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(仮称)東京ビル新築工事

24時間超高速施工の現場
再開発が進み,ビジネス中心の街から最新のファッション,情報を発信する総合的な街に変化しつつある東京・丸の内。東京駅南口の正面,東京中央郵便局と東京国際フォーラムに挟まれた場所に(仮称)東京ビル新築工事の現場が見える。
24時間高速施工が実施され,工期の大幅な短縮がなされている当現場を紹介する。

(仮称)東京ビル新築工事現場

工事概要
(仮称)東京ビル新築工事
場所:東京都千代田区
発注者:三菱地所,東日本旅客鉄道,東京三菱銀行
設計・監理:三菱地所設計
規模:SRC造一部S造 B4,33F,PH1F 
延床面積150,625.1m2
工期:2003年4月〜2005年10月(解体工事含む)
(東京支店施工)

完成予想パース
話題の現場
 (仮称)東京ビル新築工事は,三菱地所が進めている「丸の内再構築」プロジェクトによって,既存の9階建ての東京ビルを各条例を活用して,最新の機能を持つ超高層ビルへと建て替えるもの。低層階を店舗,上層階をオフィスにし,店舗の分散をせず集客力を上げる構造となっている。南北・東西に貫通通路を整備し,特に東京駅から東京国際フォーラムを経由して有楽町に繋がる歩行者ネットワークを実現。地下はJR京葉線コンコースと接続し,来館者の利便性が高くなっている。また,防火設備としてウォータースクリーンを,制震システムとしてHiDAX-eを採用し,安全性も確保されている。
 本工事は技術提案型入札が採用された。当社は,本店・支店・建築設計本部が一丸となり,解体工事を含め通常36ヵ月かかる工期を30ヵ月に大幅短縮する24時間高速施工を提案し,見事受注することが出来た。
 工期短縮による東京ビル早期完成は,三菱地所の「丸の内再構築」プロジェクトの第一ステージ完了へと繋がる。
歩行者ネットワークが利便性を高める
各制度を利用した超高層ビルの建設
 当現場は,日本でいち早く「特定容積率適用区域制度」が適用された案件である。「特定容積率適用区域制度」とは,2000年の都市計画法と建築基準法の改正により創設されたもので,歴史的建造物が景観を保つため容積率を余らせた場合など,その周辺区域内であれば容積率を譲渡できる制度。現在,この制度が適用されるのは東京駅周辺のみとなっている。今回の工事では,この制度によって,東京駅丸の内駅舎の未利用容積の一部を譲り受けることで超高層ビルの建設が可能となった。
 また,2002年に東京都の都市開発制度の運営方針改正によって創設された「育成用途の集約化を可能とする特例」も活用されている。この制度は,一定の区域内で行われる複数の開発を合わせ,交流施設・文化施設などの育成用途を一ヵ所に集約出来る特例。この制度を利用して,同時期に建て替えを行う日比谷パークビルに交流施設・文化施設などを集約させ,東京ビルには主にオフィス機能を充実させ,それぞれの機能を生かすようにしている。
容積移転による超高層ビル化
完成すると東京駅南口のゲートタワーとなる
一方向切梁を用いたハイブリッド工法
 現場では短工期での施工を可能にするため,様々な工法を比較検討し,地上と地下を同時に施工する順逆打併用工法(ハイブリッド工法)を採用した。南側にJR京葉線ホーム,西側に東京三菱銀行本店ビル,北側に東京中央郵便局が隣接し,安全面からこの三方向の地下にはアースアンカー打設での施工が出来ない。そこで,敷地長辺方向の両端・南側と北側を逆打ちにし,中央部分は短辺方向の一方向に切梁を用いる順打ちでのハイブリッド工法が用いられた。
 この工法では,既存の東京ビル地上解体後,敷地長辺方向両端の既存地下外壁にカウンターコンクリートを打設し,山留壁として有効活用して土圧を支持。地下2階部分からはSMW山留壁を構築して逆打ちで施工を進める。中央部分は,東側は既存地下外壁を仮アースアンカーで支え,長辺部同様にSMW山留壁を造成。西側は既存地下躯体と解体ガラで山留壁を構築し,その外側にSMW山留壁を先行施工する。更に短辺方向に切梁を架設して土圧を支持し,順打ちで施工を進めていった。そして,中央部の掘削を早期に完了させ,地下基礎底盤施工後は地下鉄骨を1階まで一気に建ち上げ,1階床コンクリートを先行して全面打設することで地下躯体構築・地上鉄骨建ち上げを並行して行うことが出来た。これにより短工期・低コストを実現した。
一方向切梁を用いたハイブリッド工法
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各工法の比較
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短工期を可能にした24時間施工
 ハイブリッド工法を用いることで低コストでの工期短縮が実現したが,今回は更なる短縮のために工事の24時間化を行っている。「住宅街では夜間も施工を行う24時間施工は近隣住民への夜間騒音などの配慮からなかなか出来ない方法。しかし,今回の現場周辺はオフィス街で住宅地がないことからこの施工方法が可能となりました。また,24時間施工をする上で,昼と夜とで工程を分けることにより,工期を更に短縮することが出来ました」と現場の高橋直人所長は言う。
 通常,ビルを短期で建てる場合,3層1節の積層工法で,鉄骨・躯体・外装と順を追って施工する方法を用いる。しかし,今回は超短工期ということもあり地上階は鉄骨先行の従来工法を採用し,昼間は切梁架設・鉄骨・躯体・内装を,夜間は地下掘削・外装を施工する方法を採った。そうすることで,単に施工時間短縮だけでなく騒音・振動などの環境問題も解決出来た。また,昼間に鉄骨を建ち上げ,夜間に外壁カーテンウォール取り付けを行うことで周囲への安全対策にもなっている。また,外壁カーテンウォールを工場組立てのユニット・カーテンウォールにすることで取り付けの効率を上げ,外壁施工の短縮を図った。また,現場でのカーテンウォールの組立てが必要なくなったことで,落下事故防止にも繋がった。
 更に,24時間施工にすることでタワークレーンの使用効率が上がり,アイドルタイムの削減が出来た。このタワークレーンも当社が開発した巻き上げスピードの速い新型JCC-V700Kを3台使うことで,機動力を上げることが出来,音も小さいことから夜間使用に適した。取材に訪れた2月初旬には既にタワークレーンは2台になっており,工事の速さを実感出来た。
 内装工事を含め1,300人を超える作業員たちが施工を進めている最盛期の工事は,本年10月竣工に向け,これからも24時間施工が続く。
夜間の外壁取り付け
美しいカーテンウォールが取り付けられた壁面
新型タワークレーンJCC-V700K。2月中旬に2号機も撤去。4月には残り1台も撤去される
20040921
20041021
20041122 
20041224 
20050114
20050204 わずか半年で建ち上がり,外壁も取り付けられ,東京駅南口の景観は大きく様変わりしてきた
interview
現場の様々な工夫
 当現場は,工期が厳しいということもあり昼夜を分かたず現場作業が出来るように24時間体制をとっています。周辺への環境配慮という側面でこの体制は大変に役立っています。掘削,解体等の騒音・振動を発生しやすい工事は,オフィス街ということもあり夜間仕事をする方が喜ばれるからです。
 しかし,それだけに現場社員の負担は大きいものになっています。現場社員は昼間の仕事を中心に仕事をしており,それに夜の勤務帯が連続で加わればその負担の大きさは大変なものです。そこで,この現場では昼夜24時間勤務とその代休,そして休日勤務の両方のローテーションをしっかりと組み,それを崩さないようにして社員の健康面に配慮しています。これによりきちっとした月間の目標管理ができるようになり,仕事の効率化と残業時間の低減,そしてヤル気が向上しました。それ以外にも,現場でのバーベキュー大会やもちつき大会,納涼大会等のイベントで気分転換を図っています。
 社員の元気があっての現場。厳しい仕事環境は百も承知ですが,現場全員,心を合わせて竣工に向かって頑張っています。
高橋直人所長