特集:代官山再開発・インタビュー 鹿島・代官山開発事務所 所長 山本均
いろいろ経緯があってバブル経済前後の激動の十数年をもろに浴びた事業です。当初デベ6社で概ね1社100億くらいの保留床引き取り,と思っていたのが最終的に鹿島と大成2社300億ずつになったものですから,この時点で一時凍結も覚悟していました。一番つらいのはこのような長期事業では先が読めない,ということです。実際売るとき貸すときは5年後10年後の話で,特にここ15年ばかりの景気変動は予測不可能に近かったのではないでしょうか。その中でオフィス需要低迷は長期になりそうだ,というのが少し見えてきた。渋谷区代官山しかも駅前,という立地を考えればマンションとしては最高の競争力をもっている。結局住宅が一番安全かな,という見込みになりました。ただし事業採算的にみて保留床引き取り価格が高いという問題はありましたが...。 住戸企画では,事前におこなった都心部高額マンション希望者へのアンケート調査から特徴的に出てきたことがありました。家族数が平均2人なんです。それなら少人数の家族がゆったり生活できる間取りがいいと考えました。例えば100m2超の住戸でも2LDKにし,主寝室は10〜12畳,LDは20畳前後あるとか。こういう都市部の駅前立地ですから,若い人からリタイヤした高齢者まで幅広いターゲットが想定されます。多様な生活ニーズも求められるので85タイプもある住戸プランになりました。商業棟も住宅の利便性と代官山らしさとを考え,1階を高品質食品スーパー等で,2,3階は個性的なファッション系の物販で,一部オープンカフェのようなものを入れます。 この事業を途中でやめるという判断もあったと思います。でもやめられなかったのは信義ですかね。やるという判断があったから人も金も出してきたわけです。鹿島には経済的合理性だけで判断しないというか,律義というか,企業風土としてそんなところがあるのではないかと思うんです。 戦後高度成長期のマンションが30〜40年以上経って,建替えに伴なう再開発は今後相当出てくるでしょう。そのあたり市場を捉えて会社としてどう取組んでいくか,見極めなければなりません。再開発事業推進には,さまざまな知識も必要だし,煩雑な業務をこなす地道な努力も必要です。そういう個人のノウハウ蓄積とか,長期的プロジェクトへの取組みに対応できる組織づくりとかも必要になってきます。現在,支店・営業・開発など各々の立場で取組んでいるわけですが,バラバラでやっているのはもったいないという気がします。個人の評価も含めて考えていかないと,どうしても時間がかかるものですから目先だけをみればやってられない。この種の仕事は楽しいものではないかもしれないけど,非常に重要で大切な仕事だと思いますね。(談)
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