特集:鹿島がつくる海外インフラ

Chapter2:周辺諸国も検討資機材の調達

 当社が手がける途上国でのインフラ整備では,様々な建設材料を使用している。コンクリートや,鉄骨や鉄筋,木材…etc。また工事を行うには,ダンプ,バックホウ,クレーンなどの重機や様々な設備が必要である。
 途上国での工事は,これらの資機材の調達をいかにして行うかが極めて重要である。日本や他の先進国であれば,取引先も多く,販売網や流通網が整備されているので,調達には問題が生じないだろう。しかし,産業が発展していない途上国では,主要な資機材が手に入らない場合も多い。また,使用する重機の購入価格やレンタル料が高く,整備状態も良好でない場合が多い。
 そこで,資機材の調達は,現地で行うことを第一に考え,次に周辺地域,もしくは他国からを検討する。そして,品質や価格,納期,さらに輸送コストなどのバランスを考えて決定する。その際,現地の状況に熟知した現地企業に発注することも考えられる。また,特殊な技術や工法を用いる場合には,日本などの先進国からの調達に限定される。
 実際の調達では,まず,施工計画に基づき使用する資機材とその数量,必要時期を正確に把握しなければならない。施工期間中の機械の故障や損耗に備えてスペアパーツなども確保する必要がある。そして,的確な輸送ルートを確保することも重要だ。但し,物理的な理由だけでルートを決定することはできない。ルート上の国の状況など,カントリーリスクも考慮しなければならないのである。なお,通関業務などで複雑な手続きが必要な場合もあり,調達先や輸送方法によっては時間がかかる。
 調達後には,在庫管理や適正な保管を行い,機械の整備・点検なども行う。このように,調達には工事の計画段階から徹底した調査と準備が必要なのである。

case 1

熱帯の雨季を避けての陸上輸送


中央アフリカ国道1号線ムポコ橋工事

場所:首都バンギから北へ20km
発注者:中央アフリカ共和国
規模:橋長75m 3径間ポストテンション式T桁橋
工期:2000年10月〜2002年3月
中央アフリカ国道1号線ムポコ橋工事

 文字通りアフリカ大陸のほぼ中央に位置する中央アフリカの首都バンギから,隣国のチャドへと通じる国道1号線上に,ムポコ橋がある。この橋は,近年老朽化が進み,幅員が狭いため,1車線交互通行を余儀なくされていた。現在,当社による橋梁の架け替え工事を行っている。
 工事では,重機やコンクリートプラント施設などの機材と,鉄筋,PC鋼材などといった資材を日本から調達しなければならなかった。そのため,大西洋に面したカメルーンのドゥアラ港までこれらの資機材を船輸送し,そこから現場まで約1,500kmの陸上輸送を行った。
 調達にあたり,地域特有の気候が問題となった。新田所長は,「この地域は,雨季と乾季に分かれる熱帯サバンナ気候に属している。年間降水量約1,500〜2,000mmのうち,大半が6〜11月に集中し,その間は輸送経路が水浸しで通行止めになる」と,乾季の時期にあわせた輸送計画を語る。そして,日本から約3か月をかけて資機材を調達した。その際,仮設資材や重機の消耗パーツなどの予備も予測しておくことによって,工事のロスタイムや無駄な出費を無くした。

神戸港での積み込みの様子

神戸港での積み込みの様子


case 2

橋桁の一部をベトナム,中国で製作


パラオ新KB橋建設工事

場所:パラオ国,コロール島
発注者:パラオ共和国資源開発省
規模: 橋長413m 3径間複合エクストラドーズド橋
工期:1999年11月〜2001年12月
パラオ新KB橋建設工事

世界で2番目の採用となった3径間複合
エクストラドーズド橋


 美しい海で有名なパラオは,約200の島々からなる小さな国。空港などのあるパラオ最大のバベルタオブ島と,経済・行政の中心であるコロール島を結ぶ,コロール・バベルダオブ橋が,かつて同国を支える生命線であった。しかし,1996年に橋が崩落したため,新しい橋が建設されることになった。
 工事では,当地が工業の発達してない島国であることから,材料の調達が着工前から問題となった。「生活物資を輸送するコンテナ船が週1回しかなく,軍手やビニールテープなどの生活用品でさえ,手に入れられない場合もある」と,語る柏村所長の言葉からもその苦労がうかがえる。このような状況で,主要な重機は日本から持ち込み,大量に必要な材料は使用する時期を厳密に予測したうえでフィリピンなどから調達している。
 また,工事のハイライトとなる鋼製橋桁の中央ブロック取付けでは,「日本から調達した橋の材料を,人件費の安いベトナムで部材として組み立て,中国で完成させた。現地では,取付け作業だけをするようにした」(同所長)と,第三国での製作・調達がコスト削減に貢献する場合があることを指摘する。この工事では,建設地の実情に即した調達と施工法が実践されている。

中国からえい航される橋桁の中央ブロック 長さ80m,重さ500tの中央ブロック取付け
中国からえい航される橋桁の
中央ブロック
長さ80m,重さ500tの
中央ブロック取付け

case 3

国情を考慮した1,000kmの輸送ルート


エチオピア幹線道路改修2期工事

場所:エチオピア国,アジスアベバから
北へ約90kmの区間
発注者:エチオピア道路庁
規模:既存道路の改修89.5km
工期:1999年2月〜2002年3月
エチオピア幹線道路改修2期工事

 エチオピアの首都アジスアベバと北へ約300km離れた都市デブレマルコスを結ぶ道路は,同国の経済活動を支える主要幹線。既に全線舗装されているが,道幅が狭い上,路面が痛み,交通に支障をきたしていた。そこで,この道路を拡張,再舗装し,幹線の整備をすることが必要となった。
 現在,アジスアベバから33kmまでの舗装工事を終えている。現場の郷農工事担当は,「部品の調達が一本化できるため,業務を簡素化できる」と,日本からの一括調達のメリットを挙げる。そして使用する重機やプラント設備は,大半を日本から輸送した。その際,海に面し,同国から独立したエリトリアのアッサブ港を利用するルートが当初検討されたが,両国の関係が悪化しているため,隣国ジブチのジブチ港へと陸揚げした。ここでトレーラーに積み替え,砂漠の中をひたすら走り,国境を越えて1,000km先の現場へと運んだのである。

ジブチ港に着いた重機や設備 港でトレーラーに乗せかえる
ジブチ港に着いた重機や設備

港でトレーラーに乗せかえる

現場に到着後,税関により検収が行われる
現場に到着後,税関により検収が行われる



Chapter1 ODAと結びついた当社の海外事業
|Chapter2 周辺諸国も検討資機材の調達
Chapter3 国や地域の実情に即した現場体制