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本堂 保存・修理……漆・障壁画・錺金具

瑞巌寺の特徴のひとつとして挙げられるのが装飾の豊かさだ。
豪華絢爛でありながらも桃山時代特有の落ち着きのある華やかさは桃山建築・美術の精華である。
室内の豪華さを醸し出す漆や障壁画,錺金具の修理を追う。

特有の光沢と耐久性・堅牢性のある素材として長い歴史を有する漆。装飾性に加え厚い塗膜で覆うことで部材を保護する役割がある。漆は単に木に直接漆の液を塗るのではなく,数多くの工程が必要となる。

まず,素地となる木材同士の接合部や傷を彫りこみ,のり,麦粉,綿,木炭で作った「刻そ」を埋め込み平らにする。この「刻そ彫」と呼ばれる工程から始まり,下地として木地へ麻布を貼り,粗い下地から細かい下地まで何層もの塗り,砥ぎを重ねて表面を滑らかにし,最終的に仕上げていく。その工程は29にも及ぶ。

写真:漆の工程

漆の工程

障壁画

現在飾られている障壁画は,墨絵の間・羅漢の間を除き,全て1622年の完成時の姿に復元・整備されたものだ。復元模写事業は1985年に始まり,1997年に完了している。今回の工事では,障壁画本紙は大阪の専門業者へ運び修理,裏紙の貼り替えを行った。現場ではその間,本紙を貼るための下地貼りが進められた。下地は本紙に隠れてしまい目にすることのない部分だが,木の灰汁や温度,湿度が本紙へ影響を与えないようにするための重要な作業だ。9層も紙を重ねる工程は,代々受け継がれた先人たちの知恵の結晶と言える。

写真:柱下の目違を加工する様子

下地貼りは9層の紙を重ねる

写真:本紙貼り作業風景。ずれないよう慎重に作業を進める

本紙貼り作業風景。ずれないよう慎重に作業を進める

改ページ

錺金具(かざりかなぐ)

社寺建築や神輿,仏壇などに使われる装飾用の金具で,歴史の中で高度な造形性が付加され,漆,障壁画とともに室内の豪華さに華をそえる錺金具。

修理は,外した金具を希硫酸に浸し,一度塗装を落とした後に歪みや釘穴のつぶれ等を叩いて修正。金具表面の仕上げには伝統技法である水銀鍍金が採用された。銅地の金具に対して水銀を接着剤として金箔押しを3度行い,その後,加熱して水銀を蒸発させ,表面に金を定着させる方法だ。

写真:加熱して水銀を蒸発させることで表面が金色に変化する

加熱して水銀を蒸発させることで表面が金色に変化する

写真:錺金具

錺金具

写真:補修を終えた上段の間

補修を終えた上段の間

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