特集:環境配慮建築

Chapter0 環境配慮建築とは?

建物が環境に与える影響
 建設事業は,建設資材の生産に始まって,施工,完成後の運用,維持・改修,解体といった建物のライフサイクルを通じて,様々なかたちで環境にインパクトを与えている。資材の生産段階では自然資源を採掘し,施工や建物の運用段階では化石エネルギーを消費している。そして,その過程で発生する温室効果ガスが地球温暖化の原因となる。また,建物の建設や運用,改修・解体の際の廃棄物は,土壌や河川,海洋などの汚染を招く危険性を持つ。
 わが国は,1997年の地球温暖化防止京都会議(COP3)で,2008年から2012年の温室効果ガスの排出量を1990年比で6%削減することを約束した。地球温暖化の原因となる温室効果ガスの大半は,石油,石炭,天然ガスなどの化石燃料の燃焼を原因とするCO2の排出によるものである。わが国のCO2総排出量のうち,建物のライフサイクルを通じて排出されるものが約3分の1を占めており,このことを建設業として真摯に受け止めなければならない。
 
健康配慮建築
環境配慮設計の重要性
 事務所ビルを対象とした試算によると,建物のライフサイクルを通じたエネルギー消費量の約3分の2が運用段階におけるものである。そのため,この部分のエネルギー消費量の低減が何より重要となる。これに対して,建物の設計の段階から省エネルギーを含めた環境配慮の取組みを図ることが要求されている。
 当社では,主な事業領域となる建設事業とその周辺分野において,様々な環境配慮の取組みを実施している。自社で設計する物件については,どれだけ環境に配慮した設計を行っているかを総合的に評価するために,「環境配慮設計シート」を活用して,各建物での環境配慮の推進・達成状況を把握し,より環境に優しい設計を促している。
 このシートには,大分類として「省エネルギー」「長寿命化」「省資源・エコマテリアル」「廃棄物削減」「地域環境との共生」の項目があり,設計に盛り込むことができる手法が列挙されている。さらに,環境関連法規を遵守しているか否かの検討や,省エネ達成状況の定量的な把握,グリーン調達の実績把握も行っている。
 次頁以降は,環境配慮建築の大きな枠組みとなる「自然との共生」「自然エネルギーの利用」「長寿命化への対応」の3つについて,その手法や取組みを紹介していこう。
解体を考慮した設計で資機材のリサイクルを徹底
カフェテリア
沖縄プレスセンター
  わが国の産業廃棄物の約2割を排出している建設業――。2000年7月に九州・沖縄で開催されたサミットで各国報道関係者の拠点となった「プレスセンター」は,廃棄物の削減とリサイクルをテーマとした建設プロジェクトであった。当施設は,開催後に解体されることが当初から決まっており,設計段階から資機材の再利用が考えられた。そして基準風速46mにも耐えられる構造でありながら,仮設建築物として各部材は取り外しが容易にできるよう建設された。解体の際には,外壁の板は学校の教材や災害時に利用される矢板に,屋根のトラス材は公共施設の資材として再利用され,その他多くの資機材がリサイクルされた。
沖縄プレスセンター(2000年7月竣工) 名護市国際海洋環境情報センターの多目的ホール


|Chapter0 環境配慮建築とは?
|Chapter1 屋上緑化とビオトープで生態系を再生
|Chapter2 風や自然光を利用して省エネ
|Chapter3 リニューアルで永く使い継ぐ建築