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Technology and Passion 77.4mの曲線桁を送り出す

最大の山場に挑む

2014年3月3日午前0時,電車や自動車の往来が止まり,あたりが静まり返るなか,そのイベントは始まった。現場では,深夜に行われる桁の送り出しや縦取り,横取りなどの架設作業のことを“イベント”と呼び,現場一丸となって当日に備える。この日は,本線(下り)桁の3回目の送り出し架設が行われた。桁の送り出し距離は77.4mと最長。最大の山場であり,一夜にして,鉄道10線と国道15号を跨ぐ桁を構築するのだ。「イベントに向けて,作業計画や段取り,装置の整備・確認,人員配置など様々な準備を行います。作業時間は,終電後に線路閉鎖手続きをしてから,初電を走らせるための線路閉鎖解除手続きまでの数時間です。分単位の緻密なものになります。さらに,あらゆるトラブルを想定し,様々な対処策を練り上げました」と話すのは,架設の施工全般を担ってきた岩田憲彦機電課長。機電担当として,シールド工事や都市土木,鉄道工事などの現場を経験してきた。この現場には,数多くの架設用機械や装置があり,確実な施工を支えるキーマンの一人だ。

写真:岩田憲彦機電課長

岩田憲彦機電課長

0時27分,送り出し用駆動装置が音もなく静かに稼働を始め,桁が少しずつ前方へ送り出される。50分後,システムが異常を感知。桁は動きを止めた。「あの瞬間は,凍りつきました。ただ,約半年前からJR東日本さん,協力会社とともに施工検討を重ね,リスクを洗い出してきました。想定内のトラブルだという確信はあった」(岩田機電課長)。送り出し用装置の桁接触面のキーパーツが外れるトラブルだった。想定していた故障で,交換部品は用意してある。作業手順も事前確認していた。20分で交換を完了。2時58分,計画より12分早い2時間31分で,無事に送り出し作業を終えた。

写真:国道15号の全面通行止め開始

国道15号の全面通行止め開始

写真:国道15号の直上まで桁が送り出される

国道15号の直上まで桁が送り出される

写真:2時58分に送り出し完了

2時58分に送り出し完了。3時30分に線路閉鎖解除手続きを終え,始発電車を待つ

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桁上に余計な心配をかけない

桁の下では,もう一つ大きなイベントがあった。国道15号を本工事で初めて全面通行止めしたのだ。安全を守ることは絶対条件。線路上空と同じく,自動車が走っている状態で,桁を動かす工事は行わない。そのため夜間の交通規制が必要となる。「交通規制は,近隣や運転者,歩行者の方々に大変なご迷惑をおかけします。だからこそ,しっかりと準備をしておくことが大切です。そして,施工部隊が毎日のように真剣な議論を交わしている姿を見てきました。桁下のことで,桁上に余計な心配をかけない。そう心に決めていました」と,近隣とのコミュニケーションを中心的に担ってきた百瀬憲事務課長は当時を振り返る。全面通行止めの前には,幾度もJR東日本,首都高,県警と協議を重ね,さらに近隣7,000軒に事前通知を行った。幹線道路の迂回路を確保するため,10km近い範囲の規制となる。当日は本社・支店から十数名の応援社員とガードマン110名体制で臨んだ。それでも,様々な苦情はあったが,一つひとつ真摯に対応することを心掛けた。気が付けば,夜明けを迎えていた。

これまで工事関連のイベントは80回,国道15号の全面通行止めは13回を数える。万全の備えがあってこそ,リスクはマネジメントできる。この現場は,そのことを教えてくれる。

写真:百瀬憲事務課長

百瀬憲事務課長

写真:国道15号の全面通行止めの様子

国道15号の全面通行止めの様子

写真:朝6時の状況

朝6時の状況。夜が明けて,列車,自動車がいつもどおりに通行するのを見て,現場は安堵感と達成感を覚える。夜間の架設イベントは80回,国道15号の全面通行止めは13回を数えた

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Column 技術や安全で高い評価を受ける

工事事務所の会議室には,発注者であるJR 東日本から贈られた数多くの感謝状が飾られている。鉄道工事における安全の重要性を認識し,責任感と創意工夫をもって,工事を進めてきたことが高く評価されてきた。

最近では5月12日に,線路上空での曲線桁送り出し架設と横取り架設による作業において,技術的な課題の克服に積極的に取り組み,無事工事を完遂したとして,感謝状が授与されている。

また6月14日には, JR東日本本社(東京都渋谷区)にて,「平成28年度 建設工事部長感謝状贈呈式」が行われ,同社の淺見郁樹執行役員建設工事部長から当社JVならびに岩田機電課長へ感謝状が贈られた。鉄道運転事故等の防止に積極的に取り組み,安全意識の向上に多大な貢献をしたことが高い評価を受けた。

写真:工事事務所の会議室には数多くの感謝状が飾られている

工事事務所の会議室には数多くの感謝状が飾られている

写真:「平成28年度 建設工事部長感謝状贈呈式」の様子

「平成28年度 建設工事部長感謝状贈呈式」の様子。右は感謝状を受け取る岩田機電課長(6月14日,JR東日本本社にて)

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