話題の竣工プロジェクト:

東京にトルコモスク誕生
東京ジャーミイ
 東京・渋谷の住宅街に今年6月,日本最大のモスク(正式名称:東京ジャーミイ)が完成した。ここにはロシア革命でロシアより亡命してきたトルコ人が中心となって1938年に建てられた初代モスクがあった。しかし老朽化のために86年に取り壊され,再建が待望されていた。そして94年に今回の再建計画が開始され,2年前に着工したのである。
 モスクとはイスラム教徒の礼拝堂のこと。トルコの各都市には数多くのモスクがあり,それらはジャーミイと呼ばれている。毎週金曜の正午に集団礼拝がモスクで行われ,メッカの方向を示す象徴的な壁の窪みミフラーブに向かって祈りが捧げられる。そして,イマーム(導師)がミンバルという階段に昇り,説教が行われる。
 トルコのモスク文化の最盛期は,建築家ミマール・シナンが活躍した16〜17世紀のオスマントルコ時代であった。東京ジャーミイは,このミマール・シナンの様式を規範としている。高さ約41mのミナレット(尖塔)や円形ドームが特徴的で,メインドームの大きさは高さ約23m,直径約10m。その他に形の異なる5種類のドームがある。
 中に入ると,ドームの天井がたいへん美しい。大理石仕上げの壁や柱の白さと,いたるところに印された色鮮やかなカリグラフィー(装飾文字)がとても映えている。それらの文字はすべてコーランの一説を記している。プラスター(石膏)ウインドーといわれる窓のステンドグラスから降り注ぐ光がモスクの中を優しく包む。一面に敷き詰められた群青の絨毯に座り,コーランを唱える信者の姿もあった。




メインドーム
メインドームは天蓋を表し,周囲の半ドームや内壁とともに宇宙を表現している

プラスターウインドー
メッカの方向に設けられたプラスターウインドーは,カリグラフィー(装飾文字)によりコーランの一節が施されている

モスク内部(入口部分)
モスク内部(入口部分)

ミナレット(尖塔)
右側の高い塔がミナレット(尖塔)。
モスクの目印となり,かつてはここから礼拝の呼びかけが行われていた

 東京ジャーミイは,トルコの建築家ムハッレム・ヒリミ・シェナルプ氏が基本設計を,当社がその協力と実施設計を担当した。工事では,当社が躯体工事・設備工事を主に行うとともに,プロジェクト全体の総合的なコーディネーションを担った。建物の大きな特徴であるドームの施工では,効率化を図るため鉄筋・型枠工事が同時にできるトラスウォール工法を当社が提案し,採用された。トラスウォール型枠メッシュ(型枠用のネット)を用いるこの方法により,型枠支保工の削減・鉄筋加工組立のユニット化を図り,安全で効率良く作業を行った。
 内外部の主な仕上げ工事はトルコの伝統職人の手によるもの。この工事のために,トルコから壁の装飾・石膏の装飾(ムカルナス)・木製の装飾・シャンデリア・プラスターウインドーなど,それぞれを専門とする職人たち約70人が来日し,装飾の材料もすべてトルコから運ばれてきた。

 このようにトルコと日本が協力し合って完成させた東京ジャーミイは,在住するイスラム教徒の拠りどころでもあり,イスラム文化の交流の場として,これから多くの人々に親しまれることを期待したい。

イスラム教徒の人々
毎週金曜に行われる集団礼拝にて。イマーム(導師)の説教を聴くイスラム教徒の人々。写 真中央がミフラーブ

メインドームにトラスウォール型枠メッシュ(型枠用のネット)を取付け中 装飾塗装の様子
メインドームにトラスウォール型枠メッシュ(型枠用のネット)を取付け中   装飾塗装の様子。アクリル系の水性塗料で色分けする
     
メインドームのコンクリート打設   カリグラフィー(装飾文字)の金箔貼りの様子
メインドームのコンクリート打設。トラスウォール型枠メッシュの接合部からコンクリートを打設する   カリグラフィー(装飾文字)の金箔貼りの様子

INFORMATION


場  所 : 東京都渋谷区大山町1―16
公開時間 : 午前10時〜午後6時。原則的に毎日一般公開している
TEL : 03―5790―0760
※礼拝堂での服装 なるべく長めの袖で,足首まで隠れる服を着用。特に女性はスカーフで髪を隠すこと
http://members.tripod.co.jp/yokogurer/camii.htm

地図
小田急小田原線代々木上原駅から徒歩3分位。井ノ頭通り沿いにある
小田急小田原線代々木上原駅から徒歩3分位。井ノ頭通り沿いにある