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GINZA SIXを造る

現場を率いたのは金丸康男総合所長。2012年10月に竣工した「東京駅丸の内駅舎保存・復原工事」を完遂した人物だ。竣工を迎えた時,定年までちょうど1年。丸の内駅舎の現場が自身の集大成と考えていた。その矢先に当工事の所長を打診される。「やってくれと言われたからにはやる」。その気概を持ってこの現場に臨むと決めた。

これまで数多くの大現場を率いた金丸総合所長をしても「今まで都心で工事をしたことはあるが,銀座の一等地でここまで大規模の経験はない。解体工事を終えた更地を見て,そのあまりの広さに呆然とした」と当時を振り返る。

工事は2013年7月から松坂屋銀座店を含む一帯の解体工事に着手した。2014年4月,いよいよ新築工事が始まった。

写真:金丸康男総合所長

金丸康男総合所長

工事概要

発注者:
銀座六丁目10地区市街地再開発組合
設計プロジェクト
マネージャー:
森ビル,アール・アイ・エー
 
設計:
銀座六丁目地区市街地再開発計画設計共同企業体
(谷口建築設計研究所,当社建築設計本部)
用途:
店舗,事務所,文化・交流施設,
地域冷暖房施設,駐車場
規模:
S・RC・SRC造
B6,13F 延べ147,856m2

2017年1月竣工(東京建築支店施工)

写真:解体前の銀座6丁目計画地

解体前の銀座6丁目計画地

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写真:現場全景。作業構台上で工事が進められる(2015年4月)

現場全景。作業構台上で工事が進められる(2015年4月)

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鍵となる地下工事

「世間の注目度が高いプロジェクトであり,何があっても竣工を遅らせられない。工程のクリティカルになるのが地下工事だった」と話すのは小吹教雄所長。工事全般でリーダーシップを発揮し,金丸総合所長も絶対の信頼をおく。

「この土地は地下水位が深さ10.9mだと地盤調査の結果が出た。建物の深さが34.5m。万が一地下水が場内に流入すると工事が止まる」(小吹所長)。大深度掘削工事に対し,山留壁を地下65mの難透水層まで貫入させ,掘削時のドライな環境を確保することが必要不可欠だった。そこで山留工事に採用したのがCRM(Continuous-Walls&piles using Recycled Mud:掘削土再利用連続壁)工法だ。CRM工法は,現場で発生した掘削土を泥土モルタルに加工して,地中連続壁として埋め戻すもの。掘削土を再利用することで,残土処理量が低減できる。場外への運搬車両も削減でき,周辺への配慮が特に重要な都市部において効果的だ。敷地のすぐ横を通る東京メトロ銀座線の運行に影響を与えないよう細心の注意を払い工事を進めた。

図版:CRM工法の山留イメージ

CRM工法の山留イメージ

写真:小吹教雄所長

小吹教雄所長

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短工期を実現する工夫

躯体工事は逆打工法を採用した。1階床を先行して構築し,地上階と地下階を同時に施工する工法だ。地下は1フロアごと順々に下がって躯体を構築していくのが一般的だが,当現場では,1階~地下2階~地下4階と2フロアごとに施工を行った。そうすることで構築した地下2階部分から地下1階の躯体工事施工が可能となり,より効率的に工事が進められる。

また,逆打工法には施工の合理化以外にも,1階床を構築してから地下工事を行うため,順打工法と比べて大幅に工事中の粉じんの飛散や騒音を低減できることや,構築した地下各階の床が山留支保工としての役割も果たし,周辺地盤への影響も最小限に抑えることができるメリットがある。

図版:順打工法と逆打工法のイメージ

順打工法と逆打工法のイメージ

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写真:地下躯体解体の様子(2015年6月)

地下躯体解体の様子(2015年6月)

写真:地下掘削工事の様子

地下掘削工事の様子。逆打工法のため天井に躯体が構築されている

写真:山留鋼材搬入の様子

山留鋼材搬入の様子。作業は夜間に限定された

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極小ヤードを克服する

「GINZA SIX」は,建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)が98%あり,敷地いっぱいに建物が建つため施工ヤードの確保が困難な状況だった。

「建物をつくるのに必要な物量は決まっている。材料が搬入できないことには工事は進められない。如何に作業導線を確保し,材料を入れるか必死だった」(小吹所長)。

地上の躯体工事では,クレーン用開口部として利用するために吹抜け部を,重機などの工事車両が場内を通行できるよう2階の床を後施工とした。

地上の躯体,オフィス階の仕上げ工事を主に担当した岡田裕工事課長は「とにかくヤードがなく苦心した。逆打工法で地上と地下を同時施工している分,重機など資機材のボリュームも多い」と語る。鉄骨を置くヤードがないため揚重し,完成した地上階の床に置いて対応するなど常に頭を働かせて,最適解を導いた。「地上チームと地下チームで毎日安全通路,重機配置を調整した。お互いに担当する工事の施工を進めなければならないなかで,うまく連携して乗り切れたと思う」(岡田課長)。

また,各店舗の内装工事が始まる頃には,1階部分のヤードだけでは捌ききれない物量になることが想定されていた。そこで,地下のスロープの先行設置を決めた。本来,階を跨るスロープは躯体の壁ができてから構築するものだが,H鋼を打ちこんで仮設の柱をつくり,スロープの荷重を支えることで施工を可能とした。

様々な策を講じることで,限られた敷地内で最大限の道をつくりあげた。

図版:スロープを支える柱部分の掘削の様子

スロープを支える柱部分の掘削の様子

写真:岡田裕工事課長

岡田裕工事課長

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綿密な作業調整

「最盛期は建築工事と同時に各店舗が行う内装工事も並行して進めた。241もの店舗それぞれが工事を行う。ピーク時は我々の工事で1,500人,テナントの工事で2,000人近くの作業員がいた」と話すのは商業エリア全般を担当した山本政煕(まさひろ)所長だ。人が多ければ,それぞれのテナントの搬入車両も膨大な数となるが,作業できるスペースや資材を揚重する設備には限りがある。各テナントとの綿密な作業調整と搬出入計画を練った。「各社との週3回の作業調整打合せのほかにも別途会議を行った。仮設エレベータは24時間稼働で資材を搬入した。力技と言ってしまえばそれまでだが,誠実に対応し続けたことで工事に関係する皆に竣工へ向けた強い思いが伝わり,多少の無理も聞いてもらえたと思う」と安どした表情で語る。

写真:山本政煕所長

山本政煕所長

後世へ伝える思い

建物が完成した2017年1月,金丸総合所長は「工事が終わり安心した。所員,作業員全員の“人の力”を結集したことが無事に竣工できた一つの要因だと思う」と語った。

能楽堂の施工を担当した篠崎正徳工事係(鹿島クレス所属)は「実際に手を動かす職長や作業員とのコミュニケーションが何より重要だと思う。面と向き合ってお互いに意見を言い合える関係づくりが,工事がうまくいく秘訣」と話す。日々,膝を突き合わせて思いを伝えることが実を結んだと実感する。

「工事は一人ではできない。やはり原点は人と人との信頼関係だと思う。我々は職人たちが気持ちよく作業できるように懸命に働いて,この人のためだったら何とかしてやろうと思ってもらえる架け橋を築くことが大切だということを忘れてはいけない」。金丸総合所長は自身の経験から学んだ教訓を後世へ伝える。

写真:篠崎正徳工事係

篠崎正徳工事係

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写真:4基のタワークレーンで躯体工事を行った (2016年2月)

4基のタワークレーンで躯体工事を行った (2016年2月)

Column 新たなアイデアで工程短縮

「地域の冷暖房を担うDHCプラントの設備工事を早く完了させる必要があった。逆打工法だと機械室が入る地下6階,屋上の床ができるのが最後になる。そこから機械設置,配管等の作業を行うと工程が間に合わない」。設備工事全般を指揮した舘澤直紀設備長は,なんとか工期を短縮できないかと模索した。

そこで考えたのが,通常躯体の完成後に機械を設置し,チェーンブロックで配管を吊って順次組み立てていく作業を,床ができるのに先行して配管工事を行う方法だった。掘削した地面に鉄骨架台を組み,その上にクレーンで揚重した配管材料を置いて組み立てることで,躯体工事と並行して進めることができた。これにより約2ヵ月の工程短縮につながった。また,重いものでは1.5tもある材料をクレーンで搬入,架台上に置いて作業することができたため安全性も向上した。

「建物は完成したが,設備はそこからちゃんと機能することが使命。これから夏になり冷房が本格稼働する。機能が確認できるまで安心できない」と舘澤設備長は気を引き締める。

写真:舘澤直紀設備長

舘澤直紀設備長

写真:DHC配管設置の様子

DHC配管設置の様子

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Column 地下連絡通路工事が進行中

現在,さらなる利便性向上のため「GINZA SIX」までの地下連絡通路の整備が進められている。

新たにできる地下通路は,晴海通り直下の既存地下通路とGINZA SIXの地下2階を結ぶ歩行者専用通路。開通後は,地上に出ることなく東京メトロ「銀座駅」,東京メトロ・都営地下鉄「東銀座駅」との往来が可能となる。

矩形断面の通路は,当社の独自工法である「EX-MAC工法」で構築する(シールド掘進距離109m)。2016年12月14日に晴海通り側の立坑からシールド機が発進。周辺の交通量が多いことから夜間に限定して掘進作業を進め,2017年4月20日未明に到達した。現在は,地下通路開通に向けてシールド機及び設備の解体作業を行っている。

図版:地図

写真:泥土圧式シールドマシン(EX-MAC工法)

泥土圧式シールドマシン(EX-MAC工法)

写真:矩形断面の地下通路が構築される

矩形断面の地下通路が構築される

工事概要

銀座六丁目10地区第一種市街地再開発事業に伴う公共施設整備工事のうち
地下連絡通路整備工事及び東電管路移設等工事

場所:
東京都中央区
発注者:
銀座六丁目10地区市街地再開発組合
規模:
泥土圧式シールド工法 鋼製セグメント外径(高さ4.45m×幅7.05m) 掘進距離109m
東電管路移設に伴う仮設工事ほか
工期:
2014年10月~2017年11月(予定)

(東京土木支店施工)

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