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KAJIMAダイジェスト

鹿島の省エネ展開中!

当社ではこれまでの自社施設等での実績以外にも,幅広い視野と技術で国内外においてグループを横断し,
低炭素社会に向けたプロジェクトを展開している。
ここではさまざまなフェーズから,ニーズやポテンシャルに応じた
省エネソリューションを提供する当社の実践を紹介する。

海外研究拠点とシンガポール初のZEB化プロジェクト

当社の省エネビル技術は海外にも波及している。シンガポールに拠点を置く当社のアジア統括現地法人KOA(Kajima Overseas Asia)は昨年10月,シンガポール国立大学(NUS)デザイン環境学部の新校舎となるSDE4の新築工事を受注した。シンガポール国内では初となる建物単体でのNet ZEB実現をめざす記念碑的なプロジェクトだ。KOAが技術研究所シンガポールオフィス(KaTRIS)の参画を提案し,大学側が当社の姿勢を高く評価した結果,今回の受注につながった。

KaTRISは,シンガポールを中心とするアジアの社会動向や技術開発ニーズの収集と把握,および国内技術の発信・展開を目的に,2013年9月に設立された。現在5名の研究員が常駐し,国際会議での発表,共同研究,実プロジェクトなどを通じて,当社の技術力のPRや人的ネットワークの構築に努めている。SDE4の入札では,当社がこれまでに行ったZEBへの取組みや,これらの経験を踏まえてZEB実現をサポートできることをアピールした点が評価された。技術研究所とNUSではSDE4受注以前から,蒸発散促進型屋上緑化「エバクールガーデン®」をはじめとする環境・エネルギー分野での共同研究を推進している。

シンガポール建築建設局(BCA)は自国の建物に対し,独自の環境評価基準であるグリーンマーク制度を設けている。LEEDなど世界的に用いられている認証プログラムに比べ,グリーンマークは熱帯向けにアレンジした指標であり,シンガポールでは2030年までに全建物の80%でのグリーンマーク取得を目標としている。SDE4では,ZEBの達成に加え,グリーンマークの最高ランクであるプラチナ評価をめざしている。

図版:シンガポール国立大学デザイン環境学部SDE4の完成予想パース

シンガポール国立大学デザイン環境学部SDE4の完成予想パース(設計:Surbana Jurong Consultants)。規模は地上6F,延べ12,270m2。2018年8月竣工予定

写真:「エバクールガーデン®」の実証実験

技術研究所がSDE4受注以前からシンガポール国立大学と共同研究を進める,蒸発散促進型屋上緑化「エバクールガーデン®」の実証実験

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建物周辺の熱源利用――再生可能エネルギー利用高効率ヒートポンプシステムReHP®

再生可能エネルギーの活用は,建物の環境性能向上に有効な手立てとなる。当社が開発した再生可能エネルギー利用高効率ヒートポンプシステム「ReHP®(リヒープ)」は建物周囲のポテンシャルを引き出す熱循環の仕組みだ。太陽熱や空気熱,地中熱,水熱といった複数の熱源を組み合わせ,建物の冷暖房や給湯に利用する。

再生可能な熱エネルギーを収集する熱源としては,例えば当社独自の「ソルエアヒートポンプ®」や地中熱交換器が挙げられる。これらを水を熱媒体とした熱源水ループに接続し,空調や給湯で利用する。熱をただ回収利用するのではなく,複数のエネルギーを選択して最適なバランスで組み合わせられることがポイントだ。

当社が設計・施工を担当し,2015年4月に竣工した杏林製薬わたらせ創薬センターは,本格的に「ReHP®」を導入した事例となった。同センターではおもに地中熱と,建物内の冷凍機からの排熱を熱源水ネットワークに組み込むかたちで,空調や給湯の高効率化を図った。供用開始から1年間のデータを分析した結果,一般的な空気熱源システムと比べ,一次エネルギー消費量を32%削減できることが実証された。

都市部から離れた地域に立地することの多い研究施設や生産施設は,運用に大きな動力が必要となる場合が多いが,広い敷地に備わった再生可能エネルギーの恩恵を受けやすく,省エネの可能性はまだまだ秘められている。

図版:「ReHP®」の熱循環イメージ

「ReHP®」の熱循環イメージ。建物周囲で得られる複数の熱エネルギーを利用する

写真:「ReHP®」を導入した杏林製薬わたらせ創薬センター

「ReHP®」を導入した杏林製薬わたらせ創薬センター

図版:「ReHP®」

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複合飲食施設のBCP対応コージェネ

東日本大震災以降,建物事業者の間で非常用電源設備への関心が高まっている。とりわけ医療施設やオフィスビルなどでBCPに対応した設備更新が急がれているのが現状だ。

当社が設計・施工を担当した複合飲食施設・東天紅上野本店(東京都台東区)では,電気と熱を同時に発生させる熱電併給システム「コージェネレーション(コージェネ)」と非常時の電源供給をスマートに制御する「ジェネスマート」が導入された。従来のコージェネ制御は停電時運転の際に,あらかじめ設定された設備以外に電源供給できない仕組みであった。新たに採り入れられたコージェネシステムは,電力需給バランスに配慮した省エネルギーが可能なほか,停電時に発電能力を最大限に活用できることが特徴だ。

コージェネの発電容量は,ピーク時の消費電力の約40%をまかなうスキームとして370kWに設定した。1年間の運用データを分析したところ,エネルギー多消費型の建物用途でありながら,既存建物比でピーク電力は52%の削減,一次消費エネルギー量は25%の削減をできたことが実証された。事業継続の観点からはもちろん,「おもてなしの場」でお客さまの大切な時間を守る貴重な自立電源となっている。

写真:不忍池を間近に望む東天紅上野本店

不忍池を間近に望む東天紅上野本店

図版:電力量実績値(2016年度)

電力量実績値(2016年度)

図版:既存店舗と新店舗の実績値比較

既存店舗と新店舗の実績値比較

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鹿島建物の省エネソリューション

当社グループ会社の鹿島建物総合管理では,日常のエネルギー管理を行う建物管理の現場と,全国の各拠点に配置した省エネキーマンや本社省エネ室で省エネサービス体制を築き,省エネ法対応から省エネ診断,実際の改善まで様々な省エネサービスを展開している。

省エネ法対応サービスでは同社で独自開発した「EneMASTER®」を利用して,企業全体のエネルギーデータの一元管理を行い,定期報告書,中長期計画書およびエネルギー分析レポートを自動作成し,省エネ対策立案支援などの省エネコンサルを提供している。

省エネ診断サービスでは,BEMS(ビルエネルギー管理システム)などが収集・蓄積したデータや設備点検等の管理データに基づく分析評価を行い,建物の実状を踏まえた省エネ提案を行っている。

これら省エネの取組みを通じ,同社が管理を手がける「虎ノ門タワーズオフィス」(東京都港区)をはじめとする4棟が,地球温暖化対策推進の程度が優れた事業所として,東京都環境確保条例における「優良特定地球温暖化対策事業所」に認定されている。また,8施設が日本ビルエネルギー総合管理技術協会の「ビルエネルギー管理優良事業場」として表彰されている。

写真:虎ノ門タワーズオフィス

東京都環境確保条例のもと「優良特定地球温暖化対策事業所」に認定された虎ノ門タワーズオフィス(当社が設計・施工を手がけた)

写真:鹿島建物総合管理独自のマネジメントシステム「EneMASTER®」のフロー図

鹿島建物総合管理独自のマネジメントシステム「EneMASTER®」のフロー図

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