現場から: 都心の摩天楼を築く
NTT DoCoMo 代々木ビル


 大型の商業施設やオフィスビルが次々と完成し,大規模な開発が進む新宿駅南口。この一角にペンシル型の超高層ビルが出現した。現在,当社が施工中の「NTT DoCoMo 代々木ビル」である。このビルは,ニューヨークの摩天楼を思わせるようなシンボリックな形で話題を呼んでいる。今月は,竣工を9月に控えたこの摩天楼の現場を紹介する。



地図

●ペンシル型のひみつ

 このビルの大きな特徴は,形がペンシル型ということ。ビルの上部に段差があるのは,各地域で建設中のドコモビルとの通信電波を送受信するパラボラ式のアンテナ十数基を乗せるためである。階段状の部分は鉄骨の躯体に外壁があるだけで,最上段の高さは地上から約240m。その上に高さ約32mの本設メンテナンス用クレーンが設置される。このクレーンは竣工後,必要に応じて段上のアンテナの位置を調整する時に使われる。

西側(左)と南側(右)から見る完成模型
西側(左)と南側(右)から見る完成模型

●クレーンの高さは日本一

 通常ビルの建設では,出来上がったフロアを足場にして伸びるフロアクライミングクレーンが使用されている。しかし,このビルでは高さ約148m以上から段差が付くため,上段に行くほど狭くなりフロアクライミングクレーンを設置することができない。そこで導入されたのが,地上から伸びるクライミングクレーンである。運転台は地上約200m。日本一の高さである。最上段で作業をする場合,地上からエレベータで27階まで上り,そこから先は2〜3人乗りのリフトを使う。しかしこのリフトができたのは今年3月始め。それまで作業員は,24階分に相当する階段を毎日上ったそうだ。

ビルの最上段にて本設クレーンの設置を準備中
ビルの最上段にて本設クレーンの設置を準備中

●景観と環境に配慮して

 このビルは,都内で最も高い都庁第一本庁舎(約243m)より約3m低い。新宿ビル群より少し南に外れたところにあり,都心の各所からその姿を楽しむことができる。またこのビルには,都心の景観や環境に配慮した工夫が施されている。ビルの壁面は東西と南北で対になっており,南側には当社が開発した太陽電池外壁材が設置されている。一方,東西の壁面は濃淡のある窓ガラスの組合せによって,ペンシル型のビルのシルエットを浮かび上がらせている。また階段状の下部から鍵型の柵が東面に4本,西面に5本張り出しているが,これは指輪の台座をイメージしたものだという。



●所長は都心の現場のベテラン

添田康彦所長
添田康彦所長
   この現場の作業員は現在平均で約350人。これをまとめているのが添田所長である。所長は東京生まれの東京育ち。入社して今まで37年間,その殆どを都内の現場で過ごした。最近では,都庁第二本庁舎やJR東日本本社ビルの工事なども経験し,新宿の現場は今年で10年になる。ここ近年における目覚ましい新宿の発展を見守ってきた所長である。「私が小さい頃は新宿駅はまだ木造でしたよ」とにこやかに話してくれた。「これだけの大きなプロジェクトに関われる喜びをいつも感じています。その気持ちは若い社員達も常に忘れないでほしいですね」。



現在,現場は最上部の本設クレーンの取付けを終え,内部の仕上げや外溝を工事中,今年9月の竣工に向け佳境に入っている。ビルの竣工後は,夜のライトアップが夏と冬で楽しめるそうだ。21世紀の情報化社会への先駆けとして,都心の摩天楼がいよいよこの秋誕生する。

南東方向より望む(今年2月初旬撮影)
南東方向より望む(今年2月初旬撮影)。
最上部の本設クレーンを吊上中。
地上からクライミングクレーンが伸びている


(仮称)代々木RCビル新築工事
<工事概要>
場所 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-10他
事業主 エヌ・ティ・ティ・ドコモ
建築主 レールシティ東開発
設計・監理 エヌ・ティ・ティファシリティーズ一級建築士事務所
規模 S造一部SRC造・RC造 地下3階,地上27階,塔屋1階 延べ52,432m2