在も気にすると,より楽しみが増すに違いない。たとえば,大天守と小天守のすき間は,最小で1.6mほど。軒の出は一直線とは限らない。この間を素屋根のトラス梁が抜けていく。鉄骨の直線と比べると,軒の反り具合をより実感できる。

屋根の2面が交わるライン「隅軒(すみのき)」は,美しいシルエットを描くが,この反りが素屋根工事の手ごわい敵となる。隅軒の直上に素屋根のコーナーを補強する斜材が渡るからだ。野崎所長が最も気を遣ったポイントである。

「平面図だけでは分かりません。隅軒の曲線を3次元で検討しなければ,鉄骨が当たらないかは検証できない。実際に鉄骨を“逃がした”層もありました」

こうした難所は,大天守と素屋根を重ね合わせた施工図でも実感できる。その工事のプロセスを次頁から紹介する。

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図:大天守に素屋根を重ね合わせた施工図

大天守に素屋根を重ね合わせた施工図。青く塗られた足場を支える部材が大天守に触れないか,綿密に検証されている

写真:修理作業用の足場に囲まれた大天守

修理作業用の足場に囲まれた大天守。素屋根により風雨から大天守が守られ,全天候下での作業が可能となる

写真:素屋根が載る場所は地表面も特別史跡のため,養生シートで保護する

素屋根が載る場所は地表面も特別史跡のため,養生シートで保護する。その上に砕石を敷いて,コンクリート基礎を構築する。部材を地面に並べる際も同様に,養生シートを敷いて地表面を保護している

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図:垂直方向を含めたすべての寸法を書き込み,鉄骨部材が確実に触れないか徹底検証した平面図

垂直方向を含めたすべての寸法を書き込み,鉄骨部材が確実に触れないか徹底検証した平面図。大天守の平面は直角でなく,壁の一面は明らかに斜めに傾いている。これらの寸法も正確に押さえられた

写真:大天守と小天守が最も近づくところでは,1.6m幅のところへ1.3m幅の梁などを取り付ける

大天守と小天守が最も近づくところでは,1.6m幅のところへ1.3m幅の梁などを取り付ける。鉄骨と軒の距離は15cmあまり。さらに大天守の平面は直角ではないため,軒の出も一直線上に揃っているとは限らない

写真:素屋根の構造を補強する斜めの梁が,大天守の隅軒と立体的に交差する

素屋根の構造を補強する斜めの梁が,大天守の隅軒と立体的に交差する。そのすき間は最小10cmほど。隅軒の曲線を緻密に調査した上で鉄骨の架設位置が検討された

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