特集:高速道路トンネルを地下鉄直下に建設する

Chapter 2 軌跡
阪神高速道路長田交差部工事では,鉄道函体を支えるための仮設工事に多くの時間を費やしてきた。
現在ではその工事を終え,高速道路のボックスカルバート建設が本格化している。
9年をかけて行ってきた工事を振り返り,今後の工事についても紹介する。
第1ステップ第1ステップ (1999年〜2002年)
 現場周辺の地盤は地下水を多く含む砂礫と粘土の互層。このため地中50mまで達する連続壁を工事区域の外周に築くことから始めた。
 地上から鋼製杭(中間杭)を打設し,これを支えに路面に覆工板をかける。覆工板の下で下水道,電気,電話線などの埋設物を防護しながら土砂を掘削する。鉄道函体の側部が露出してくると,地震時に函体自体が横振れする可能性があるため,横振れ防止材を函体側部に設置し,函体底部まで掘り下げた。
第2ステップ第2ステップ (2002年〜2004年)
 鉄道函体直下の土砂を残したまま周囲を掘り下げる。露出した函体直下の法面より,函体直下の地山に薬液を注入し地盤を安定させた。その後,この法面より函体直下に向けて小さな横穴(導坑)を6m間隔で掘削した。導坑は計22ヵ所設けた。
第3ステップ第3ステップ (2004年〜2005年)
 導坑の中で鋼管杭を施工する。狭い導坑内に入るよう改造した杭打機を用いて所定の位置で削孔を行い,鋼管杭を挿入する。鋼管杭は1つの導坑内に3〜5本設置した。それぞれの頂部には油圧ジャッキを据え付け,鉄道函体の沈下や浮きの制御を開始した。
第4ステップ第4ステップ (2005年〜2008年)
鉄道函体を油圧ジャッキで支えたまま,その下部の土砂を必要な深さまで掘り下げ,コンクリート製のボックスカルバートを構築していく。(2008年3月完成予定)
第5ステップ第5ステップ (2008年〜2013年)
 鉄道函体と完成したボックスカルバートとの間にコンクリート台座を設置,油圧ジャッキを盛替え,制御しながら鉄道函体をボックスカルバートに載せ替える。その後,コンクリートにより間詰を行い一体化をはかる。ボックスカルバート内の空間に突き出た鋼管杭は,完成時に交通の障害となるため撤去する。
 埋め戻し,道路を元の状態に復旧させると工事は完成する。
平面図
施工イメージ図
第2ステップ:鉄道函体直下の地山への薬液注入。写真右側の法面に管を挿入して行う。函体の下の地盤が安定するよう法面は勾配を持たせて整形し,吹付けコンクリートで表面を保護している
第2ステップ:鉄道函体直下に導坑を掘削する。高さ3.5m,幅3mで,小型のバックホウを用いて掘削した後,周囲にH鋼の支保工を設置して内部を安定させた 第3ステップ:導坑内において杭打機により杭穴を削孔し,配管を通じて土砂を場外に排出した 第3ステップ:杭穴の中に長さ2mの鋼管を11〜13本,順次つなぎ合わせながら建て込んだ。鋼管の継ぎ目は自動溶接機により接合した
第3ステップ:鋼管杭の上に油圧ジャッキを設置。隣接する杭同士を写真手前のH鋼でつないで固定する 第4ステップ:導坑周囲の土砂を掘削。鋼管杭の上に露出しているのが鉄道函体の底部 第4ステップ:最終深度まで掘削が完了
工事概要
大道工区交差部開削トンネル工事/発注者:阪神高速道路
神戸高速鉄道交差部開削トンネル工事/発注者:神戸高速鉄道
設計:中央復建コンサルタンツ/場所:神戸市長田区大道通1丁目〜3丁目/規模:掘削深さ24.4m〜31.5m 路面覆工7,240m2 掘削工131,400m3 仮受工122m 仮受杭96本 本体コンクリート工21,700m3 鉄道函体支持コンクリート10,500m3 鉄筋工3,200t/契約工期:1998年7月〜2008年3月(関西支店JV施工)

 Chapter 1 概要
 Chapter 2 軌跡
 Chapter 3 現況
 column   都市部の地下構造物建設で活躍する・・・・・・アンダーピニング工法