ホーム > KAJIMAダイジェスト > March 2017:特集「よみがえる国宝 瑞巌寺」 > 屋根葺き替え

KAJIMAダイジェスト

本堂 保存・修理……屋根葺き替え

瑞巌寺本堂の正面に立つと,大きく美しい屋根が迫ってくる。
その表情をつくり出しているのが約6万枚もの瓦である。
今回の保存修理では,瓦を含め屋根の全面葺き替えが行われた。

屋根解体

平瓦や丸瓦など約6万枚の瓦を1枚1枚,丁寧に取り外した。全て手作業による打音検査により,修復,新規作成するかの判断をする。今回は新たに約4万枚の瓦を製作した。

解体の対象となるのは瓦だけではない。瓦を固定する瓦桟や瓦からの浸水を防ぐ土居葺き,野地板,野垂木など,屋根を構成する部材全てを解体。小屋組と呼ばれる屋根を支える骨組だけの姿となった。東日本大震災発生時は,瓦が取り外されていたことが幸いし,大きな被害がなかったと考えられている。

写真:解体が完了し,小屋組が顔を出した屋根

解体が完了し,小屋組が顔を出した屋根

屋根再構築

組立ては,基本的に解体工事の逆工程で進める。交換するもの以外は,同じものを同じ場所に戻すことが基本となる。そのため解体時に一つひとつの部材に番付と呼ばれる目印が付けられた。他の伝統建築工事と同様に,職人の匠の技が決め手となった。

改ページ

写真:瓦葺きに向け膨大な量の瓦を並べる様子

瓦葺きに向け膨大な量の瓦を並べる様子

写真:屋根を構成する部材の名称

屋根を構成する部材の名称。野地板の下に野垂木がある

改ページ

現代の名工に聞く 杮(こけら)葺職人 沼澤修一さん

伝統建築の工事では,古の技を受け継ぐ職人の技術が不可欠だ。現代の匠は,国宝を守るために何を考えたのか。

「瓦からの漏水を防ぐ土居葺きは,材料を1枚1枚手で打ち付ける作業です。材料同士に決して隙間や段差があってはいけません。己の経験,感覚で微調整しながら進めます。修理することで過去の職人の技術がわかるように,いずれまた修理が行われる時には自分の仕事が見られます。そこに恥じない仕事をするだけです」。

国宝だからと構えることなく対峙する仕事すべてに精魂を尽くす職人の気概を感じた。

写真:沼澤修一さん

新たに造られた鬼瓦

人々と建物を災厄から守るために,寺社の屋根でにらみをきかせる鬼瓦。鬼瓦は,魔除けと装飾を目的とした瓦の一つだ。口の開いた阿形(あぎょう)と閉じた吽形(うんぎょう)が対となり,魔物から寺を守ってきた。

今回,風化により傷みが激しくなっていた吽形が,奈良の鬼師の手により新たに造られた。2人の人物が呼吸を合わせて行動を共にする様を表す「阿吽の呼吸」の語源だ。

写真:阿形(あぎょう)

阿形(あぎょう)

写真:吽形(うんぎょう)

吽形(うんぎょう)

ホーム > KAJIMAダイジェスト > March 2017:特集「よみがえる国宝 瑞巌寺」 > 屋根葺き替え

ページのトップへ戻る

ページの先頭へ