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KTMS-2017 現場ルポ……② 徹底的な業務分析とアンケート調査による「働き方改革」

「首都圏の超大型再開発現場で,長時間労働を解消するには,ICTにすがるしかない」と,斉藤所長は着工当時の思いを振り返った。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を積極的に導入し,所内のコミュニケーションを活性化させた。1日1,000人以上が働く大規模現場では,全体朝礼を行うスペースの確保が難しい上,早出をして作業をしている職人は途中で作業を止めることになる。朝礼内容は前日にiPadで録画して,朝から詰所などで動画を流す。作業員は休憩時間などに連絡事項を確認している。しかし現場は,刻々と状況が変わる。即座に,伝えたいことを伝達するためにSNSを導入した。写真や動画を添付して整理整頓の依頼やトラブル対応などの連絡が適宜入る。所員60名,職長110名,計170名ものコミュニケーションの場を創出した。「これまで各担当の社員から職長へ連絡する組織でした。SNSというツールで複数の関係者へ同時に情報が伝わる,組織のフラット化を実現したのです」。職長会など必要に応じてグループも設定している。模範となる行動には,斉藤所長が“いいね”をクリックし,安全表彰などにも活用する。

所員を対象とした徹底的な業務分析とアンケートも実施し,効率的な働き方を追求している。iPadは所員全員へ配布した。「ICTツールはクラウドコンピューティングが前提。“現場で使える人とそうでない人がいるのはおかしい”との意見があり踏み切りました。結果として各ツールは活発に利用されています」。

また現場と事務所は徒歩10分以上かかり,1日あたり5往復以上する社員もいた。100分以上も生産性につながらない時間があったことから,現場内に事務所と同じ環境で仕事ができるサテライトオフィスを整備。昼は現場を見て,残業時間に書類作成などをするという習慣にも変化が見られ,長時間労働を解消するヒントも見えてきた。「多くの人が関わって成り立っている仕事を,どうすれば理想像になるかを描いてからICTを活用することが肝要。万事にICTが関わっている時代,ICTの利用を目的にするのではなく,仕事の本質を見つめてこそ“働き方改革”は実現できるのです」。

写真:東京建築支店 日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業(C・D街区)新築工事事務所 斉藤栄一 所長

東京建築支店
日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業(C・D街区)
新築工事事務所 斉藤栄一 所長

写真:iPadでの朝礼映像の撮影

iPadでの朝礼映像の撮影

写真:サテライトオフィス。セキュリティ確保のため設置しているカメラの画像

サテライトオフィス。セキュリティ確保のため設置しているカメラの画像

改ページ

工事概要

日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業(C・D街区)新築工事

場所:
東京都中央区
発注者:
日本橋二丁目地区市街地再開発組合
設計:
日本橋二丁目再開発事業 日本設計・プランテック設計共同企業体
用途:
オフィス,商業施設など
規模:
S造一部SRC造 B5,32F 総延べ148,059m2
工期:
2014年12月~2018年6月

(東京建築支店施工)

Column 活躍する建築IT推進者

全国の支店では,建築系と数理系の社員がペアとなり,建築IT推進者としてICTツールの導入や活用支援を実施している。東京建築支店の建築IT推進者である建築工事管理部生産推進サポートグループの佐藤美郷さん(建築系)と天沼徹太郎さん(数理系)は,働き方改革へ向けて一歩先へと踏み出している。この現場の業務分析とアンケートも2人が中心となり進めた。10人の社員に丸2日,それぞれが密着して誰がいつ何をしているのかを分析をする。佐藤さんは現場経験を活かして施工管理業務を主眼とし,天沼さんは製造業などで行われる業務分析手法からアプローチした。異なる2つの視点が,複雑に絡み合う業務フローと業務分担を浮き上がらせた。現状の業務が“見える化”できたことで,解決策も見えてくる。ICTによるソリューションだけでなく,重複作業の集約や合理的な時間の使い方などを提案した。「この取組みはスタートを切ったばかり。今後も試行錯誤を繰り返して進化させたい」。若手2人の思いが,働き方の意識改革を促していく。

写真:天沼徹太郎さん(左)と佐藤美郷さん

天沼徹太郎さん(左)と佐藤美郷さん

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