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Message 「KTMS-2017」始動にあたって 建築管理本部長  小泉博義 副社長

写真:建築管理本部長  小泉博義 副社長

当社の建築工事における統一管理手法である「建築工事 Total Management System(KTMS)」を策定したのは今から15年前,2002年のことです。当時,ISO9001・ISO14001による品質や環境活動をマネジメントする仕組みが定着していましたが,支店毎に取得していたことから,全社的な共通言語となるマネジメントシステムが必要となり,プロジェクト運営の軸となる「KTMS」を策定しました。

それから15年が経ち,私たちを取り巻く環境は大きく変化しました。現在,2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え,旺盛な建設需要を背景に,設計・施工や特命比率が増加し,大規模かつ高度なプロジェクトへの対応が求められています。一方で,技能労働者の高齢化,次世代の担い手確保のための社会保険加入促進や重層下請構造の改善など,働く人々の処遇改善といった,建設業が抱える構造的な課題にも対峙していかなくてはなりません。当社は2015年度にスタートした中期経営計画の事業戦略の一つに「単体建設事業の再生・強化」を掲げ,この環境を乗り越えられる強い組織づくりを推し進めています。2015,16年度を構造改善期間と位置づけ,これまで様々な準備をしてきました。その一環として,同計画の具体的な実施項目をKTMSに組み込んだのが「KTMS-2017」です。

目的は,業務品質と生産性の向上を図り,協力会社を含めた“働き方改革”を実現することです。目的達成のため「業務標準見直し」「ICTツールの活用」「労務3割削減」という3つの施策を連携させながら進めていきます。

「業務標準見直し」では,プロジェクトの早期段階からリスクを抽出し,組織全体で現場を支援する仕組みを構築していきます。着工時に現場社員の憂いを払拭し“ものづくり”に集中できる体制を目指します。それにより,現場での意思決定を早め,協力会社とのより良い協働を促し,確実な施工体制の確立につながるのです。

「ICTツールの活用」では,現場運営の効率化を図るため,全建築現場に標準ツールを展開します。ツールというのは,使うことを強制されるものではなく,そのツールが無くては仕事にならないというものでなければなりません。今回展開するツールは,既に多くの現場で実績があり,協力会社と共に実務での利用を通してスパイラルアップしてきました。さらに活用の幅を広げ,より効率的な現場運営を実現していきます。BIMを例にとれば,関係者間の合意形成や仮設計画の検証など,計画段階で多く活用されていますが,グループ会社とも連携して施工図や製作図を作成する仕組みを構築することで,さらに有益なツールとなります。また,建物管理などアフターサービス分野での活用も積極化させます。

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標準ツールを全現場に展開する意義は,もう一つあります。共通のツールを利用して蓄積される情報は,同じ条件でデータベースに納められ,相関関係や因果関係も明確になります。そうなれば,ビッグデータ分析などを行い,工種毎に不足する技能労働者などを予測して,事前に対応策を講じることもできます。将来的にはAI(人工知能)を活用し,誰もが概算見積や適性工期の算出ができるようになると考えています。ツールの標準化は, 経営資源としての“情報”を生み出すのです。

建設業では,今後10年ほどで約128万人の技能労働者が離職するといわれています。当社では「労務3割削減」を目標に,現場作業の総量削減,機械化やロボット化など様々な生産性向上に向けた活動により,現場の省力化に取り組んでいます。これは,建設業の課題である長時間労働を解消するためにも重要です。また,将来的に考えているのは,当社が保有する生産性を向上させる技術に合わせた設計をしていくということです。海外では,自社技術に合せて設計変更を行う事例が多く見られます。こうしたアプローチも実践していきます。

新たなマネジメントシステムが動きだします。これからプロジェクトを運営するための基軸であり,マニュアルです。マニュアルというのは楽譜のようなもので,各人が演奏してこそ意味があるものになります。この楽譜を弾きこなせば,来るべき繁忙期を乗り切ることができると確信しています。そして「KTMS-2017」の目的のひとつである協力会社を含めた“働き方改革”を共に実現していきましょう。

※BIM:Building Information Modeling

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