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「つくる」から「使う」へ建物資産のマネジメントと鹿島

変容するマネジメント

この特集では,当社が携わる大型複合施設の事例をもとに,広がる建物運営の現場を紹介してきた。それらのマネジメントに関する概念は多様であり,さまざまなシーンで当社グループが活躍している。

資産保有という観点によるアセットマネジメント(AM)とその運営というビルマネジメント(BMN),建物のソフト全般をみるプロパティマネジメント(PM),建物のハードを管理するビルメンテナンス(BMT),そして建物周囲のまちづくりを展開するタウンマネジメント(TM)。こうした業務は重なり合う部分も多く,その意味と内容は時代とともに変容していく。

たとえば社名のとおりBMTを本務とする鹿島建物総合管理は,業界を代表する存在として知られている。「中核のビルメンテナンス業務はスタッフをさらにレベルアップさせ,価格競争とは一線を画す」べく同社の山坂本部次長は舵をとる。一方で「鹿島ブランドを生かした業務の拡大」にも力を入れている。深川ギャザリアはその好例といえよう。

テナント目線の建物管理

当社の開発物件や施工物件は,竣工後の運営がグループ会社に委託されることは少なくない。海外ではインドネシアの首都ジャカルタで大型複合施設「スナヤン・スクウェア」を1989年から開発。現地法人Kajima Overseas Asiaを中心に当社グループが開発・設計・建設から運営まで手掛け,昨年末も新たなオフィスビルがお目見えした。

前ページで紹介したイースト21は「鹿島東京開発」がPM業務を担い,ホテル,オフィス,商業施設を運営・管理している。ここで排出される廃棄物の処理は「都市環境エンジニアリング」が担当し,そのほかにも秋葉原UDXなど当社関連物件の環境衛生事業を広く手掛けている。

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また,東京駅前の「グラントウキョウ サウスタワー」やホテルオークラ東京の隣の「虎ノ門タワーズオフィス」など,首都圏の当社関連建物・所有床のPM業務を中核とするのが「イースト不動産」である。同社の門澤裕担当部長は,鹿島からの出向者。鹿島開発事業本部で虎ノ門タワーズの企画立案・事業推進を担当していた。

つくる側から,テナントとオーナーの両方の視点で建物を見るようになった門澤部長は,建物は「見た目のよさ」に加え,「使い勝手のよさ」も必要であると感じている。建物完成後は,専門知識を備えたスタッフによる効率的な管理を導入し,ソフト・ハード両面から管理の質を向上させることがテナント・オーナー双方の信頼を得ることにつながる。「管理の質は資産価値の維持・向上に直結すると痛感しました」。こうして得た知見は,鹿島に戻ってからの開発・建設の仕事で発揮されるに違いない。

写真:グラントウキョウ サウスタワー

グラントウキョウ サウスタワー

写真:虎ノ門タワーズ

虎ノ門タワーズ

写真:スナヤン・スクウェア

スナヤン・スクウェア

写真:イースト不動産 PM事業部 門澤 裕 担当部長(現・鹿島開発事業本部)

イースト不動産 PM事業部
門澤 裕 担当部長
(現・鹿島開発事業本部)

事業に役立つビル運営

オフィス賃貸は,リーシングが事業の成否を左右する。しかし,開発事業本部の宮﨑部長は,テナント拡張で退去する場合でも「鹿島として良好な関係を継続し,支援しています」と語る。「それはお客様の事業が発展した表れです。よいオフィスを提供していれば,将来ビルを所有・建設される際は,鹿島がお手伝いできるチャンスが必ず訪れると思っています」。

省エネや地域のつながりへの関心が高まり,建物の完成後の使われ方に注目が集まるなかで,「鹿島の仕事として建物の運営がますます大きなウエイトを占めてくる。たんなるオフィス賃貸の収益ではなく,お客様の事業に役立つという姿勢が大切になるのです」。当社が培ってきたゼネコンならではのビルマネジメントやタウンマネジメントのノウハウは,これまで以上に活躍の場が広がろうとしている。

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建物のライフサイクルを支える鹿島グループのサービス

図:建物のライフサイクルを支える鹿島グループのサービス 

column 鹿島品質のビル運営を支える研修センター

東京・江東区のイースト21に隣接するビルに「鹿島建物研修センター」が昨年末オープンした。鹿島建物総合管理の創立25周年事業の一環として開設されたもので,新入・中途採用の社員がおもな研修対象となり,4,5月の施設の稼働率は9割に達した。

このセンターの特徴は,建築設備の実機による体験研修。受変電,衛生,空調,照明,防災などのゾーンで構成され,緊急時の初動対応訓練や各種トラブルシューティングなどを行う。たとえば受変電設備は,機器を直接操作して学習する。衛生設備では,受水槽などの一部をアクリル板で透明にすることで,水位の増減によるポンプの運転制御状況を目視できる。防災設備では,防災盤の操作や消火ポンプ,スプリンクラーの実演などの初動消火対応から消火後の復旧方法を体験できる。

また,冷水ポンプや空調ファン,照明などの省エネ手法の研修も実施している。照明器具はタイプごとの使用電力量と明るさを比較・確認し,省エネと快適性を両立させる考え方を身につける。

これまで建物管理の初心者は赴任先で初めて実機に接するのが現実だったが,ここでは実機に触れる研修によって,設備機器の構造と基礎知識の強化を図る。日進月歩の最新設備を追うのではなく,「原理原則を体験しながら覚える」ことに徹しているのだ。お客様のニーズにきめ細やかに応え,高品質のビルメンテナンスを担う人材がここで育まれ,各地で活躍していく。

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