特集:完成した西武ドーム

コンセプト1.
環境共生型ドーム−光・風・緑を感じて−

 西武ドームは,映画「トトロの森」の舞台にもなった自然豊かな狭山丘陵の中にある。人工的なドーム球場であっても周辺の豊かな自然と協調したい,それが西武ドームのコンセプトだ。

 これまで日本に4か所あるドーム球場はいずれも新築。様々な設備を備えた都市型施設として付加価値を高めている。西武ドームはシンプルな構造で,周辺に及ぼす影響を最小限にし,豊かな自然にとけ込むことを最大のコンセプトに掲げている。


自然にとけ込むドーム
周辺の豊かな自然にとけ込む西武ドーム



●開放感−木陰の心地よさ

 西武ドームでは,既存球場に完全にふたをしてしまうのではなく,球場全体にふわっとパラソルを架けるように,屋根が架けられた。大きな屋根は24本のV字型柱に支えられており,壁が設けられていない。ドーム内には自然の風が吹き抜け,春には桜吹雪も舞い込む。『屋内屋外中間型ドーム』は明るく開放的な空間と,木陰の心地よさを実現した。
 ドーム内からは周辺の豊かな緑が望め,四季折々の自然の変化を感じることができる。まさに「アウトドア感覚の爽快ドーム」の誕生だ。

 


空撮
遠くに富士山を望む(4月8日空撮)



●省エネルギー

 自然のエネルギーをできるだけ取り入れている点もこれまでのドーム球場と違うところである。このドームには空調設備が設けられていない。全周をフルオープンにすることで,通気性を高め,省エネルギーに寄与している。また,天井の膜は一重のテフロン性で自然光を採り入れた明るい空間を提供,照明設備も少なくてすむ。結果ランニングコストの大幅な低減につながっている。

 


全周フルオープン
ドームの周辺には壁が設けられていない



●スポーツの原点としての空間

 野球という野外のスポーツの面影を残しつつ,かつ天候に左右されずに観戦が楽しめる,全く新しい空間が誕生した。屋根が架かったことで野球以外のスポーツやイベントなども開催可能となった。ランニングコストがほとんどかからないため,一般の利用者も安く利用できるという。誰もが気軽に利用できる「スポーツの原点としての空間」が実現したのだ。




|コンセプト1.環境共生型ドーム
コンセプト2.後付けドーム
様々な制約との闘い−工事の記録
後付けドーム−今後の展開