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SITE Report 大間原子力発電所新設工事

現在,日本の総発電電力量の約3割を占め,電力の安定供給に貢献する原子力発電。
将来にわたり安定的にエネルギーを供給するため,大間原子力発電所では,使用済み燃料をリサイクルして作った
MOX燃料を原子炉の全炉心で用いる国内初めてのフルMOX炉の建設が進められている。
津軽海峡に臨む,まだ春浅い大間の建設現場を訪ねた。

大間原子力発電所新設工事の写真

地図

工事概要

大間原子力発電所新設工事
原子炉建屋・コントロール建屋新築工事/
サービス建屋新築工事

場所:
青森県大間町
発注者:
電源開発
設計:
開発設計コンサルタント,東電設計,当社
規模:
原子炉建屋—RC造一部S・SRC造
B3F,4F 延べ23,529m2
コントロール建屋—RC造一部S・SRC造
B1F,2F 延べ5,028m2
サービス建屋—RC造 B1F,3F 延べ7,417m2
工期:
2006年12月~2014年10月
(東北支店JV施工)

本州最北端での最先端発電所建設

本州最北端の下北半島に位置する青森県大間町は,人口約6,000人のマグロ一本釣りで知られる漁師町で,町の中心から車で5分ほどの奥戸(おこっぺ)地区に大間原子力発電所のサイトはある。冬期は寒さと降雪に加えて強風が吹くという,施工上の困難が予想される厳しい気象条件である。

現在建設中の同発電所は,電源開発(J-POWER)が1976年から建設計画を進めてきたもので,導入する原子炉型式は「改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)」。電気出力138.3万kWで,国内最大級となる。また, MOX燃料を用いる発電所として運転開始を予定し,将来的には全ての炉心でMOX燃料を使うことができる国内初のフルMOX-ABWRとする計画で,電力の安定供給と資源の有効利用に大きな役割を果すものとして期待されている。

原子炉建屋の建設手順イメージ

安全・安心を築く施工技術

当社JVは,発電所の主要5建屋のうち原子炉建屋・コントロール建屋・サービス建屋の3棟の施工を担当している。サービス建屋(放射線管理や作業員出入り管理を行う),コントロール建屋(発電所の運転制御を行う中央制御室など)に続き,2009年11月より原子炉建屋工事に着工し,現在はすべての工事が進んでいる。

取材に訪れた3月下旬は,冬期中約3ヵ月休止していた原子炉建屋工事が再開した直後で,ちょうど建屋基礎部分の中央マットモジュールの配筋作業が始まっていた。鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)のベースとなる重要部位である。基礎マット部分の厚さ5.5m,使用する鉄筋総量約4,000t,コンクリート打設総量はミキサー車約4,000台分の約2万m3に及ぶ。「安心」を築く圧倒的な物量だ。配筋から打設までには約4ヵ月を要するという。

これまで当社が担当した全国の原子力発電所建設工事では,安全性向上と高品質化および工期短縮を目的に先進的な工法を開発し,改良を重ねてきた。大間でもこれらの工法を積極的に採用している。また,プラントメーカー(日立GEニュークリア・エナジー)との綿密な事前調整により,建物と機器・配管の据付工事を併行して進めている。

原子炉建屋基礎マット下部の配筋工事。鉄筋総量は約4,000tの写真

原子炉建屋基礎マット下部の配筋工事。
鉄筋総量は約4,000t

サービス建屋(手前)・コントロール建屋(奥)。後ろは津軽海峡の写真

サービス建屋(手前)・コントロール建屋(奥)。
後ろは津軽海峡

人と技術の集大成

工事を担当する渡邊清勝所長は,約 30年間絶えず原子力発電所建設に携わってきたエキスパートだ。東京電力柏崎刈羽1・2・6号機,北陸電力志賀1・2号機などを手がけ,6ヵ所目の大間原子力発電所は集大成の現場となる。

「大間は遠隔地にあり,現場への作業員の出入りが大変である。そこで,各地の原子力工事で経験豊富な協力会社の精鋭を集め,いかに効率的に仕事をまとめ,お客様の所定工期に納めるかを考えています」。本社技術部門はじめ,全天候型建設工法のカジマメカトロエンジニアリングなどのグループ会社協力のもと,オール鹿島で取り組む。

社員には施工関連資格の取得を奨励し,協力会社の作業員には講習を行い,メンバー固定化の中でレベルアップを図っている。さらに,発注者のご指導でプラントメーカーとも協調して,様々な地域貢献で地元への融和も図っている。

「施工技術はどんどん進歩しています。その一方で,ヒューマンエラーをなくすためにどう工夫していくか。現場の運営をいかにシンプルにするかを心がけています。原子力建設の経験をできるのは『ここしかない』という思いから,この機会に次世代への技術継承をどうするかという視点で,現場での人材育成も大切と考えます」と,2014年11月の運転開始予定に向けて,渡邊所長の原子力の未来への思いは熱い。

渡邊清勝所長を囲んで現場の皆さんの集合写真

渡邊清勝所長を囲んで現場の皆さんの集合写真

渡邊清勝所長の写真

渡邊清勝所長

改ページ

New Technology in OHMA

大型旋回式クレーン*による大型モジュール工法

作業環境の良い工場や現地の組立作業エリアで,機器・構造物について鉄筋・鉄骨と配管・アンカーボルトなどを一体化してある程度組み立てる(モジュール化)。この大型モジュールを大型旋回式クレーンで現場に据え付ける。

これにより作業性を高め,先行組立てによる工期短縮に加え,施工精度の品質管理と工事の安全性の向上を図り,建設工事を確実に進めていく。

大間では,中央マットモジュールのほかに,トップスラブモジュール,屋根トラスモジュールを計画している。

*大型旋回式クレーン
吊上荷重:1,000t(クレーン設置届)
最大作業半径:主巻120m,補巻150m
大型クローラ・クレーンと比べ,稼動スピードが速く,かつ,クレーンの基礎の範囲がコンパクトで,ヤードを有効活用できる

左:大型旋回式クレーン(機器所掌)。クレーン基礎架台上をクレーン駆動装置の車輪が作動して軽快に旋回する、右上:中央マットモジュール、右下:原子炉建屋の断面イメージの写真など

左:大型旋回式クレーン(機器所掌)。
クレーン基礎架台上をクレーン駆動装置の車輪が作動して軽快に旋回する
右上:中央マットモジュール
右下:原子炉建屋の断面イメージ

鋼板コンクリート(SC)構造

SC構造は,従来の鉄筋コンクリート(RC)構造の「鉄筋と型枠」を「鋼板」に置き換えた構造で,特徴は以下の通り。

●現場作業を大幅に省力化
●SC床構造の鋼板パネルに機器側の機器支持金物をあらかじめ取り付けて吊り込むモジュール工法を採用可能
●型枠などの建設中に発生する廃棄物を削減

原子炉建屋床でS梁と合わせたSC構造(SSC工法)を初めて採用し,鉄筋工事量を減らすことにより,建設工事を効率的に進める。

鋼板コンクリート(SC)構造の図

全天候型建設工法

冬期の平均風速6m/s以上・平均気温0℃以下(12月〜3月)という厳しい自然条件の中で建設工事を円滑に進めるため,鉄骨柱を組み上げて養生屋根や外壁養生膜で原子炉建屋の工事現場を覆う工法。内部には搬送用の仮設天井クレーンやモノレールなどを配置して工場化することで,天候に左右されず計画的に作業を進められる。なお,原子炉格納容器などの大型機器の搬入時には,可動式の養生屋根を開放する。

全天候型建設工法の図

interview コラボレーションでつくるエネルギー開発のパイオニア

大間原子力発電所は,当社が30余年にわたり計画を進めてきたプロジェクトです。私も入社2年目の1983年から耐震設計を担当。当時は新型転換炉(ATR)実証炉の実現に向けて,鹿島さんの協力も得ながら設計しました。一旦担当を離れましたが,1995年に原子炉型式がATRからABWRに変更となった頃に,大間の担当に戻りました。工事計画認可や建築確認の申請では,鹿島さんに解析などいろいろと協力してもらい,無事に認可が下りたと思います。帰任から十余年でようやく当社初の原子力発電所を着工することができました。

当社には,これまで水力・火力・送変電の開発でも常に新しい技術を採用していくパイオニア精神がありました。大間の原子力においても,世界で初めてのフルMOXのABWRで,原子燃料サイクルの一翼を担い,エネルギーの安定供給,CO2削減社会への貢献をめざしています。そのためにも,施工者・プラントメーカーとのチームワークを生かし,当建設所で定めたスローガン「安全確保を最優先に,地域から信頼されるフルMOX発電所の建設を」に沿って, 安全第一に長く運転できるいいものを作り上げたいと考えます。全国の原子力発電所建設に携わってきた鹿島さんの実績・ノウハウに期待しています。

電源開発 大間現地本部 大間原子力建設所 所長代理野口清隆さんの写真

電源開発 大間現地本部
大間原子力建設所 所長代理
野口清隆さん

なるほど!原子力

MOX燃料(Mixed Oxide Fuel)

ウラン燃料は,天然ウラン(99%以上がウラン238)中にわずかに含まれる燃えやすいウラン(ウラン235)を濃縮して作る。これに対しMOX燃料は,原子炉の使用済燃料を再処理して回収したプルトニウムを,燃えにくいウラン(ウラン238)と混ぜ合わせて作る。このMOX燃料の使用により,原子燃料サイクルで限りある貴重な資源を有効利用することができる。

原子炉(軽水炉)における燃料の混合比率の図

原子炉(軽水炉)における燃料の混合比率

interview 技と心 あうんの呼吸のパートナーとして

これまで東京電力福島第二2号機,中部電力浜岡3・4・5号機の建設および,定期検査の浜岡総括事務所長もやり,原子力に関して様々な経験を積んできました。鹿島さんとは長いお付合いをさせていただいております。今回の大間原子力は,電源開発さんの意気込み・熱意がひしひしと伝わり,後世に残るプロジェクトとして所長を担っています。

岩盤検査から燃料装荷まで60ヵ月の施工期間ですが,冬期影響などを考慮すると実質50ヵ月の厳しい工程で,実施に当たっては建物施工とプラント施工で工程管理相互の綿密な調整が必要となりました。特に,工事が分割発注され,工区ごとに区切られている狭いヤードを有効に活用するために,時間を区切って細かく管理しています。鹿島さんと一緒に工程を検討し,60ヵ月の日割り工程を作成して,後工程を細かく見えるようにしました。

今回,お互いの現場事務所を廊下で繋ぎ,上履きのまま行き来でき,コミュニケーションが良くなりました。建設準備の中で工事ヤードの取合いなどを譲り合いながらあうんの呼吸で細かく調整できたのも,長年やってきた成果といえるのではないでしょうか。

日立GEニュークリア・エナジー 大間建設所 所長宮原 積さんの写真

日立GEニュークリア・ エナジー
大間建設所 所長
宮原 積さん

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