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災害廃棄物処理業務 (石巻ブロック)分ける技術の指標を築く

写真:がれきに同じものはひとつとしてない。 佐々木正充所長(石巻ブロック災害廃棄物処理業務JV事務所)

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重機たちの連携プレー

誰もやったことのない仕事──。各地の施設で進むがれき処理のなかで,最大の石巻ブロックを率いる佐々木正充所長は,任務の難しさをやり甲斐にかえて現場に立ちつづける。

東京ドーム15個分の敷地に,石巻市・東松島市・女川町から集まるがれきの総量は,宮城県全体の半分に当たる。それを2年間で処理しなければならない。粗選別・破砕選別・土壌洗浄・改質・焼却などの中間処理ののち,有価売却を含むリサイクル・最終処分を来年度中に終える予定だ。

広大な粗選別ヤードでは,さまざまな重機がまるで工場の生産ラインのようにスピーディに動きつづける。運ぶ,並べる,分ける,積み上げると,その連携プレーの緻密さは人間さながらだ。

ここでの基本は「分ける技術」。つぎの工程となる破砕選別ヤードにも,振動ふるいや風力などの大型の選別機を多く導入しているが,最終的には人の手を随所に投入し,リサイクル率の向上をめざす。

「がれきに同じものは,ひとつとしてない」。佐々木所長の苦労もひとしおだ。がれきの性状や条件は,日々変わっていく。「やってみて,うまくいかないことを,みなさんに見てもらう。県や当社の幹部の指導を受けながら,改善を繰り返していく」。設備のテスト期間さえ許されないなかで,最適なシステムを独自に築いてきた。

写真:うまくいかないことをみなさんに見てもらう。 佐々木所長

粗選別ヤードでは,がれきをライン上に展開し,重機と人の手で選別する

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写真:持ち主を待つ。 思い出の写真デジタル公開センター

石巻ブロック災害廃棄物中間処理施設遠景(奥の突端部)

財産だったがれき

敷地内では「思い出の写真デジタル公開センター」を市が運営する。がれきから見つかった写真をデジタル画像にして公開し,持ち主を待つ。しかし,がれきや海からは遠ざかりたいといった市民の心情もあり,訪問者数に伸び悩む。

一方で,がれきの手選別に携わる作業員もほとんどは被災市民である。水産加工場に勤めていた平塚正人さんは「選別作業を毎日するうちに,がれきは人の財産だったことに気づいた」と作業しながら持ち主を偲ぶ。「つなぎの仕事と思っていたが,いまは最後まで全うしたい」

訪問ヘルパーをしていた門脇ちよのさんは,今年6回目の年女となった。「ランドセルがコンベアを流れてくると,孫の姿と重なる。家の柱が出てくると,わが家を失った人を想像し,涙があふれる」。当初は高さ20mものがれきの山を前にして途方に暮れたが,小さくなる山に「あと一息」と笑顔を浮かべる。

23歳の阿部裕太さんは,粗選別作業を担当する協力会社の工事主任。「いつも車で通っていた交差点が区別できないほど,まちの建物が失われた。若い世代だからこそ石巻に残り,復興に貢献したい」と再建を誓う。

写真:がれきは人の財産だったことに気づいた。 平塚正人さん(選別作業員)

写真:家の柱が出てくるとわが家を失った人を想像する。 門脇ちよのさん(選別作業員)

写真:若い世代だからこそ石巻に残る。 阿部裕太さん(地元建設会社スリーテック工事主任)

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写真:10cm以上のがれきは人の手で選別する(手選別ライン)

10cm以上のがれきは人の手で選別する(手選別ライン)

写真:破砕したがれきを振動で大きさごとに選別する振動ふるい機

破砕したがれきを振動で大きさごとに選別する振動ふるい機

写真:8ラインで振動・風力・手による選別を行う(破砕選別ヤード)

8ラインで振動・風力・手による選別を行う(破砕選別ヤード)

写真:粗選別ヤードから破砕選別ヤードへとがれきを運ぶベルトコンベア

粗選別ヤードから破砕選別ヤードへとがれきを運ぶベルトコンベア。総延長は1.4kmあまりに達する

写真:24時間体制で操業する破砕選別ヤード

24時間体制で操業する破砕選別ヤード

写真:重機での粗選別ののち,がれきをもう一度薄く広げ,人の目で危険物や思い出の写真などを選別する

重機での粗選別ののち,がれきをもう一度薄く広げ,人の目で危険物や思い出の写真などを選別する

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29万人の手助けをさばく

ここでの作業が進むにつれて,各地の一次仮置き場のがれきの山は着実に小さくなった。市内の一次仮置き場への搬出は,昨年末までに7割あまりが済んでいる。こうしたがれきの運び出しには,多くのボランティアの力があった。

石巻市を訪れたその数は,延べ29万人以上。個人対応ではさばききれない。そこでNPOやNGOと連携し,団体ごとに被災現場へ差し向けた。「石巻方式」として名を上げた運営スタイルである。

「大切なのはマッチング。被災者のニーズを把握し,的確にボランティアを送り込むのは至難の業」。活動の一翼を担った石巻市社会福祉協議会の大槻英夫さんは,有事への日ごろの備えの大切さを説く。震災前から職員の半数を各地の災害現場に派遣し,復旧活動を肌で感じていたことが今回大きく役立った。

こうした実績が注目されての招待講演は,北海道から九州まで60回あまり。大槻さんはいま,仮設住宅の見回り支援を活動の柱にすえ,NPOやNGOが去ったあとの市民同士の共助を提唱。コミュニティの再建に力を注ぐ。「市民には鹿島JVの現場に足を運んでほしい。あのヘドロがきれいな土砂になった。選別の徹底ぶりは驚くほかない」

写真:重機の連携プレーでがれきを運び,並べ,分ける(粗選別ヤード)

重機の連携プレーでがれきを運び,並べ,分ける(粗選別ヤード)

写真:選別の徹底ぶりは驚くほかない。 大槻英夫さん(石巻市社会福祉協議会 常務理事兼事務局長)

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将来の道しるべをつくり上げる

石巻ブロックの佐々木所長も,20年あまり住んだ市内の自宅を失った。「直後の応急復旧では,がれき運搬のダンプで渋滞が目立った」。市民の目による体験をふまえ,この現場では交通指導をとくに厳しくし,周辺道路の清掃も実施。道路の状況が見違えたと警察署からも評価され,現場の視察・見学者数は3,500名を超えた。

目下の気がかりは,ここで処理した土砂などの行方。「復興資材としての使い道が具体的に決まっていれば,もっと合理的に選別できる」。たとえば海水の塩分は,基準では特定有害物質とみなされるが,土壌汚染対策法に則った用途しだいでは除塩せずに再利用できる。

こうした「技術の基本はダム建設」。膨大なコンクリートの骨材は,岩石や土砂の分別から生まれる。「環境省や県が,鹿島の技術に期待していると言ってくれた。応えないわけにいかない」。佐々木所長は,東北支店土木部工事管理部長の要職からの登板。これまでのダム現場などで培った人脈を総動員する。苦楽を長年ともにしてきた所員との会話は,兄弟のよう。

「土木は自然が相手。ゆえに結束せざるをえない。ここで技術をつくり上げる覚悟。それがやがて鹿島の技術の指標になる」。将来を見据えた奮闘がつづく。

写真:ここでの技術の基本はダム建設。 佐々木所長

土砂を洗浄した後に残る汚泥をも,改質してリサイクルを行う

写真:土壌洗浄設備(奥は破砕選別ヤード)

土壌洗浄設備(奥は破砕選別ヤード)

写真:3ヵ月間の超短工期で設置したロータリー式の焼却炉

3ヵ月間の超短工期で設置したロータリー式の焼却炉

写真:夜間も焼却炉は動きつづけ,5基で1,590t/日のがれきを焼却する

夜間も焼却炉は動きつづけ,5基で1,590t/日のがれきを焼却する

●業務概要

災害廃棄物処理業務(石巻ブロック)

場所:
宮城県石巻市
発注者:
宮城県
受注者:
鹿島・清水・西松・佐藤・飛島・竹中土木・ 若築・橋本・遠藤特定建設工事共同企業体
業務対象区域:
宮城県石巻市,東松島市,女川町
履行期間:
2011年9月〜2014年3月

当社では以下の災害廃棄物処理も担当している。

●宮古地区災害廃棄物破砕・選別処理業務
業務対象区域:岩手県宮古市,田野畑村,岩泉町

●災害廃棄物処理業務(宮城東部ブロック)
業務対象区域:宮城県塩竈市,多賀城市,七ヶ浜町

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