特集:都市再生と開発事業 |
2.都市再生と鹿島の開発事業 |
開発事業の積極推進── 鹿島の掲げる旗印の一つが,脚光を浴びている。 当社は今の「都市再生」につながる役割を,30年以上前から演じ続けてきた。 開発事業から撤退する建設会社もある中で,新たなニーズに対応するビジネスモデルを核とした開発を目指している。 ここでは,当社のこれまでの実績を振り返るとともに,将来へ向けた戦略を紹介していきたい。 |
都市再開発に活きる30年の実績 1971年,当社の開発事業の第一歩となる「志木ニュータウン」の計画がはじまった。民間デベロッパーによる中高層集合住宅の開発としては国内最大級のプロジェクトで,鉄道の新駅が開設されるなど,一つの街をつくるかたちとなった。 以降,当社は様々なかたちの開発事業を手がけてきたが,その中に現在の「都市再生」につながるキーワードを見出すことができる。 |
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「都市型の複合開発」の典型としては「東京イースト21」が挙げられる。ホテルやオフィス,商業施設からなる大規模な複合施設を整備することで,かつての工場や倉庫街のイメージを刷新し,地域の新たな顔となるシビックゾーンを創出している。 |
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地権者などが多く,権利関係が複雑な「集合住宅の建替え」を伴う開発も地道に実施してきた。「代官山アドレス」は,駅前の都心居住空間を再生する事業として注目を集めたが,その実現は,15年にもおよぶ関係者との徹底的な話し合いの結実でもあった。 |
代官山アドレス 場所:東京都渋谷区代官山町 開発期間:1985年〜2000年 事業内容:集合住宅および商業施設,変電所の開発・建設 開発面積17,262m2,延床面積96,512m2,総戸数501戸 |
複数の地権者の合意形成が重要となる再開発事業。「ディアマークス キャピタルタワー」や「石神井公園ピアレス」も,1980年代から地域に密着して粘り強く合意形成に努めた結果誕生した駅前型の街である。 |
石神井公園ピアレス 場所:東京都練馬区石神井町 開発期間:1985年〜2002年 事業内容:複合施設の開発・建設 (オフィス,商業施設,住宅など) 開発面積16,000m2,延床面積56,658m2, 総戸数294戸 |
ディアマークス キャピタルタワー 場所:東京都練馬区豊玉北 開発期間:1989年〜2001年 事業内容:集合住宅の開発・建設 (一部の商業施設を含む) 開発面積3,688m2,延床面積31,7422,総戸数286戸 |
新しいニーズに応える証券化手法 保有によるキャピタルゲインへの期待から不動産が経常的に生み出す収益への期待へ――。バブル経済の崩壊以降,不動産に対する価値観が根本的に変化しつつある。市場は,より安定した収益力のある不動産を求めている。この新しいニーズに応えるためには,開発者自らが事業リスクを認識し,その上でエンドユーザーや投資家の信頼を勝ち得る商品を提供することが何よりも重要となる。 投資家のリスクを分散・低減して,不動産投資への魅力を高める「証券化」は,その一つの手法だ。多額の資本を必要とする「都市再生」に,潜在的な投資を誘引する証券化の手法が大きな注目を集めている。不動産開発では,「将来何が起きるかわからない」こともあって,開発の初期段階が最もリスクが大きい。一方で,事業が成功した場合は,初期段階から事業参加した投資家がより多くの利益を手にするしくみとなっている。開発者は,いかに事前にリスクを的確に把握し,それを回避する商品を企画できるかが腕の見せどころとなる。 当社は,豊富な実績で培ったリスクを見極める眼と,証券化のノウハウによって,業界ではさきがけて,開発の初期段階で証券化手法を導入する「開発型証券化手法」を実現している。 |
汐留C街区に建設中のオフィスとホテルの複合ビルとなる鹿島棟では,着工してエンドユーザーが決定した段階で証券化が図られた。すでに収益を生んでいる既存不動産の証券化から一歩進んだ手法である。 現在,計画が進行中の秋葉原ITセンターでは,事業パートナーであるNTT都市開発と共同で設立したSPC(特定目的会社)が,建設工事費などの事業資金を,プロジェクトの収益力を担保として調達する開発型証券化のスキームで進められている。 |
汐留C街区・鹿島棟(仮称) 場所:東京都港区東新橋 開発期間:1999年〜2003年(予定) 事業内容:複合施設の開発・建設 (オフィス,ホテルなど) 開発面積6,011m2,延床面積79,785m2 |
総合力が実現する新しいビジネスモデル 建設会社である当社の開発事業の推進は,建設関連技術と切り離して考えることはできない。鹿島棟に導入された,高度な安全を実現する制震技術や環境に配慮した自然換気技術,さらに同一のビル内でオフィスとホテルの異なる機能が快適に共存できる設計企画力。これらも,投資家やエンドユーザーの信頼を得る大きな要因となった。 秋葉原ITセンターでは,世界的なIT拠点を目指して,集客機能,産学連携機能,情報ネットワーク機能などが展開される。これらを実現するソフト面での高度な企画力と,ITインフラのポテンシャルを最大限に発揮するエンジニアリング力が,事業パートナーのNTT都市開発,隣接する街区を開発するダイビルとともに期待されている。 |
秋葉原ITセンター(仮称)のうち3街区 場所:東京都千代田区外神田 開発期間:2002年〜2006年(予定) 事業内容:複合施設の開発・建設(商業,情報,教育施設など) 開発面積約11,547m2,延床面積約144,000m2 |
品川シーサイドフォレストは,JTと共同で7万m2以上の広大な敷地に,オフィス,ホテル,集合住宅,商業を展開する大規模複合プロジェクトだ。新駅の開業も予定され,都市インフラを熟知するゼネコンの役割がいかんなく発揮されている。 |
品川シーサイドフォレスト 場所:東京都品川区東品川 発期間:1996年〜2004年(予定) 事業内容:複合施設の開発・建設 (オフィス,ホテル,集合住宅,商業) 開発面積72,915m2,延床面積508,800m2 |
従来の工事受注を目的とした受身の開発から脱皮し,自ら需要を創造して高品質の不動産商品を市場に提供する。30年の開発事業で培われた実績と,設計・施工・エンジニアリング技術のシナジーが生み出す新たなビジネスモデルは,利便性・快適性・安全性を実現しながら「都市再生」に貢献していくであろう。 |
|1.伊藤 滋 早稲田大学教授に聞く |2.都市再生と鹿島の開発事業 |