特集:本州四国連絡橋

ルポ−本四3橋の今を見る

 完成した3ルートの架橋プロジェクトは,本州と四国を結ぶ経済圏,特に瀬戸内の島々の生活を大きく変えた。当社が関わったそれぞれの橋を実際に渡り,3橋の今を見た。


3ルート

本州四国連絡橋3ルート

 児島・坂出ルート(瀬戸大橋)は,1978年着工後,3ルートのトップを切って88年に開通した。塩飽諸島東部の島々を3つの吊橋と2つの斜張橋,トラス橋で結ぶ全長37kmのルートで,これらを総称して「瀬戸大橋」と呼んでいる。
 神戸・鳴門ルートは景勝「舞子の浜」から明石海峡,淡路島を経由して,鳴門海峡を渡る全長89kmのルートである。98年明石海峡大橋の供用のあわせて開通した。  尾道・今治ルートは,芸予海域に点在する9島を10橋で結ぶ全長約60kmのルートである。着工から24年で全線が開通した。地域開発橋として,歩行者や自転車,原付も通行できる構造になっている。


●徒歩で渡る−来島海峡大橋−
 

来島海峡大橋

 鯛で有名な来島海峡の約70m上部を,五月晴れのもと,愛媛県今治市側から来島海峡大橋を歩いてわたり始める。レンタサイクルもあり,ツアーの団体客とも時折すれ違う。瀬戸内海の島々や行き交う船舶等橋上からの眺望もすばらしい。尾道までの10橋すべて歩行者・自転車で渡ることができる。途中には因島・大三島など村上水軍にまつわる名所・旧跡も多々存在,志賀直哉,若山牧水,林芙蓉子等文人ゆかりの地も点在する。 他の2ルートに比べ,生活道路・観光道路としての色彩も濃く,初年度の経済効果は約840億円とも試算されている。
来島海峡大橋・歩道


●鉄道で渡る−南備讃瀬戸大橋−
 
南備讃瀬戸大橋

 1988年に開通した南備讃瀬戸大橋は,このルートに架る6つの長大橋のうちの1つで全長1723mのトラス吊橋である。ここは鉄道で渡れる唯一のルートでもある。岡山と高松を約1時間で結ぶ快速マリンライナーに乗り込む。通勤・通学にも使われ,平日の朝夕は座席もいっぱいだ。岡山を出発して児島を過ぎ,鷲羽山トンネルを抜けると海上に出る。トラス越しに青い海面と船舶が見える。ゆるやかなカーブを描きはじめると当社施工の7Aにさしかかる。もう四国,坂出のコンビナート群が見え始める。坂出側の橋のたもとには瀬戸大橋記念公園が整備され資料館や展望台もあり,施工に使った工作機械等が展示されている。ここから正面に瀬戸大橋の勇姿を眺めることができる。開通後10年以上たち,今や物流の大動脈として大きな役割を担っている。
電車の車窓から


●バスで渡る−明石海峡大橋−
 
明石海峡大橋

 徳島と神戸・大阪を結ぶ高速バスが人気である。大鳴門橋と淡路島を経由して,明石海峡大橋を渡り神戸へ至る。一日平均利用客は4千人。観光客や買物客が中心である。日常買物客の流出はストロー現象と呼ばれるが,昨年の開通以来神戸・淡路島・徳島阿波踊り等への観光客の大幅増加にも大きく寄与した。 JR徳島駅より高速バスに乗り込む。乗客は20数名,観光客と買物客が半々である。大鳴門橋を渡り,淡路島へ入るとしばらくは陸路。そうこうしているうちにやがて明石海峡大橋の主塔が見え始めた。片側3車線だが,中央径間が大きく主塔も高いため,非常にスマートに見える。バスはやがて舞子のバス停に到着。橋のたもとは整備され,公園になっている。橋の科学館や展望台もあり,釣を楽しむ人や観光客で賑わっている。当社が沈設・施工した巨大なケーソン2Pが少しだけ海面からその上部をのぞかせている。
バスの車窓から





来島海峡大橋の建設工事
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座談会 「瀬戸内海に夢を架ける」