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東京・汐留地区開発の全貌

建設中の超高層ビル群がひしめく東京・港区「汐留」――。
東京の都市再生の拠点として,いま最も注目を集めているエリアだ。
今年7月には街の一部がオープンし,中心部に位置する都営地下鉄大江戸線と新交通ゆりかもめの「汐留駅」も11月に開通する。
今月は,着々と工事が進む汐留地区のいまを紹介する。


鉄道の発祥地であった汐留
 開発が進む汐留地区は,銀座・丸の内・霞が関などに隣接した都心の一等地に位置する。JR東海道新幹線と首都高速都心環状線に囲まれた,南北に細長い敷地の広さは31ha。東京ドーム6.6個分にも及ぶ。敷地の大部分は1986年に廃止された旧国鉄汐留貨物駅のターミナル跡地で,ここにオフィスビル,ホテル,商業施設,集合住宅,劇場などを整備し,就業人口6万1千人,居住人口6千人の都市を創出する都心最大のプロジェクトである。
 この地はかつて日本の鉄道発祥地として名を馳せたところでもある。1872(明治5)年に完成した「新橋停車場」は,モダンな西洋建築で西洋文化の香りを放つ場所だった。その後,1914(大正3)年に東京駅が開設されると貨物専用駅となり,「汐留駅」に改称された。そして,1923(大正12)年の関東大震災で焼失してしまう。
 鉄道の開通から130年以上を経た現在,当社は,この史跡の後に駅舎の復元工事を進めている。来年4月の完成の際には,汐留復興のシンボルとして,汐留の歴史を後生に伝えていくことになる。

旧新橋停車場復元の完成予想パース


旧新橋停車場復元の完成予想パース


1990年から始まったインフラ整備
 このビックプロジェクトは1995年3月に東京都の事業計画決定を受け,本格的に始まった。現在は,超高層ビルの建設ラッシュとなっている。当社は,その5年前から都営地下鉄大江戸線の「汐留駅」や,地下鉄の線路部のシールド工事を行ってきた。街のインフラ整備は,現在もいたるところで続けられており,当社はこれらの多くに携わっている。
 その中でも,敷地を縦断する地下構造物は,わが国でも最大の規模を誇る。5層の地下構造物は,地下1階が地下歩道,2階が地下車路,3階が地下鉄大江戸線の汐留駅と管路収容空間,4階と5階がピットとなっている。地下歩道は最寄りのJR新橋駅とA,B,C街区のビル群との間を結び,幅40m,長さ400mの規模を誇る。この地下構造物の構築は現在,仕上げの段階に入っている。
 また,敷地を東西に走る環状2号線と,JR線が交差する部分で行われている鉄道高架橋の改築工事は,既存の線路を仮受けして高架の撤去を行うものである。首都圏を走るJR在来線や東海道新幹線といった東京の生命線を保持しながらの工事は来春ピークを迎え,各方面で話題の的となろう。


汐留地区開発の完成イメージ
汐留地区開発の完成イメージ(完成時とは異なる場合があります)


超高層ビルの建設ラッシュ
 一方,当社は多くの建築工事も手がけている。これらの大半は既に躯体工事を終え,内装や設備工事に移っている。
 それでは,これらの建物を順番に見ていこう。まず,敷地の最北端に位置する「松下電工東京本社ビル」。地下2階から地上3階までがショウルーム,4階から24階までがオフィスとなる建物は,松下電工の企業イメージを体現するために,建物全体を「照明器具」のように見立てたつくりとなっている。
 次に,テラコッタタイルの外壁が特徴の「(仮称)鹿島棟」。当社が出資する「鹿島汐留開発」が事業主となっており,証券化された建物である。地上2階から22階までは資生堂,24階から38階にホテル「ロイヤルパーク汐留タワー」が入居し,ビジネスユーズに対応した“タイムシェアリング”という新サービスを導入することでも話題となっている。
 さらに,共同通信社の本社ビルとなる「汐留メディアタワー」。その25階から34階には,デザインを重視したホテルだけが加盟できる「デザインホテルズ」の認定を受けた「パークホテル東京」がオープンする。真横には,ビジネスフォーム(帳票)の製造で業界トップの実績を誇る「(仮称)トッパン・フォームズ本社ビル」がある。汐留メディアタワーとともに,情報発信型ビジネスゾーンを形成する。
 宅配の「ペリカン便」で有名な「(仮称)日本・運本社ビル」は,浜離宮の正面にそびえる。東京湾に向かって遮るものがまったくない眺望を活かしたスレンダーなかたちとなっている。
 最後に,今年3月に起工したばかりの「(仮称)汐留住友ビル」。1階から11階までがホテル「ヴィラフォンテーヌ」,12階から25階はオフィスとなる。

ゆりかもめ線路 地下通路
地下構造物の地上部は,ゆりかもめが通る 幅40m,長さ400mの巨大地下通路

地下鉄大江戸線の「汐留駅」ホーム
地下鉄大江戸線の「汐留駅」ホーム

地図




建築工事概要


1. 工事名:(仮称)旧新橋停車場復元駅舎工事
  発注者:東日本鉄道文化財団
  設計:日本設計,JR東日本建築設計事務所
  規模:RC造,S造 地上2階 延べ1,351m2
  工期:2001年12月〜2003年4月

2. 工事名:松下電工(仮称)東京本社ビル建設工事
  発注者:松下電工
  建築設計:日本設計
  設備設計:日建設計
  規模:S造(CFT構造),SRC造,RC造 地下4階,   地上25階 延べ47,308m2
  工期:2001年8月〜2003年1月

3. 工事名:(仮称)汐留C街区開発事業鹿島棟建設工事
  発注者:鹿島汐留開発
  設計:当社建築設計エンジニアリング本部
  規模:S造(CFT構造),SRC造 地下4階,地上38階   延べ79,800m2
  工期:2000年1月〜2003年4月

4. 工事名:(仮称)共同通信社新本社ビル・アネックス建設工事
  発注者:共同通信社
  総合企画:三井不動産
  設計:当社建築設計エンジニアリング本部
  規模:S造(CFT構造),SRC造 地下4階,地上34階   延べ63,538m2
  工期:2000年10月〜2003年6月

5. 工事名:(仮称)トッパン・フォームズ本社ビル建設工事
  発注者:トッパン・フォームズ
  設計:岡田新一設計事務所
  規模:S造(CFT構造),SRC造,RC造 地下1階,   地上19階 延べ26,656m2
  工期:2000年12月〜2003年4月

6. 工事名:日本通運株式会社新本社ビル新築工事
  発注者:日本通運,日通不動産
  設計:当社建築設計エンジニアリング本部,通不動産
  規模:S造(CFT構造),SRC造,RC造 地下4階,   地上28階 延べ54,214m2
  工期:2000年7月〜2003年6月

7. 工事名:(仮称)汐留住友ビル建設工事
  発注者:住友生命・住友不動産
  設計:日建設計
  規模:S造(CFT構造),S造,SRC造 地下3階,   地上25階 延べ99,900m2
  工期:2002年3月〜2004年7月


(注)上記の建築工事の他にも, 当社はルネ・汐留ビル新築工事をJVスポンサーで, 昭和アステック汐留ビル新築工事を単独で, 電通本社ビル,日本テレビ新社屋建設工事を JVサブで担当している


全ての超高層でCFT構造を採用
 汐留地区では,様々なデザインや構造のビルが建設されている。これらからは,次代の超高層ビル建設の潮流を読み取ることができる。
 例えば構造形式。これからの超高層ビル建設では,CFT構造を採用し,各種の制震装置を複数組み合わせて使用することが一般的となるであろう。ここ汐留地区では,当社が手がける20階建て以上の超高層ビル5棟全てにこのCFT構造が採用されている。
 鋼材とコンクリートそれぞれの特性の相乗効果が得られるCFT構造は,鉄骨造や鉄筋コンクリート造,鉄骨鉄筋コンクリート造に次ぐ第4の構造形式と言われている。鋼管の中に高強度コンクリートを充填したCFT柱が建物の構造材としての役割を果たし,優れた剛性や耐火性能などを発揮する。当社では,1998年にフーマイスターエレクトロニクス本社ビル(東京都千代田区)で本構造を初めて導入し,CFT構造の採用実績は年々増加している。


ハニカムダンパ(汐留メディアタワー) DUOX(汐留メディアタワー)
ハニカムダンパ(汐留メディアタワー) DUOX(汐留メディアタワー)

HiDAX(日本通運新本社ビル) CFT柱
HiDAX(日本通運新本社ビル)
         汐留メディアタワーで
         採用されたCFT柱


制震装置を組み合わせるのが主流
 超高層ビルでは,地震と風による建物の揺れをどのように防ぐかが最大の課題である。これを解決するのが制震装置だ。
 制震装置には,制御方法や性能などに応じて様々な種類がある。そして,風や地震の強さや,建物の形状によって変化する揺れに対し,最適な装置とその組合せ,躯体への配置を考えなければならない。
 当社では,豊富な施工実績や高度な構造解析技術などを駆使し,各ビルに最適な制震システムを提案している。例えば,汐留メディアタワーでは,低降伏点鋼という特殊な鋼材を用いた「ハニカムダンパ」が地震に対する揺れを大幅に低減する。設置スペースがほとんどいらず,コスト的にも有利なこの装置を1階から22階までの各階に合計138台配置している。また内部に備えた重りをコンピュータで制御し,風揺れなどを大幅に低減する「DUOX」を2台最上部に設置している。
 鹿島棟でも「DUOX」を採用している他,2階から23階までの各階に地震と風の両方の揺れをオイルダンパが吸収する「HiDAX」を鉄骨躯体に88台設置している。その他,日本通運新本社ビルや松下電工東京本社ビルでは,「HiDAX」と「HiDAM」といった装置を各階に複数配置している。


汐留メディアタワー


JR線とゆりかもめに挟まれた敷地で工事を進める汐留メディアタワー


周辺地図
開発周辺
交通インフラと隣り合わせの現場
 汐留地区の工事では,施工面において敷地が非常に制限されているという特徴がある。その中でも,三角形の敷地に建設中の汐留メディアタワーと隣接するトッパン・フォームズ本社ビルは,JR新幹線やゆりかもめなどに挟まれ,施工条件が極めて厳しい。このため,基礎工事では振動を与えない工法を用い,建物の外周は部材のユニット化を図るなど,資材の揚重計画や管理を徹底的に実施している。
 一方,既存の鉄道高架橋の解体・新設工事では,軌道上の作業を列車の運行が停止している深夜の2時間半の間に行わなければならない。事前調査を徹底的に行い,綿密な施工計画をたて,分単位の施工管理を実施している。構造物の沈下や傾斜を監視しながらの施工は,一瞬のミスも許されない。
 多くの工事が密集する汐留地区では,工事車輌の通行ルートや資機材のヤードなどを調整する必要がある。当社が担当する様々な工事では,ゼネコン各社で構成される汐留地区工事安全協力会を通じて調整を行い,安全管理にも十分配慮している。
 汐留地区は今秋から2006年にかけて,段階的に街開きをしていく。当社の土木,建築双方の高度なテクノロジーが,日本を代表する街となる「汐留」に,大きく貢献しているのだ。


基礎工事中の汐留住友ビル


基礎工事が行われている汐留住友ビルの現場から,北西の超高層ビル群を望む


土木工事概要


1. 工事名:都営地下鉄大江戸線(12号線)汐留シールド工事
  発注者:東京都地下鉄建設
  設計:トーニチコンサルタント
  規模:外径5.3m 延長760m×2本
  工期:1992年4月〜2000年12月

2. 工事名:都営地下鉄大江戸線(12号線)汐留駅
  発注者:東京都地下鉄建設
  設計:トーニチコンサルタント
  規模:RC造 地下5階(地下のみ),長さ440m,幅40m,
  掘削土・400,000m3
  工期:1990年6月〜1999年10月

3. 工事名:補助313号線及び港区街3号線地下構造物内部工事
  発注者:東京都地下鉄建設
  設計・監理:パシフィックコンサルタンツ
  規模: 建築・電気・設備仕上げ工事 延べ400,000m2(地下構造物内)
  工期:2001年8月〜2003年3月

4. 工事名:東海道線新橋・浜松町間環状2号線交差部工事
  発注者:東日本旅客鉄道
  設計者:東日本旅客鉄道,ジェイアール東日本コンサルタンツ
  規模:作業構台 既設高架橋撤去 本設桁架設 他
  工期:2002年3月〜2007年1月

5. 工事名:汐留換気所移転他工事
  発注者:東日本旅客鉄道
  設計者:東日本旅客鉄道,パシフィックコンサルタンツ
  用途:鉄道トンネル給排気施設
  規模:新設換気所─RC造 地下2階,地上4階 延べ1,748m2
  連絡洞道─2層ボックスカルバート8.0×10.0m 延長32.2m 他
  工期:2001年3月〜2004年6月

6. 工事名:都営地下鉄大江戸線汐留連絡線汐留工区
  発注者:東京都地下鉄建設
  設計:トーニチコンサルタント
  規模:開削トンネル 長さ90m,幅6m 掘削土量11,400m3
  工期:2002年6月〜2003年12月

7. 工事名:地下鉄12号線浜松町交差部改築工事
  発注者:東日本旅客鉄道
  設計者:パシフイックコンサルタンツ
  用途:鉄道橋梁(上部工,下部工)
  規模:上部工・・・下路プレートガーター橋 複線桁2連,単線桁2連
  下部工・・・HEP工法 開削工法によるRC構造物4基
  工期:1997年11月〜2004年2月

8. 工事名:新幹線浜松町Bv他防護工北工区(1)工事
  発注者:東海道新幹線
  設計者:パシフイックコンサルタンツ
  用途:新幹線橋梁
  規模:地下鉄12号シールド防護工(SMW,CJG)
  新幹線切廻しと振戻し
  工期:1997年10月〜2003年2月(最終工期2006年度末)