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当社技術研究所西調布実験場に,新型振動台『W-DECKER(ダブルデッカー)』が導入されました。
名前の由来は,2層のデッキ(振動台)で多様な地震の揺れを再現するところから。
高性能3次元振動台の特徴について,技術研究所の開発担当者に教えてもらいましょう。

鹿島の振動台の歴史

揺れを再現する「振動台」は,地震対策技術の開発や建物の耐震性を検証するうえで,欠かせない実験装置です。当社では,1975年に技術研究所飛田給研究センターに2次元振動台(水平1方向・上下振動)を導入し,1990年には3次元振動台(水平2方向・上下振動/西調布実験場設置)への更新を行い,安全・安心な社会実現に貢献する研究開発に積極的に取り組んできました。

振動台の活用で,世界初のアクティブ制震『AMDシステム』が誕生しました(1989年)。また,『ハニカムダンパ』(1991年)や『HiDAX(ハイダックス)』(2001年)など,当社を代表する地震対策技術には,振動台で培ったノウハウ・技術が活かされています。

新振動台設置の背景

近年,振動台の性能を超えるような大速度・大変位の地震動が数多く観測されるようになりました。また,「長周期地震動」と呼ばれる,ゆっくりとした揺れが非常に長く続く地震の波形が注目されるようになり,超高層ビルの上層階で大きな揺れを引き起こす原因として検証ニーズが高まっています。

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こうした地震に関する環境変化を背景に,進化・高度化する社会や顧客からのニーズに的確に対応するために,当社では2006年より新振動台導入計画に着手し,2008年からリニューアル工事を進めてきました。そして昨年10月,新振動台『W-DECKER』が完成しました。地震の揺れを再現する従来機能をよりスケールアップさせ,さらに長周期地震動がもたらす超高層ビルの揺れを再現する機能を加えた次世代振動台です。

写真:『W-DECKER』(長周期振動台を設置した状態)

『W-DECKER』(長周期振動台を設置した状態)

高性能3次元振動台『W-DECKER』

『W-DECKER』の最大の特徴は,ユニークなシステム構成にあります。地震動を再現する「主振動台」と,長周期構造物の揺れの応答を再現する「長周期振動台」を2段重ねとし,「地面」と「建物」という異なる揺れを限られたスペースの中で効率よく再現することに成功しました。この方式を本格的に導入して長周期地震動を再現するのは,世界初となります。

『W-DECKER』の主な性能と仕様

表:『W-DECKER』の主な性能と仕様

「主振動台」の大きさは5m×7m。60tの試験体を載せた状態で,水平2方向および上下方向に最大2,000ガル(重力加速度の約2倍)の加速度を与えることができます。新振動台では,速度と変位の再現性能を重点的に引き上げており,水平方向については,速度2m/秒,変位±0.7mまでの地震動の再現を可能にしました。国内観測史上最大規模となった東北地方太平洋沖地震における主要な強震記録の再現も可能な,国内トップクラスの性能となっています。

一方,主振動台の上に重ねて使用する着脱式の「長周期振動台」は,2m×2mのデッキが水平2方向に±2m移動します。主振動台と連動させて使用することも可能で,その場合は最大で2.7mの変位が再現できます。これは2方向振動台としては世界最大の変位値となります。

今後,当社は『W-DECKER』を活用し,耐震・免震・制震をはじめとする地震関連技術の研究開発へ積極的に取り組んでいくとともに,顧客の取扱商品に関する耐震性評価サービス(委託業務)や広報活動などにも幅広く対応していきます。東北地方太平洋沖地震に関する調査・分析などについても,様々なかたちで貢献していきたいと考えています。

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図:振動台実験システムの全体構成

開発担当者から――

技術研究所内に振動台更新を検討するワーキンググループが立ち上げられたのは,2006年8月のことです。研究開発上の課題を出し合い,関係部署へのアンケートも実施して,次世代振動台に求めるニーズを把握し,多機能で高性能な振動台の実現を目指しました。また,旧振動台の浮き基礎を改修して再利用するなど,コスト面にも工夫を凝らしています。ようやく完成した新振動台をマスコミに公表したのは本年1月。新聞のみならずテレビでも紹介されました。

それからわずか2ヵ月後,東日本大震災がおきました。尊い命と財産を一挙に奪い去っていった自然の猛威には,只々言葉を失うばかりです。それでも,私たちは国難とも言うべきこの大災害を克服していかなければなりません。この巨大地震と同じ年に生を受けた『W−DECKER』にできることは限られているかもしれませんが,希望溢れる未来に向けて少しでも貢献できればと強く思います。

写真:左から技術研究所・田上淳上席研究員,小池誠主任研究員,鈴木紀雄副所長,引田真規子研究員,高岡栄治主任研究員(現・建築管理本部課長),金子貴司研究員,永井和彦主任研究員,井上貴之主任研究員

左から技術研究所・田上淳上席研究員,小池誠主任研究員,鈴木紀雄副所長,引田真規子研究員,高岡栄治主任研究員(現・建築管理本部課長),金子貴司研究員,永井和彦主任研究員,井上貴之主任研究員

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