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KAJIMAダイジェスト

Design concept

南仏ならではのユニークなリゾートの創出

図版:元当社建築設計本部 プリンシパル・アーキテクト 井上武司

元当社建築設計本部
プリンシパル・アーキテクト
井上武司

欧州人,特に冬長く気温の低い北ヨーロッパの人たちにとって「地中海」「南仏」「プロヴァンス」という言葉は甘美な響きとして,彼らに特別な感情を引き起こさせるようだ。英国人で元広告マンのピーター・メイルは,ロンドンを引き払い憧れの南仏に移り住んだ。そこでの生活と季節の移り変わりを綴ったエッセイ『A Year in Provence』(邦訳題:『南仏プロヴァンスの12か月』)はベストセラーとなり,プロヴァンスの田園風景を人々に印象付けた。

南仏の陽光溢れる風光明媚な自然,季節ごとに多彩で豊富な食材やワインに魅せられる感覚は我々にも想像がつく。だが彼らがリゾートでどのような生活を期待し,また鹿島が開発するに値する質の高いリゾートとはどうあるべきなのか。開発担当のみならず,設計にも極めて重要なテーマであった。目指すべき方向が明確になれば,建築計画やデザインの過程で,舵を持つ船のように確信を持って進めることができる。数々のリサーチ,数度にわたる開発と設計担当間での議論で得たものは多い。大よそ次のようなものである。

一つは芸術家や一流の文化人が好むソフィスティケートされたリゾートを実現すること。基調色のイメージでいえばアイボリー色の壁,茶系の樹木,鉄錆の黒等で,人工色は使わない。二つは別荘地の住戸であるが,混み過ぎない密度,数戸ずつが寄り添い,それぞれに小さな広場を持つ小集落(アモー)のような佇まい。各住戸の居間からは眺望が確保され,分厚い壁に小さな窓,冷涼な居室,ツタや樹木で日陰のある戸外(庭先)等が快適な生活を創り出す。三つめとしてリゾート地内の移動はもっぱら歩きか自転車とし,車や駐車場は極力目立たせない。四つめは,共有のアメニティ施設はボリューム感を抑えたものとする。分節されたスケール感,中庭のある南仏の農家のようなイメージが好ましい。五つめは野趣あふれるランドスケープ。広場についても控えめなデザインで,小噴水を設ける程度で過ぎた造り込みを避ける……等々。

南仏,特にプロヴァンスの建築スタイルから内・外装を構成する材料,デザイン要素や建築的納まりについて徹底的に調べ尽くして設計した。住戸が織りなす風景は相乗効果を生み出し,リゾート価値を高めることとなった。内装に関してはフランス人の女性デザイナーとのコラボレーションを選択したが,南仏のローカル風でありながらも,完成度の高いコンテンポラリーデザインでまとまったのは,多分に彼女の力によるところが大きい。

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図版:Design concept

図版:Design concept

図版:南仏のアモーを彷彿させるリゾート風景

南仏のアモーを彷彿させるリゾート風景

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図版:デザイン・コンセプト確立までには,様々なディテールスケッチが描かれた

デザイン・コンセプト確立までには,様々なディテールスケッチが描かれた

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