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KTビル大解剖…①  3つのコンセプトと徹底したモジュール化

当社本社ビルの西側隣地に完成したKTビル。
白いグリッド状のアウトフレーム構造による当社独自の外観デザインを引き継ぎ,
環境性能を高める先鋭的な知見が投入された。
都市型中規模オフィスの理想形をめざすべく,限られた敷地と条件の中で追求された技術力とアイデアに迫る。

写真:KTビルの南側立面

KTビルの南側立面。開口部の面積を抑えることが,内部に適度な光環境をつくり出す。日中はオフィス内がまぶしくならないように,また夜間には窓が室内の暗さを強調しないためのデザイン

写真:白い格子状の立面が特徴的な3棟(左からAKASAKA K-Tower,鹿島本社ビル,KTビル)

白い格子状の立面が特徴的な3棟(左からAKASAKA K-Tower,鹿島本社ビル,KTビル)。旧本社社屋から継承した当社独自のアウトフレーム構造が,統一感を生みながら三者三様の表情を醸し出している

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抑制的な外装デザイン

赤坂見附交差点付近から青山通りを西側へ望むと,外観が特徴的な3棟のビルが目を引く。2012年完成の超高層ビルAKASAKA K-Tower,2007年完成の鹿島本社ビル,そして昨年8月に竣工したKTビルである。

狭隘な敷地に計画されたKTビルは,都市型中規模オフィスのプロトタイプを追求したプロジェクトだ。当社東京土木支店・東京建築支店オフィスの建替えであり,11月から両支店が入居している。パリ協定や建築物省エネ法改正にともなう環境施策の強化によって,今後オフィスビルの建替えや改修の機運が高まることが予想されるなか,より一般的なオフィスビルの制約条件の下で,徹底した環境性能の向上が図られた。

3つのコンセプトとモジュール化

KTビルでは都市型中規模オフィスの最新モデルとして次の3つのコンセプトが掲げられた。①使いやすくフレキシブルなオフィス,②徹底的な省エネ,③ローコストである。

これらを具現化するにあたって重要視されたのが建物の全面的なモジュール化だ。モジュールとは建物を構成するあらゆる空間の基準寸法のこと。オフィス内の天井高や奥行きから設備スペースのサイズまで,さまざまな要素を規則的な寸法にもとづいて設計することで,機器の調達や施工・管理が省力化,規格化され,フレキシブルなオフィスレイアウトまで,幅広いフェーズで合理的な計画が可能となる。

実際に建物内をめぐると,各階1フロア100席を標準とした矩形の平面プランが左右対称に統一され,設備スペースや照明・空調等が同じ位置に設えられており,この徹底ぶりが見て取れる。

労務量軽減と品質向上――標準化の利点

このようにフロアを跨がって標準化を推し進めることのメリットは大きい。照明や空調,スプリンクラーといった設備機器を同じ製品と同じ配置で統一できるため,調達コストが抑えられるからだ。

施工面では,モジュール化の効果を最大限に引き出すために,外装パネルや設備機器の大部分を工場でユニット化し,現場での設置にかかる労務量を極限まで抑えた。現場での作業が減ることは工期の短縮に直結し,現場での廃棄物を低減できる。さらに機器類の組立てを工場で行うことによってより高品質な建物を提供することにもつながる。KTビルの現場ではさまざまな部材・機器にこの方式を採り入れ,なかでも空調室外機ユニットの設置では労務量を61%削減し,これにかかる工程だけで6日短縮した。

写真:徹底的なユニット化は労務量の削減に加え,建物の品質確保,工期短縮,施工中の廃棄物削減といったメリットがある

徹底的なユニット化は労務量の削減に加え,建物の品質確保,工期短縮,施工中の廃棄物削減といったメリットがある

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column 既存の地下躯体を活用

東京土木支店・東京建築支店の建替えとなるKTビルでは,旧建物の杭と一部地下躯体を再利用し,基礎部分の新規杭を25本から15本に削減した。解体前に,当社が開発したカメラによる杭の損傷評価やレーザー変位計による杭位置と形状の確認を行い,山留め工事では70%,杭工事では60%の省力化を実現。さらに省資源の観点からCASBEEの高得点獲得にも貢献した。

図版:既存の地下躯体を活用

KTビル

発注者:
鹿島建設
設計:
当社建築設計本部
用途:
事務所
規模:
S造(CFT構造)一部RC造 B1,12F,PH1F 延べ11,792m2
2016年8月竣工
(東京建築支店施工)

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