現場から: 首都圏中央連絡自動車道 青梅トンネル北工事

日本初!2層構造の超大断面トンネルをNATMでつくる
首都圏中央連絡自動車道
青梅トンネル北工事

「青梅マラソン」で有名な東京都・青梅市の市街地の直下に,巨大なタマゴ形のトンネルが出現した。このトンネルは,高さ19m,幅16m,最大断面積260m2。首都圏中央連絡自動車道(通称:圏央道)の青梅トンネルだ。トンネルは,上りと下りの車線が上下に重なる国内初の2層構造で,掘削断面積でも国内最大級の規模となる。

圏央道
現場周辺は住宅街となっている


首都圏中央連絡自動車道
青梅トンネル北工事

場所:東京都青梅市新町1丁目〜2丁目
発注者:日本道路公団東京建設局
規模:延長389m,
掘削断面積:221〜261m2
掘削量:82,399m3
注入式長尺鋼管先受け工:1,139本
吹付けコンクリート:29,000m2
覆工コンクリート:25,000m3
鉄筋量:2,700t 他
工期:1998年6月〜2001年12月
(東京支店JV施工)

関東地図 圏央道の概要
圏央道(首都圏中央連絡自動車道)は,首都圏の渋滞対策や物流の効率化を促すために計画された自動車専用道路。
都心を中心とした半径40〜60kmの環状道路で, 総延長300kmに及ぶ。
東北自動車道,中央自動車道,東名高速道路など 主要な幹線道路とも結ばれる。


 施工中の青梅トンネルは,青梅市から隣の羽村市にかけての全長2,095m。中央部の 1,093mを山岳トンネル工法(NATM)で施工している。
 トンネル中央部は,市街地を通る市道の直下につくるため,地域住民の生活環境や自然環境に配慮する必要があった。そこでトンネルを市道の幅約16mの範囲内に収めるよう,2層式の構造にし,地上から開削して建設する方法ではなく,地中を掘り進むNATMという施工方法をとった。2層構造のトンネルにNATMを採用したのは,日本でも初めてのことで,当社は,大型車両の通行が多い青梅街道を含む389mを担当することになった。
 周辺は地形的に軟弱な多摩川の扇状地が広がるため,大断面のトンネルを掘り進めるには元来適していなかった。しかも,施工するトンネルの直上には,多くのライフラインが埋設されており,道路の両側には住宅街がある。
 このような条件の下,土被りが7mという非常に浅いところでの施工は,地表面の沈下抑制や,それと密接な関係がある地下水対策が重要な課題となった。
 この2層構造のトンネル施工では,一気に大断面を掘削するのではなく,まず上層のトンネルを完成させて下層の掘削を行う,「上部覆工先行工法」を採用した。これは上層の早期構築により,天井・側壁部の地山の安定が図れるからだ。そして下層掘削の前には,上層のトンネルを支える仮受け杭を打設しておいた。
 さらに地表の沈下を抑制するため,二重,三重の補助工法が施された。例えば,掘削に先行して天井部に鋼管を打ち込みセメントミルクを注入,地盤を固める「注入式長尺鋼管先受け工法」。これはトンネルの切羽崩落を防止し,沈下を抑制するためのものだ。また,多い時で毎時200tの湧水が記録されるような地質で,トンネル脚部の沈下を防止するために地盤を固める「水平ジェットグラウト工法」が採用された。さらに,掘削に伴う沈下の抑制と側壁の地山の安定を目的とした,柱状の改良体を造成する「フットパイル工」。そのフットパイル工は,万全を期すため2段式となっている。
 
注入式長尺鋼管先受け工法
トンネル天井部の地盤を固める「注入式長尺鋼管先受け工法」
 
 なお,当社開発の「トンネル計測管理システム」も威力を発揮した。刻々と変化する地山の挙動情報を,発注者である日本道路公団,設計部門を中心とする当社の関連部門がリアルタイムで把握することで,支援体制が整い,早めの対応が可能になったのである。
 現場の平所長は,「慎重の上にも慎重を重ねた結果,地表面の沈下量は下部トンネル掘削時に0〜2mmで,ほとんど沈下していません」と,現場の大空間の中で穏やかに語りかけた。その姿は,共に修羅場をくぐり抜けてきたトンネルと同化しているように見えた。現在,この工事は無事故・無災害を保ちながら下部トンネルの側壁覆工を施工している。トンネル完成後,圏央道は平成13年度中に青梅ICから一つ先の日の出ICまで開通の予定だ。

立坑からみたトンネル断面
立坑からみたトンネル断面。高さ19m,幅16mの2層構造のトンネルは,地上からわずか7mのところにつくられている

平所長
平所長


掘削中の下層
掘削中の下層。上層を支える仮受け杭が整然と並ぶ


水平ジェットグラウト工法

試験施工で地盤改良が確認された

トンネル脚部の沈下を防ぐ「水平ジェットグラウト工法」(上)。
試験施工で地盤改良が確認された