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丈夫そうな根が絡み合ったこの植物が,漢方薬の原料などで知られる薬用植物「甘草(カンゾウ)」です。
当社技術研究所の実験室で約1 年半かけて,こんなに大きく成長しました。どうして当社が甘草栽培・・・?
その理由を,担当者の皆さんに教えてもらいましょう。

私たちの生活に必要な植物

「甘草」はマメ科の多年草で,その肥大した根や地下茎に,グリチルリチンと呼ばれる有効成分を含んでいます。グリチルリチンは,砂糖の150倍以上の甘味があり,肝機能改善作用,抗炎症作用,抗アレルギー作用など,様々な薬効を発揮します。こうした特徴から,甘草は古代より甘味料や薬草として愛用されてきました。

現在我が国では,一般用漢方製剤処方の70%以上に甘草を使用しており,最も汎用度の高い漢方薬原料となっています。このほかにも,化粧品やシャンプーなどの原料,スナック菓子や味噌,醤油などの食品添加物としても用いられています。

このように,私たちの生活に欠かすことのできない植物となっている甘草ですが,国内使用量の100%を輸入に頼っています。また,供給量のほぼすべてを野生植物に依存しているため,無計画な採取が自生地の砂漠化の原因となっており,主要輸出国の中国では採取制限をはじめています。このほか,世界的な生薬の需要増による価格高騰,生物多様性条約を背景とする資源国との利益配分の問題など,安定供給に懸念が生じはじめているのです。

写真:技術研究所で栽培した甘草

技術研究所で栽培した甘草
(根の長さ約100cm/2010年10月撮影)

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日本初!甘草の水耕栽培に成功

当社エンジニアリング本部では,近年アグリビジネスの市場性に着目し,植物工場の企画・設計・建設・運営のトータルエンジニアリングサービスを提供しています。国内最大の生鮮トマト温室や世界初の密閉型遺伝子組換え植物工場など,最先端のプロジェクト実績を誇っています。

こうした中,新たなターゲットとして着目したのが甘草です。約3年間,独立行政法人医薬基盤研究所と国立大学法人千葉大学と共同研究を重ね,このたび,甘草の水耕栽培に日本で初めて成功しました。植物工場で残留農薬の危険のない均質な甘草を,短期間で安定的に生産できる栽培システムです。

水耕栽培は,植物の生長に必要な栄養分を液肥として与える養液栽培のひとつで,土を用いないため,生物および有害物質などの付着の危険性が低く,収穫後の洗浄・調製工程を大幅に省くことができ,使用後の土処理も発生しません。大量生産に最適な栽培方法ですが,甘草は通常の水耕栽培では細根が大量に発生し,根が肥大してくれません。

この課題を克服するため,当社技術研究所・新実験棟において,最先端の植物実験装置を活用し,複数の環境条件下で甘草を栽培し,適度なストレスを人工的に与えることで,根を肥大させることに成功しました。さらに,最適な日照,気温条件なども検討し,太陽光・人工光併用型植物工場の設計を進めています。その中に栽培ユニットを配置して,甘草の水耕栽培を行うシステムです。現在,当システムは特許出願中です。

図:甘草は私たちの身の周りの様々なものに使われています

甘草は私たちの身の周りの様々なものに使われています

写真:技術研究所・新実験棟の甘草栽培ユニット

技術研究所・新実験棟の
甘草栽培ユニット

様々な可能性を秘めた植物工場

植物工場には,従来の農業ではできなかった環境条件で,付加価値の高い作物を生産できる可能性があります。輸入に頼る薬用植物の安定的確保が懸念される中,当社の甘草の水耕栽培の成功は高い評価を受け,関係者一同大いに喜んでいるところです。

この水耕栽培システムを核に,甘草苗を増殖する植物工場,収穫した甘草を加工する工場,製品を出荷する付帯施設を備えた「甘草生産工場のパッケージ化」が,私たちがイメージする実用施設のかたちです。その実現を目指し,さらなる生育環境条件の最適化,品質の向上,低コスト化を図るとともに,甘草以外の作物栽培の検討にも取り組んでいきます。

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甘草の水耕栽培システムの特長

●半閉鎖型植物工場において,年間を通じた最適な環境条件のもとで,残留農薬の危険のない均質な甘草を栽培,安定供給できる。

●試験的に圃場で栽培された甘草では収穫までに4年程度かかるが,水耕栽培による当システムでは1年~ 1年半で収穫可能。

●医薬基盤研究所保有の甘草苗の中から,有効成分の蓄積量の高いものを選抜。また1本の苗から約4ヵ月で数十本のクローン苗を増殖する方法を開発。

●土を用いないため,生物および有害物質などの付着の危険性が低く,収穫後の洗浄・調製工程を大幅に省くことができる。

甘草の生産工場(イメージ)

図:甘草の生産工場(イメージ)

甘草栽培施設のビジネスモデル

図:甘草栽培施設のビジネスモデル

共同研究者の取組み

鹿島 研究開発全体の計画・水耕栽培実験

医薬基盤研究所 甘草苗の提供,優良系統の選抜,増殖法の開発,薬効成分の分析

千葉大学 甘草苗の育苗,ストレス付与による機能成分の高蓄積条件の探索,薬効成分の分析

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私たちが担当しています!

プロジェクトがスタートして約3年,エンジニアリング本部は研究開発全体のプロデュース,共同研究者との調整,営業活動を担当。技術研究所では水耕栽培の実験・検証を行っています。両者が連携を図り,技術開発に取り組むとともに,甘草の生育を見守ってきました。

現在,社内外から多くの問合せをいただいています。内容は様々ですが,実用化までの道筋を一緒に考えて下さるパートナー探しは重要であり,引き続き広く情報収集に努めたいと思っています。皆様のご支援をお願いいたします。

写真:右から,エンジニアリング本部・斎藤俊哉次長・澤田裕樹次長,技術研究所・皆川彰範さん・工藤善主任研究員・高砂裕之上席研究員・大野貴子研究員

右から,エンジニアリング本部・斎藤俊哉次長・澤田裕樹次長,
技術研究所・皆川彰範さん・工藤善主任研究員・
高砂裕之上席研究員・大野貴子研究員

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