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Case3 グローバル社会への挑戦 ~海外ビジネス事情~

拡大する海外市場への参入

現在,国内の設計事務所や建設会社の多くは,拡大を続ける中国や東南アジア市場への進出を図っている。景観を専門とする設計事務所ランドスケープデザイン(東京都港区)も,2005年に大きな転換期を迎え,中国でのビジネスに舵を切った。

外構設計,景観計画,まちづくりガイドライン策定など,景観に関わる様々な設計ビジネスを国内で展開してきたが,同社の主たるマーケットだった首都圏大規模ハウジングにおける外構設計の受注が底をつき始めていたからだ。先行きに不透明感が漂う中,同社の伊藤進社長は,新市場への挑戦という英断を下した。

図版:ランドスケープデザイン 伊藤進社長

ランドスケープデザイン 伊藤進社長

その頃,ちょうど中国で高級マンションの計画が一気に進もうとしていた。これをチャンスとみた伊藤社長は,これまで欧米企業に外構設計を依頼していた中国の大手デベロッパー幹部との商談に臨んだ。先方が求めてきたのは,デザイナーと会話をしながらの“モノづくり”。自分達が得意とするビジネススタイルだと感じたという。「私たちは図面を売っているのではない。できたもので評価して欲しい」という言葉が自然と出て,初受注に漕ぎ着けた。以降,これまで31件のマンションの外構設計を手掛ける。2012年度の売上高のうち約3割が中国でのビジネスとなり,今年度は約5割になると見込む。

「外構は“生もの”です。美しさはもちろんですが,完成後も植栽が維持できるかが問われます。植物と土壌との関係や排水方法などを設計に盛り込んだことが評価されたと思います」。ゼネコンのグループ会社として,様々な設計業務を担当し,技術やノウハウを数多く蓄積してきたことが勝因だと分析する。また,中国の富裕層には,和の要素を取り入れたモダンなデザインが人気であり,国内での実績を十二分に発揮できるという。

しかし中国市場だけを見ている訳ではない。「需要というものは,限りなく続くものではありません。今後は,設計業務の受託に加えて海外企業が設計した図面に対して,設計監理業務でフィービジネスを展開できないか検討しています。鹿島本体の基盤を活かし,まずは台湾でのビジネスを考えています」。新たな市場を見据えた挑戦は続く。

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図版:遼寧省瀋陽市で瀋陽万科が手掛けるハイエンド住宅「瀋陽柏翠園」に設けられた庭園

遼寧省瀋陽市で瀋陽万科が手掛けるハイエンド住宅「瀋陽柏翠園」に設けられた庭園 Photo: Zhuang Zhe

図版:山東省青島市郊外で計画されている別荘タイプの住宅地に配されたグラスガーデン「青島小鎮」

山東省青島市郊外で計画されている別荘タイプの住宅地に配されたグラスガーデン「青島小鎮」 Photo: Jianwei Sun

図版:江蘇省無錫市で無錫万科が手掛ける住宅開発に付帯する河川公園「信成道」

江蘇省無錫市で無錫万科が手掛ける住宅開発に付帯する河川公園「信成道」 Photo: Zhuang Zhe

海外拠点の開設

「インテリアという言葉が付く仕事であれば,あらゆることに対応できます」と話すのはイリア(東京都港区)の松岡昭吾社長。国内最大のインテリアデザイン会社として,デザインをコアにしながら,家具の調達,内装工事,引越・移転などインテリアに関する様々なソリューションを提供している。

同社は1年前,シンガポールに6人体制(現在は10名)の支店を開設した。日系企業の進出急伸や社会の成熟度から,今後予想されるインテリアの需要増へ対応するには拠点が必要と考えたからだ。「東京のイリアが持つ機能を,そのまま活況な東南アジア市場に展開するのが狙いです」と松岡社長は話す。もともと国際的な家具調達ネットワークを持ち,中国でのホテルやショッピングセンターの設計業務などグローバルにビジネスを展開してきたが,海外拠点の設立は初となる。日系企業の設計や内装工事,調達などの業務を,シンガポールを中心に展開する考えだ。また,シンガポールには,税制の関係で品質の高い建材が集まることから,建材に関する情報発信基地として活用していくことも計画している。

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海外で人材を育てる

松岡社長には,海外でビジネスを志向するもう一つの理由がある。それは国際ビジネスの世界で活躍できる人材を育てること。「言語も含め仕事のスタイルは日本だけが違う。せっかく能力があるのに,対海外の仕事ができていない」と19年間の米国駐在経験から,日本のビジネス面での特殊性を指摘する。また,外資系五つ星ホテルの家具調達を手掛けるビジネスでは,国内でも英語が公用語となっているという。

「国内外問わずグローバルスタンダードでビジネスを行う時代となっています。だから,若い人を対象に海外経験をさせ,グローバルスタンダードを理解した上で日本的な良さを活かせる国際的なビジネスパーソンを育成しなければなりません。これからイリアが日本のみならず世界を舞台に成長していくための必須条件だと思います」。

図版:イリア 松岡昭吾社長

イリア 松岡昭吾社長

今後,鹿島グループ全体の利益は,海外での比率が高まると予想され,主なるマーケットは東南アジアとなる。如何にしてグローバル社会に対応していくか。2社の戦略から,一つの解を導けるのではないだろうか。

図版:四川省成都市のショッピングセンター内のフードコート「萬象城 食通天美食広場」

四川省成都市のショッピングセンター内のフードコート「萬象城 食通天美食広場」 Photo: Nacása & Partners Inc.

図版:タイ・バンコクのホテル「クラウンプラザ バンコク ルンピニパーク」“Ground Floor”

タイ・バンコクのホテル「クラウンプラザ バンコク ルンピニパーク」“Ground Floor”
Photo: Nacása & Partners Inc. / Ramaland Development / IHG

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