現場から:

極寒の地で橋梁つくり

--士狩大橋建設工事



 北海道のほぼ中央,帯広市に隣接する河西郡芽室町で橋長610m,最大スパン140m,5m径間のコンクリート橋となる「士狩大橋」がつくられている。この橋は,現在建設が進んでいる帯広と広尾を結ぶ自動車専用道路の一部をなすもので,帯広の北,十勝川を横断するところに位置している。この地域は北海道のなかでもとくに寒く,最低気温はマイナス20度を下回ることもある。
 今回の現場からではこの厳しい環境条件のもと作業を続けている士狩大橋建設工事を紹介する。


▲俯瞰 現在橋脚4(手前)と橋脚1(奥)で工事中

●厳しい寒さとの闘い
 この橋はコンクリート橋である。当然,水を使用する。練り,打設し,固まって型枠をはずすまでの間に気温が0度以下になると水が凍るので作業にも品質にも支障がでる。よって常に5〜10度以上を目標に作業現場の温度管理をしなければならない。
また,寒さのため作業効率が落ちるのはもちろん,直接素手で金属に触ると皮膚がはりついてしまうなど思わぬ事故も起こる。


▲仮囲い内部の作業風景

●動くビニールハウスの中で快適作業
 このため当現場では,特別な仮囲いを導入している。従来仮囲いは鉄製か薄いビニールシート。ここでは,4.2mm厚のポリプロピレンマットを採用した。鉄製に比べ架設が容易で,在来のシートに比べ,耐久性,保温性,光透過性にすぐれている。また,処分する場合にも,ダイオキシンなどの有害物質が発生しないため環境にもやさしいものとなっている。
さらにこの仮囲い,移動作業車に設置されているため,桁が伸びるごとに車を移動するだけで,組み直す手間や時間のロスがない。言わば「動くビニールハウス」のようなもの。室内は24時間暖房をたき,常に10m度以上に保たれ,コンクリートもむらなく,強度を一定に保つことができ,さらに作業を快適に行うことができる。

●経済性や美しさを考慮して
 エクストラドーズド橋は,桁橋と斜長橋の中間的な形状の橋で,両方の利点を併せ持つ。十勝大橋(帯広市)など北海道の代表的なPC橋をつくり続けてきた池田所長も「経済性,施工性はもちろんのこと,橋梁のデザインも周辺環境や景観への配慮が必要となっています。これからもこのような橋は増えていくでしょう」と語る。

士狩大橋建設工事<工事概要>
場所 北海道河西郡芽室町
発注者 北海道開発局
設計 北海道開発コンサルタント
規模 PC5径間連続箱桁橋,
橋長610m,
支間94m+140m+140m+140m+94m,
幅員23m
工期 1996年10月〜1999年3月
施工 鹿島 札幌支店JV