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地域の潜在力を引き出す拠点運営 東京イースト21

地図

写真:東京イースト21の全景

東京イースト21の全景。左から「ホテル イースト21東京」,ビジネスセンター,オフィス棟「イースト21タワー」。その中央にショッピングモールがめぐる

写真:「ホテル イースト21東京」のロビーラウンジ

「ホテル イースト21東京」のロビーラウンジ。オフィスのテナントにも好評のもてなしの空間

オフィス立地の先駆け

東京メトロ東西線・東陽町駅。大手町より5駅・9分と至便なことから,近年は大手企業の本社ビルが増えている。従来はオフィス立地のイメージが全くない地域だったが,それを覆したのが東京イースト21だ。今年,オープン20年目を迎える。

当社の資材置き場の跡地活用として,地上21階建てのオフィス棟とホテル棟を中心に,大規模複合施設を開発。鹿島グループの総力を結集して企画・開発・建設・運営を行ってきた。

オフィス棟には大手金融企業のシステム部などが入り,丸の内の本社のバックオフィスとして歓迎されている。高層棟の間に立つ低層の「ビジネスセンター」は,ワンフロア1,000坪を超えるオフィス空間。開業当初は総合スーパーマーケットだった。

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写真:東京イースト21の中央に位置するプラザ

東京イースト21の中央に位置するプラザ。休日のステージショーや,町会との合同夏祭りなどが開催され,施設と地域を結ぶ憩いの場となっている(写真: momoko japan)

半年で生まれ変わった建物

1992年のオープン当時,低層の商業棟4フロアすべては総合スーパーマーケットが営業していた。週末には買い物客の車で周辺が渋滞するほど盛況だったが,2000年以降,より大型のスーパーが近隣地区に複数開業し,苦戦を強いられていった。

そこで検討されたのが,オフィスへのコンバージョン。その面積の割合が議論された。2007年,オフィス市場は活況を呈しており,食品スーパーのみ1階に誘致し,ほかはすべてオフィスと決まった。

窓は商品を並べるスーパーでは不要だが,人々が働くオフィスには必須となる。大きな開口を空け,エレベータを増設,フロア中央のエスカレータをすべて撤去した。スーパーは天井が高く,空間にゆとりがあり,設備の切り替えにも好都合だった。

逆に厳しかったのは工期である。食品スーパーは地域の日常生活を支えているため,休業期間を切り詰めねばならない。結果として,わずか半年で建物が生まれ変わった。

「オフィス市場のニーズを逃さずに新たなテナントを迎えることができました。3.1mの天井高と1,000坪の広いワンフロアがテナント各社に評価されています」。当社関連不動産のビルマネジメントを統括する開発事業本部の資産マネジメント事業部・宮﨑宣弘部長は,「再投資によって事業収益と資産価値を向上できた好例」とこのプロジェクトを位置づける。用途転用といった発想や迅速な改修工事に対応できるのは,「建物のオールインワンを知るゼネコンならではの強み。的確な事業の可能性を判断できました」。

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写真:コンバージョン前の商業棟

コンバージョン前の商業棟。4フロアすべてに総合スーパーマーケットが入っていた

写真:コンバージョン後のビジネスセンター

コンバージョン後のビジネスセンター。1階を食品スーパー,2階から上をオフィスに更新。外壁に大きな開口を開け,オフィス環境を整えた

まちの品質を高める装置

景気とともに変動しやすいオフィス市場のなかで,駅から徒歩7分のイースト21は不利な側面も否めない。しかし,多くのテナントが長年入居している。

「お客さまの評価が高いのは『ホテル イースト21東京』の存在です。都心からの距離に対し,圧倒的に高いグレードが喜ばれつづけています」。宮﨑部長はそう実感している。会議や接客,株主総会など,企業活動の晴れの場にはハイクオリティな施設が欠かせない。ホテルの品質がオフィス環境に,そして周辺地域に,有形無形の価値をもたらしてきた。

隣接地では地元企業と当社の二人三脚によって新たな建物も登場し,イースト21が生み出したオフィス立地が周囲に展開している。「地域の就業人口の増加は,イースト21内外の商業施設に活気をもたらし,まちづくりは点から面へと広がっています」。

都市の拠点施設の創造をめざして開発された東京イースト21は,近隣の江東区役所とともに,このまちのコアとなった。オフィス環境という地理的な潜在力を引き出すとともに,ホテルという文化的な価値を生かしながら,長期的な視野でまちの活力を育みつづけている。

写真:開発事業本部 資産マネジメント事業部 宮﨑宣弘 部長

開発事業本部
資産マネジメント事業部
宮﨑宣弘 部長

写真:隣地に登場したオフィス「イーストネットビルディング」

隣地に登場したオフィス「イーストネットビルディング」。カクマルからの委託をうけて,当社が開発・設計・施工・賃貸事業を一括して手掛ける

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column 省エネのスパイラルアップ

節電対策に各企業が取り組むなかで,「ビルエネルギー管理システム(BEMS)」が脚光を浴びている。当社では独自の技術を開発し,超高層ビルをはじめ多くの施設で導入・運用してきた。その先駆けとなったのがイースト21である。

BEMSは,建物の使用エネルギーや室内環境を把握し,データを蓄積・解析することで,省エネに役立てていくシステムである。エネルギー消費量は建物の特性によって大きく変わるため,実際に運用してみて分かることが多い。

イースト21では,当社グループの開発・設計・施工・運営である点を生かし,事業者・設計者・管理者が一体となって運用エネルギーの低減に努めてきた。たとえば空調設備において,テナントの就業者への影響は出ていないが,冷凍機やポンプの運転効率が悪化し,建物の運用エネルギーの増大を招いていることがある。こうした目に見えない不具合を検知し,改善を重ねることによって,エネルギー使用の合理化が日々進められている。

建物の設計・管理のエンジニアリングは,豊かな知見を蓄積しつづけることで,より高い水準の運営技術として成熟していくのである。

写真:イースト21の設備管理室

イースト21の設備管理室。ホテル,オフィス,商業と異なる用途を抱える施設を一手に管理している

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