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KAJIMAダイジェスト

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当社は交通量の多い都市部の交差点や踏切を非開削で地下立体交差化する
新たなアンダーパス工法『R-SWING®工法』を開発しました。
世界初の可動式屋根付き矩形掘削機によりトンネルを構築する工法で,工期短縮とコスト削減が可能になります。
この工法を初めて適用した都内の地下鉄駅連絡出入口設置工事において,今年9月に無事掘削を完了しました。
当社の技術開発・施工担当者に,R-SWING工法の特徴や今後の展開について解説してもらいます。

立体交差をスムーズに

都市部では,幹線道路の交差点や踏切などで起こる慢性的な交通渋滞が社会問題となっており,時間的損失だけでなく,交通事故の増加,環境の悪化といった弊害も引き起こしています。

渋滞解消の工事は各地で進められ,敷地が限られる条件下では,敷地余裕度や交通量などから総合的に判断し,道路を掘り下げて地下立体交差するアンダーパス工法が採用されています。アンダーパス工法には地表面から掘り下げる開削工法と,道路や鉄道の下でトンネルを掘り進める非開削工法があります。

開削工法は道路の一部を通行止めにして,交通量の少ない夜間に作業を行うことが多く,騒音・振動の問題や,交通規制による道路の機能障害,工事の長期化が課題となります。一方,地面の下で行う非開削工法は,低騒音・低振動で,道路を封鎖しないなどの利点から需要が拡大する傾向にあり,当社は工期とコストの両方にメリットがある新たな工法開発に乗り出しました。

「ルーフ」の役目と「揺動」の利点

開発したのは,矩形の掘削機でトンネルを構築するR-SWING工法です。マシンは上方のルーフ部と下方の本体部で構成され,屋根(Roof)と本体の掘削アームが左右に揺動(Swing)しながら掘り進むため,R-SWING工法と名付けました。

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ルーフは地盤沈下の抑制や,重要埋設物の保護などの役割を果たし,最長1.5m突き出した状態で掘削が可能です。地中発進時や安定した地盤ではルーフと本体を揃えて使い,土被りの浅い場所や重要構造物の下ではルーフを先行して伸ばし,地盤沈下抑制と構造物保護に使用します。土被りの浅いところを掘ることが多い都市部でも,ルーフの活用で安定して掘進できます。また,ルーフの先行掘削は,地質条件の判断や地中埋設物を早期に発見する先進探査の役目も兼ねています。

揺動式のカッタヘッドは,掘削断面を四角く掘るために採用しました。矩形断面は円形断面に比べトンネルを浅い位置に設置することができるため,これらのニーズが多い都市部の工事に適しています。また,円形掘削のようにトンネル上下・左右の余計な土を掘らずに済み,経済的です。

写真:マシン全景(ルーフ全伸時)

マシン全景(ルーフ全伸時)。ピンク色の掘削アームがルーフ部で,青色が本体部

ユニット化で工期とコストを削る

従来の回転式カッタヘッド掘削機はトンネルの大きさに合わせてつくるため,1工事1マシンの特注品になりコストが掛かっていました。

R-SWING工法は,本体部とルーフ部の基本ユニットをブロックのように組み合わせて,トンネル形状に合わせて掘削機の大きさを自由自在に変え,複数の工事に対応できるようにマシンをユニット化しています。

マシンを繰り返し使えることで,従来に比べコストを抑えられます。組み合わせて大型化すれば,大断面トンネルを1回で掘削し,工期の削減も可能です。組立てもボルト留めで接続できるため,従来のマシンのように組立て時の溶接や解体時に溶接部のガス切断作業の必要がなく,効率面や安全面でも優れています。

写真:掘削が完了した地下連絡通路のセグメント

掘削が完了した地下連絡通路のセグメント

図:基本ユニット組合せ例

基本ユニット組合せ例

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さらなる可能性

R-SWING工法は,推進工法にもシールド工法にも適用できます。

推進工法は土留めや支保工の役割を果たすセグメントと掘削機を,固定された元押しジャッキで一緒に前進させる方法で,掘削距離が短いトンネルに適しているため,今回,26.5mのトンネルを構築する都内の現場で採用しました。

シールド工法は,掘削機自体に推進ジャッキを装備し,掘削機後方で組み立てられた固定セグメントを反力にして前進するもので,長距離のトンネルに適しています。

アンダーパス工法では,地上発進や地上到達を求められるケースもあります。当社では,斜め下方に発進する際に反力を合理的に掘進機に伝える機構や,掘った側面の地山を安定させる機構などもすでに開発済みで,R-SWING工法にも使えます。今後,当社はR-SWING工法を積極的に提案し,都市部の交通渋滞解消などに貢献していく考えです。

図:推進工法とシールド工法の比較。○の中の番号順にセグメントが組まれる

推進工法とシールド工法の比較。○の中の番号順にセグメントが組まれる

図:地上発進と地上到達の概要

地上発進と地上到達の概要

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都市基盤を向上させる技術開発

今回,R-SWING工法を採用した現場は,幹線道路下の東京メトロ千代田線新御茶ノ水駅と三井住友海上火災保険の本館ビルを結ぶ地下連絡通路の工事です。現場周辺は古くからの商業地で居住者も多いため,低騒音・低振動のR-SWING工法が最適でした。

この工事ではルーフ部と本体部を2ユニットずつ組み合わせ,幅4.85m,高さ3.6m,全長26.5mのトンネル掘削を約2ヵ月で完了しています。

マシンの仕様検討では,技術開発側のシーズと現場のニーズを照らし合わせ,将来のアンダーパス構築を視野に入れつつ工事を進めました。マシンを製作した当社関係会社のカジマメカトロエンジニアリングが施工に加わったため,設計・製作・施工と一貫して鹿島グループで工法の開発ができました。様々な施工条件でも適用できるように,これからも改良を加えていきたいと思います。

写真:発進地点(中央下)から道路下を掘削

発進地点(中央下)から道路下を掘削

写真:元押しジャッキ(中央)で押す推進工法

元押しジャッキ(中央)で押す推進工法

写真:前列左から 東京土木支店・吉田強志工事課長代理・北川豊グループ長,土木管理本部・中谷行博グループ長,機械部・坂根英之課長,井波良太工事課長代理(三井住友建設),東京土木支店・大石史哉工事係 後列左から 機械部・田島大輔課員,土木設計本部・鶴田浩一グループ長,土木管理本部・宝田善和課長・滝本邦彦グループ長,東京土木支店・諸橋敏夫所長

前列左から 東京土木支店・吉田強志工事課長代理・北川豊グループ長,土木管理本部・中谷行博グループ長,機械部・坂根英之課長,井波良太工事課長代理(三井住友建設),東京土木支店・大石史哉工事係 後列左から 機械部・田島大輔課員,土木設計本部・鶴田浩一グループ長,土木管理本部・宝田善和課長・滝本邦彦グループ長,東京土木支店・諸橋敏夫所長

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