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イヌイ建物・プラザタワー勝どき新築工事

マンション最前線 「スーパーRCフレーム構法+HiRC工法」の
混合構造を採用した超高層マンション

ここ数年,東京のウォーターフロントやベイサイドは,眺望の素晴らしさや
通勤アクセスの良さが人気で超高層マンションの建設ラッシュだ。今月は,当社の提案する
板状型(ばんじょうがた)超高層企画で建設中の43階建て超高層マンションの現場を紹介する。

工事概要イヌイ建物プラザタワー勝どき新築工事
イヌイ建物プラザタワー勝どき新築工事
場所:東京都中央区勝どき1丁目
発注者:イヌイ建物
設計:当社建築設計エンジニアリング本部
用途:賃貸住宅,事務所
規模:RC造(スーパーRCフレーム構法+HiRC工法)地下1階,地上43階,塔屋1階 住戸数512戸延べ56,765m2 
工期:2001年7月〜2004年2月
施工:東京支店





南面住戸とフリープランを両立する「板状型超高層マンション」
 下町情緒の残る東京・勝どき。隅田川にかかる勝鬨(かちどき)橋を渡るとすぐ右手に高くそびえ建つのが建設中の超高層マンション「イヌイ建物・プラザタワー勝どき」だ。
 このマンションの第一の特徴は,これまで,タワー型のマンションに提案してきた「スーパーRCフレーム構法」を,高さ155m,短辺20m・長辺66mのスリムな板状型の超高層マンションに初めて採用したことだ。躯体を構成する要素は,「スーパーウォール」という高強度コンクリートを用いた壁状の柱と「スーパービーム」という最上階に設置する大きな梁,そして制震装置を介して梁でつながる「コネクティング柱」に集約させ,さらに当社の超高層RC技術「HiRC工法」を組み合わせ構成されている。この混合構造により,耐震性に優れた躯体を確保しながら,壁と床が自由に配置でき,居室内には柱や梁のない自由な空間利用が実現,さらに南向き住戸を多く確保することが可能となった。
 第二の特徴は,都心型の賃貸住宅として,将来の社会的需要の変化に応じ,間取りや広さはもちろん,住宅以外の用途変更に対しても柔軟に対応できる,躯体(S:スケルトン),内装(I:インフィル)を分離したところである。そもそも,今回採用の高強度コンクリートは躯体として約100年間供用できると言われているが,これにより躯体自体だけではなく,内装,さらには水周りをはじめとする設備のリニューアルが容易になり,建物全体の社会的な長寿命化が実現できる。
躯体構造概念図
梁のないフレキシブル居室空間
柱・梁のないフラットな居室空間。SIが明確に分離されている

短工期実現に向けた現場の取組み
 初の板状型超高層フリープランマンションとして注目を集める本現場は,多くの見学者が訪れている。現在,工事の進捗率は60%に達しており,来年2月の竣工へ向け急ピッチで工事が進行中である。当現場の工期は32ヵ月。とてもタイトなスケジュールだ。「作業効率の上がる良い作業環境をつくること,職場環境を明るくすること,この二つが現場にとって非常に重要です」と語る池辺所長。現場の努力により工事サイクルは高層階に達する現在までに,1フロアを5日で施工するまで短縮された。こうした短工期を実現したのは,柱・梁などの鉄筋コンクリート製の部材をあらかじめ工場や現場製作ヤードで製作しておいて,現場で組み立てる「プレキャストコンクリート化(PCa化)」にしたことだ。これにより,工期短縮だけでなく,施工の合理化や部材の品質の向上も図られた。一方,スーパーウォールなどの躯体をなす大きな部材は膨大な質量に及ぶ。この大きな部材を早い段階で準備することが,さらなる工期短縮を実現する鍵であった。そのため,これらの部材を製作するヤードの確保も必要だった。ここでは用地の少ない都心部で適用される,地下階・地上階を同時施工する「逆打ち工法」が用いられていたため,ヤードも早く確保することができた。こうして確保された製作ヤードでは,高密度な配筋が必要なスーパーウォールのコア壁部2フロア分鉄筋ユニットの縦組みや,最大11.5m×4.5m,重さ9tにおよぶ大型の床板が工期に合わせて次々と製作され短工期に貢献した。
上層階施工の様子。タワークレーンで揚重されたスーパーウォールのコア壁部4ユニットが据え付けされたところ
施工中の現場(5月初旬) 大スパンPC床板を製作中

次世代型超高層マンションのかたち
 仕上げが進む住戸フロアを見せてもらう。住戸を区切るサッシが設置される直前のフロアはフラットな空間が広がっている。上層階の南側からは東京湾から房総半島まで見渡せ,北側からは,汐留シオサイトがきれいに一望できる。建物1階はエントランス,2階から4階までがオフィス,5階から43階までが賃貸住戸となっている。5階住戸では階高1.5層の天井高3.55mを確保,6階から10階も標準より高めで2.75m,11階から39階までは標準階2.5m,上層階40階に1.5層3.55m,41階から43階は階高2.75mと,同じマンションの住戸でも,南北断面図様々なニーズに応じた間取りを確保している。
 さらに,オフィスビルと向かい合う北側の1階から21階の部分には264台収容の立体駐車場が躯体に組み込まれるように設置されている。階高や間取りを自由に設定できる「スーパーRCフレーム構法」や「SI分離」の利点が十二分に活かされているのだ。
 このように,当社の提案する超高層フリープランマンションは,都市居住施設として,社会情勢に応じた用途の変更にも柔軟に対応することができ,居住者のライフスタイルや家族構成に合わせて容易にリフォームすることも可能なため,建物として長期的な資産価値を確保している。これは,次世代型の超高層マンションとして当社が勧める理想的なかたちを現したものなのである。